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745話 封書!

 オットーは上機嫌だった。

 まさか、帰路の途中で素材が手に入るとは思っていなかったのだろう。

 しかも、仕入れ値は無料(タダ)だ。


 オットーも俺たちの事を詳しく聞かないと言ったので、それ以降は何も聞いてこなかった。

 馬を操るオットーの横で、ヤステイまで会話を楽しむ。

 一方的にオットーが話すだけだったが、色々と知らなかったことを知ることが出来て面白かった。

 商人だけあって、オットーは話上手だ。

 途中で、腰痛が酷いというので【神の癒し】で治療すると、大喜びされた。

 荷物を上げ下げするので、職業病だと諦めていたそうで、これならあと何十年も働けると嬉しそうに話していた。

 治療院でも開けば儲かるな! と商人目線での会話をする。

 嬉しそうに話すオットーを見て、俺も笑みがこぼれる。


 陽も沈もうとしている時間に、俺たちはヤステイの街に到着する。

 街の入口で、門番に身分証の提示を求められた。

 近隣で頻繁に魔物が出没しているので、警戒を強めているのだろうか? 

 俺はエルドラード王国のギルドカードを持っているので問題御無いが、シロとクロは何もない。

 どう切り抜けようかと考えていたら、おもむろにオットーが門番と話し始めた。


「この三人は俺の商会で雇おうと思っている奴たちで、シャレーゼ国から来たばかりなので街に入ってから作成予定なんですよ」


 そう言いながら、門番に何かを握らせていた。


「そういう事なら仕方が無いな。行けっ!」

「ありがとうございます」


 笑顔で門番に挨拶をして、ヤステイの街へと入った。


「悪かったな」

「いいってことよ。兄ちゃんたちが悪人で無いことは分かっているからな」


 俺に話しながらも、オットーは街の人から声を掛けられて手を上げていた。


「もしかして、オットーは有名人なのか?」

「違うぞ。この街で商売をしているから顔が広いだけだ」

「なるほどね」

「今晩は俺の所に泊まって行け。後ろにある素材の礼だ」

「いや、そこまで世話になるつもりは無い」

「そんな事言うなよ」

「いや、本当に大丈夫だ」

「そうか、それは残念だな……」

「悪いな。ここまで助かったよ」

「それはこっちの台詞だ。またな!」

「またな……か」


 一期一会では無いが、オットーともう一度会えるかも分からないので返事に戸惑う。


「縁があれば又、どこかで会えるさ」

「そうだな。俺の名はタクトだ、覚えておいてくれ」

「分かった。タクト、元気でな!」

「オットーもな!」


 俺たちはオットーと別れた。


「御主人様、どうしますか?」

「そうだな……」


 俺たちは路地裏へと足を進めて、振り返った。


「俺たちに何か用か?」


 同じ服を着た五人。

 ヤステイの街に入ってから、オットーの荷馬車の後ろを付いて来ていた。

 オットーか、俺たちのどちらかを尾行しているので、オットーとは別れて確認をした。

 もし、オットーであれば後を追うつもりだった。


「失礼しました。我らはこのヤステイの警備兵になります。タクト様で御座いますね」

「……どうして、俺の名を知っているんだ?」

「フェン様より、葉が四枚付いた服を着ている人物が現れたら、タクト様かを確認するようと承っております」

「フェンが?」

「はい。先程、商人との会話でタクト様と確認出来ました」

「なるほどね」

「大変恐縮なのですが一応、身分証等の提示を頂ければと存じます」

「身分証ね……」


 俺はあえて、エルドラード王国の商人ギルドカードを見せた。


「確かに」


 先頭の男性が、後ろの部下に目線を送ると、俺に封書を差し出してきた。

 以前に見た事のある封書だ。裏にはフェンの名がある。


「開けてもいいのか?」

「はい」


 封筒を開けて手紙を見るが、内容はプレッソ町で読んだ内容と同じだ。

 フェン以外、俺の事を覚えている者が居なくなってしまった事に驚き、状況を把握したいという事だった。

 ……既に説明は終わっている。

 もしかして、フェンはその後、封書の回収等はしていないのではないか?

 これからもオーフェン帝国の至る所で同じことが繰り返されるのかも知れないと思うと、億劫になった。

 しかし、プレッソ町とで俺の特徴を把握する内容が違うのは何故だ?

 彼らに聞いたところで、分かるとは思えないし……。


「あっ、あのどうかされましたでしょうか?」


 俺が真剣に手紙を読んでいたので、気になったのだろう。


「あぁ、悪い。たいした問題じゃない。わざわざ、ありがとうな」

「いいえ、これが私たちの仕事ですので!」


 警備兵の彼らは敬礼をして、俺たちの元を去って行った。


「あとで私から、フェンに言っておきます」

「悪いが頼むな」


 シロも俺と同じように億劫な感じだった。

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