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772話 エビルドラゴン!

 アルとネロに相手をしてもらった特訓を終える。

 結局、アルとネロ相手に三回戦った。

 勿論、全敗だ……。

 一矢報いることくらいは出来るかと思っていたが、俺の思い上がりだった。

 最後の二戦は、無茶だと思いながらもアルとネロの二人相手でも、戦闘をする。

 勿論、上下左右に前後、ありとあらゆる所から攻撃を受ける。

 痛みを感じる間も攻撃を受け続けたので、あっという間に気絶する。

 二回気絶したところで、無意味な特訓だと思い切り上げる。

 少しは目で追えると思ったのだが……。

 連携での攻撃は、個々の攻撃よりも厄介だと知っていたので試しただけだったが、実力差がありすぎると意味が無いことを、改めて悟った。


「タクトも目を覚ましたので、奴に挨拶してから帰るかの」

「そうだな」


 アルの言う「奴」とは友人のあり、ドラゴンロードでもある先代グランニールのことだ。

 この地で、自らを拘束して暴れないようにしている。

 俺も一度しか会っていないが、悪い奴ではない。


「……どういう事じゃ⁈」


 先代グランニールが居る洞穴まで歩いていると、アルが突然走り出した。

 俺とネロも少し遅れて、アルの後を追う。

 しかし、全力疾走のアルとネロに着いて行くことが出来ずに、目的地の洞穴には、アルとネロから、かなり遅れて到着した。


「おい、どうしたんだ。突然、走りは……」


 俺は言葉を途中で止める。

 アルの殺気。

 そして、そこに居る先代グランニールを拘束していた鎖が無残にも千切られた状態で地面に散らばっていた。

 先代グランニールの姿も無い。


 後ろ姿のアルは震えながら、先代グランニールの居た場所を、体を震わせながら見ているようだった。


「アル~……」


 心配して声を掛けるネロの声も聞こえないようだ。

 俺はアルの所まで歩いて、肩を軽く叩く。


「タクト……」


 俺が叩いた事で、正気に戻ったようだ。


「先代グランニールが心配か?」

「……もう奴は、ドラゴンロードいや、お主たち人族で言うもっとも恐れられる魔物『エビルドラゴン』として、この世界の何処かに存在してしまったということじゃ」

「エビルドラゴンね……」


 俺はドラゴン族のドラゴンロードは必ず、エビルドラゴンになるのか気になっていた。

 そうであれば、他の種族も同様にロードが進化した名前を与えられてもいい筈だからだ。

 俺は疑問に感じたので、アルに聞く。


「奴は特別じゃ。長年、魔素を蓄積したことでエビルドラゴンになった。魔素が濃い場所に長い間おれば、ドラゴン族は誰もが理性を失ったエビルドラゴンに変化するのじゃ」

「人族が魔人になるのと同じなの~」

「ネロの言う通りじゃ。もちろん、魔素に耐えきれずに死ぬ者もおる。厄介なのは、屍となっても破壊衝動が消えぬ者が、稀にゾンビと言われる魔物に進化することじゃ」


 俺は「なるほど!」と思いながら、アルの説明を聞いていた。


「ゾンビは欲望のまま行動する。破壊欲や、食欲などじゃ。嚙まれると感染すると言われている時代もあったくらいじゃ」


 前世でのゾンビ映画のパターンだな……。


「しかし、奴が居なくなれば魔力の大きさからも、すぐに分かるはずじゃが……」

「誰かが意図的に魔力を隠蔽しているってことか?」

「そうとしか考えられん……」


 ロッソの鎖で拘束されていた先代グランニール。

 近付けば、同様に拘束される可能性もあるので、アルとネロも近付かずにいた。

 つまり、第三者が近付いて拘束されることなく先代グランニールを解放したか、先代グランニールが自力で鎖を破壊したかだ。

 後者であれば、アルが先程言った通り、魔力の大きさからアルが気付く。

 つまり……。


「とりあえず、状況を整理するぞ」

「そうじゃな」

「はいなの~」

「先代グランニールは、自力で鎖を引き千切ったのか?」

「いや、それは無い。ロッソの作った拘束する鎖じゃ。奴でも無理じゃろう」

「だろうな。そうであれば、第三者が鎖を破壊したことになる」

「でも、ロッソの鎖に拘束されるの~」

「それは間違いないか?」

「……随分、昔に魔物を奴に食わせようと放り投げたら、鎖が意思を持っいたかのように魔物を拘束したのを、妾もネロも見ておるから間違いない」

「そうなの~」

「それは、今でも同じだったかは分からないってことだな?」

「確かに、そうじゃな……」

「まぁ、問題は先代グランニールが居なくなったこともそうだが……今、何処に居るのかの方が大きい問題だな」

「お主の言う通りじゃ。妾は奴を探す。奴との約束もあるからの……」


 アルの言う約束とは、先代グランニールが言った「私が私で無くなった時は、遠慮無く私を殺してくれ‼」だろう。


「先代グランニールを殺せるのか?」

「……それが奴との約束じゃからな。それに奴を倒せるのは、妾とネロを含めて、この世界でも数人しかいないじゃろうしな」


 アルの言う数人という言葉で、第三柱魔王ロッソと、ネロの母親でヴァンパイアロードのセフィーロが頭に浮かんだ。


「私も行くの~」

「駄目じゃ!」

「なんでなの~、行くの~!」

「駄目なものは駄目じゃ。これは、妾と奴との問題じゃ」

「でも~」

「ネロ。アルの気持ちを察してやれ」

「……わかったの~。でも、何かあれば必ず連絡して欲しいの~」

「分かった、約束する」

「先代グランニールが行きそうな場所は見当つくのか?」

「全くつかん。そもそも、欲望のままに行動するからの……タクトよ。その先代グランニールという言葉は止めてはくれんかの。今の奴は、理性も何もないエビルドラゴンじゃから……」

「分かった」


 破壊や殺戮行動をするのは、先代グランニールでなくエビルドラゴンだ。

 アルは、先代グランニールの名誉を守りたいのだと感じた。


「じゃあ、妾は行ってくる。ネロ、暫く村のことは頼むぞ」

「任せてなの~」


 アルは笑顔を見せると、一瞬で目の前から消えた。

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