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752話 眷属問題!

 目の前には、モクレンとエリーヌがいる。

 問題は俺が眷属を自分の従者にしてしまった事だ。


「呼びにくいから、適当に名前を付けただけなんですけどね」

「そうですね……出会ってすぐに、主従関係を築けるとは思いませんもね。確かに安易な名前を付けたタクトも悪いと思いますが、一番悪いのはエリーヌです」

「はい……」

「大体、レベル一の眷属を送り込むなんて、どうかしています。もし、転移して数日で亡くなったりでもしたら、譲ってもらった世界の神に合わせる顔がありませんよ」


 モクレンは珍しく憤慨している。

 察するに、ピンクーはモクレンが幾つか紹介した知り合いの神から選んだのだろう。

 俺の目の前にも関わらず、エリーヌを叱っている。

 口を挟むことなく、俺はその様子を眺めていた。


「はぁ、はぁ、まぁ、これくらいにしておきましょう」


 息を切らしているモクレン。お叱りの時間は終了したようだ。


「実は、彼女をタクトの従者にしたのは私なんです」

「えっ、どういう事ですか?」

「あのままでは、彼女が死ぬことは間違いなかったでしょう。唯一の救いはタクト、あなたが近くに居たことです」

「それは、どういう事でしょうか?」

「あなたの従者になれば、通常よりもレベルを上げるのが容易です。あなたがピンクーと名付けたジャイアントモモンガが、そうですね……レベル六十になるまでは、共に行動して貰えますか?」

「えっ!」


 俺は驚きの声を出すが、モクレンは気にすることなく話を続ける。


「レベル六十になれば、私の権限で主従関係を解きます」


 モクレンは微笑みながら話を終える。俺に拒否権が無いことは分かっている。

 しかし、世界に干渉できないと言っていた割には、干渉しまくりだと思うのだが……。

 俺は思った言葉を飲み込んだ。


「分かりました。そういう事であれば協力させて頂きます」

「ありがとうございます」

「モクレン様にお聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」

「はい、なんでしょう?」

「そもそも、神の眷属ですが、何を目的としているのですか?」

「それは、使徒の動向や、世界の状況などを定期的に報告してもらう為です」


 四六時中、使徒や世界を見ている訳では無いので、自分が得ていない情報を入手する意味合いが強いように感じた。


「そうであれば、私の動向については定期的に御報告致します。それに、世界の状況についても、同様で私からでも可能ではないでしょうか? 勿論、世界全ての状況を把握しているわけではありませんが……」

「タクトの言うことも一理ありますね。通常であれば、神である私たちと会話をすることが出来ませんから」


 モクレンは少し考えていた。


「そうですね……そもそもジャイアントモモンガのピンクーを眷属とする事自体、隣のエリーヌから私は聞いていないのですし、タクトとの主従関係があるうちに、エクシズでの眷属としての行動を知っておくのも良いかも知れませんね。そう考えれば、タクトの従者であるのが一番の得策ですね」


 モクレンは冷やかな目でエリーヌを見ているが、エリーヌは気付かない。


「流石、タクトだね!」

「エリーヌ! あなたは黙っていなさい!」

「はい……」


 余計なことを言ったエリーヌは、モクレンに叱られて項垂れる。


「私がいう事ではないかも知れませんが、出来る限り早くピンクーのレベルを上げるつもりです。神様たちも余計な争いはしたく無いと思いますし」

「そうですね。ここはタクトに任せるしかありませんね。次の眷属を送り込むときは、私も確認することにします」

「お願いします。それと、もう一つ宜しいでしょうか?」

「はい、どうぞ」

「その眷属の名前ですが、眷属その一とか、その二という適当に付けられているようですので、出来れば眷属のことも考えて、それらしい名前にしていただけたらと……」

「……そうですね。前向きに検討いたします」


 モクレンはエリーヌを睨んでいたが、今度は視線に気付いたのか、エリーヌは敢えて目線を合わせないようにしていた。


「この件で無くても、お聞きすることは可能でしょうか?」

「どんなことですか? もし、【全知全能】のことでしたら、まだ結論が出ていませんので、答えられませんよ」

「いいえ、【全知全能】のことではありません。エクシズの紅月と黄月の月が二つになる時期についてです」

「……エリーヌ、分かりますか?」

「はい、だいたい半年後になります」

「そうですか。もしかして、魔物暴走(スタンピード)や、魔物行進(モンスターパレード)を危惧しているのですか?」

「はい。私の徒労に終われば、よいのですが」

「確かに、そうですね。エクシズの場合は、何かと問題が起きていましたからね」

「出来る限りの準備はしておくつもりです」

「そうですか、引き続き御願いしますね」

「はい、分かりました」


 紅月の時期を思ったよりも簡単に教えてくれたことは、嬉しい誤算だった。


「タクトが帰るなら、私もこの辺で……」

「エリーヌとは、まだ話すことがありますので、そのままで」

「はい……」


 どさくさに紛れて、この場から去ろうとしていたエリーヌだったが、モクレンに止められる。

 まぁ、当たり前だろう。

 俺は別れの挨拶をして、【神の導き(改)】を切る。

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