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700話 幼き頃の思い出と恩返し! 

 隠し通路の先は、襲われた敷地の三軒隣の家にある石造の下に続いていた。

 この一帯は、代表が貸している家が多い。

 昔は一つの大きな敷地だったが、時代と共に変化をしていった。

 クレメンテ達は警戒しながら、その場を立ち去り、通りかかった商人の馬車に潜り込み街から立ち去った。


 商人の馬車を途中で降りて、身を隠せる場所を探す。

 魔物に襲われる危険を回避する為に、大きな樹に空いた穴を見つけて、そこでパトレシアとテオドラを休ませる。

 クレメンテは潜伏している仲間の多くが、大きな街や村に居る事を知っているので、森の奥で野営をしようとするが、煙に感付いた黒狐達に発見される恐れもある為、木の実等で朝まで過ごす事となる。

 しかし、テオドラやパトレシアが出血している為、野獣が襲いかかろうと近寄ってくる。

 朝までクレメンテは野獣と闘い続ける。

 幸いにも魔物が現れる事が無かった為、クレメンテ達は命を落とす事は無かった。


 その後、転々と場所を変えながら、黒狐に発見されば戦い、クレメンテとパトレシアはテオドラを守って来た。


「どうして、私を助けたの?」


 パトレシアは、クレメンテが黒狐を裏切ってまで、自分の味方になってくれた理由を知りたかった。


「昔、お前に助けられたからな」

「私が?」


 パトレシアには覚えが無かった。

 しかし、クレメンテが話を始めると、少しだけ記憶が蘇る。


 まだ、幼少期い黒狐の訓練を受けていた際に、クレメンテの失敗で、仲間全員の連帯責任という事で懲罰を受ける。

 元々、成績優秀だったクレメンテを良く思わない仲間の数人が、クレメンテに暴行を加える。

 懲罰を受けた直後に、仲間数人からの暴行でクレメンテには反撃する力は残っていなかった。

 クレメンテは「もう、死んでもいい」と思う。

 そこにパトレシアが、仲裁に入る。

 仲間同士で争っても意味が無い事。

 そして、誰でも失敗はする。その度に、集団で失敗した者に暴行を加えるのかと叫ぶ。

 その言葉に、暴行に参加しなかった仲間達が同調する。

 そもそも、許可が出るまでは仲間同士の攻撃は禁止されている為、上の者に知られれば不利なのは、暴行した仲間達だ。

 実際、その事は把握していたようで、クレメンテに暴行した者達は、規則を守れない者は不要だと言う事で、見せしめの為に殺された。

 この時、クレメンテはパトレシアを命の恩人だと思う。

 将来、自分に出来る事があれば、何があってもパトレシアの味方になると誓った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「勝手な頼みだと分かっていますが、私の命で勘弁して貰えないでしょうか?」

「クレメンテ、何を言っているの!」

「テオドラにはパトレシア、君が必要なんだ」

「でも……」


 クレメンテの言い分は分かったが、審判を下すのは俺でなくステラだ。

 しかし、その前に確認しておきたい事があった。


「強化薬は、まだ持っているのか?」

「いえ、随分前に無くなっています」

「禁断症状は無いのか?」


 俺の言葉に、二人は顔を見合わせる。


「パトレシアは諜報員なので、強化薬を常用していないので、禁断症状はありません。私は、魔物を食していました」

「魔物を食べた……」

「はい。食べると言っても、極少量です。強化薬に魔素が入っている事は、頭目と一部の側近は知っていました」

「それは、今もと言う事か?」

「はい、そうです」


 やはり、強化薬と黒い玉は魔素が練りこまれているようだ。


「どうする?」


 俺はステラに二人の処分をどうするか聞く。

 ステラも悩んでいるようだ。


「お話終わらないんですか?」


 テオドラが起きて来た。

 心配で、すぐに目が覚めてしまったのだろう。


「もう少しで、話は終わりますから」


 パトレシアは、本当の母親のように優しい口調で、テオドラに話し掛ける。


「そうですね」


 ステラは立ち上がり、テオドラの所まで歩いて行く。


「私達はもう帰ります。お父さんとお母さんを虐めていた悪い奴らは私達が倒しましたから、もう逃げる必要もありません」

「そうなの?」

「えぇ。ですので、安心して寝て下さい」


 ステラは話し終えると、パトレシアにテオドラを寝かしつけるように頼んだ。


「どういう事ですか?」


 クレメンテは俺に質問する。


「ステラと俺で、黒狐を滅ぼした」

「そんな事が……」


 俄かに信じられないようだ。


「まぁ、安心しろ。これからは旅をする事は無いから、三人で暮らせる場所でも探すといい」


 俺は最後に、クレメンテとパトレシアに【神の癒し】で魔素を取り除き、副作用も無くなった事を告げた。


「有難う御座います」


 クレメンテとパトレシアは、俺達に礼を言う。


「では、私達はこれで失礼します」


 俺達は家を出ると、そのまま村長に挨拶をして村を去った。

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