表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

766/942

765話 ババ抜き大会ー1!

 朝早くから、ゴンド村にルーカス達王族御一行が姿を現す。

 ルーカスは自信があるのか、優勝する気のようだ。

 勿論、護衛衆も一緒だ。

 以前に防衛都市ジークが黒狐に襲われたとき、アルとネロが魔人襲撃から街を救った。

 礼を言う為に、ルーカスがお忍びでゴンド村を訪れている。

 その際にも同行した護衛衆は、ゴンド村の様子に、かなり驚いていたそうだ。

 セルテートやステラは、魔王であるアルとネロをかなり警戒していた。

 ターセルや元護衛三人衆のカルアから「大丈夫」という言葉を聞いても、警戒を解き事はしなかったそうだ。

 一番の問題だったのは、ロキサーニが師匠であるロキこと、ローズルと対面した時だ。

 バツが悪そうなローズルとは対照的に、死んだと思っていた師匠と会えたロキサーニは感動していたそうだ。

 ロキサーニはセルテートやステラと違い、ローズルの言葉を信じてアルやネロとも打ち解けていたそうだ。

 人族と魔族が一緒に生活する村に理解が示せないのではなく、違和感が拭えないのかも知れない。


「ん?」


 四葉商会からマリーとユイも参加するようだ。

 俺の事は忘れている筈なので、出来る限り接触しない方が良いだろう。

 しかし、ババ抜き大会参加の話をしたのは誰なのだろうか?

 アルやネロとも思うが、一番怪しいのは王妃のイースだろう。


「アル!」

「なんじゃ?」

「料理の用意をしてくるから、あとはクロと上手い事やってくれ」

「分かったのじゃ」


 俺はシロと二人で料理をする為、家の中へと移動する。



 暫くすると、外からクロの声が聞こえて来た。

 ババ抜き大会が始まったのだろう。

 ルール説明に、商品。優勝者にはドワーフ族のトブレが作ったトロフィーの贈呈と、聞こえてくるだけだが会場も盛り上がりが凄い事だけは分かった。

 番号を読み始めると、対戦相手を決めているのだと分かる。

 歓声やため息などから、当たりたくない相手がいるのだとも感じた。

 普通に考えれば、王族とババ抜きなどしたくはないだろう。


「御主人様。こちらは出来上がりました」


 シロと村人の女性たちと協力して作っている料理も、着々と出来上がっていったので、女性たちに会場へと運んで貰う。

 俺が運ぶべきなのだろうが、マリーとユイに声を掛けられた時、どのような顔で会ってよいのか分からない。

 俺の気持ちを察してか、シロが村の女性たちとで運ぶように頼んでいた。

 いざとなると、俺も臆病だと感じた。

 あまり、人に大きなことも言えない……。


「では、ゴンド村第一回ババ抜き大会の試合開始です!」


 クロの声が響いた。

 料理を運び終えたシロが、対戦について教えてくれた。

 ルーカスはマリー、イースとユイ、ユキノとアル、ステラにネロ、セルテートとターセル、ヤヨイとカルアにがそれぞれ戦っているそうだ。アスランとローズル、ロキサーニは村人以外とは戦わない席になったそうだ。

 思ったよりも、対戦数が多い。

 予選から勝ち上がって来るのは、全部で十人になるので決勝戦前に、準決勝を行うとクロの判断で決めたようだ。

 予選も前半と後半に分かれているので、今は前半の五組が戦っている。

 歓声が上がる。

 どこかの組で、勝者が決定したようだ。


「最初の勝者は、予選第三組アルシオーネ様‼」


 俺はクロの言葉を耳にして、心の中で「良かったなアル!」と呟く。

 続けて、ターセルとネロの名が呼ばれる。

 そして残りの二組は、村人の名が呼ばれていた。

 意気込んで大会に臨んだ国王ルーカスは、予選敗退だ。


 続けて後半の部になる。

 来客は全員敗退して、村人の名が順番に呼ばれていった。

 驚いたのは前村長のゴードンや、双子の姉リズの名が呼ばれていたことだ。

 無欲で勝負に挑んだのが良かったのだろうと、俺は勝手に推測していた。


 そして、準決勝。上位二人が決勝に進めるとあって、アルとネロは気合が入っていた。

 しかし、残念な事に決勝に進めたのはターセルとネロだった。


「負けたのじゃーーーー‼」


 悔しそうに叫びながら、料理中の俺に飛び掛かって来た。


「悔しいのか?」

「当り前じゃ! 何故、妾は勝てんのじゃ?」

「毎回、勝つとは限らないから面白いんだろう。それに運を味方にしないと勝つのも難しいしな」

「どうやったら、運を味方に出来るんじゃ?」

「それは俺も知りたい」

「そうなのか……まだまだ、特訓が足りんようじゃ」

「まぁ、前にも言ったがババ抜きは運の要素も強いからな。今度は、約束していた他の遊びも教えるから大会でなく、みんなで楽しく遊んだらどうだ?」

「勝負じゃないのか?」

「まぁ、勝負だけど、アルだって子供相手には本気を出せないだろう?」

「当り前じゃ、強者の余裕というやつじゃ」

「それは、子供たちにも楽しんで欲しいとアルが思っているからだろう」

「そうなのかの……」

「この世界、勝負だけが全てじゃないからな。楽しく遊ぶことだって出来るんだよ」

「確かにお主に出会ってからは、そのような考えも分かる気がする」


 アルは考えながら話をする。


「まぁ、アルも負けた勢いで物を壊したりしないだけ、大人になったんじゃないのか?」

「失礼じゃの、妾は昔から大人じゃ」

「はいはい」


 俺はアルに笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ