68話 ドワーフとの接触!
ドワーフの集落には、陽が沈む前に着いた。
思ったよりも早く着いた。
これも【身体強化】のおかげだ。
【危険探知】で、周囲から敵意が無いのは、確認出来ている。
正確に作動しているかは、最近疑問に感じているが……
入口らしきところまで歩くと、槍を持ったドワーフが寄ってきた。
「何か用か!」
来訪者なので、警戒されている。
「俺は人間族のタクト。 話が出来る者を呼んでくれ」
ドワーフは「待ってろ」と言うと、集落の中に向って歩いて行った。
暫くすると、先程のドワーフが二人のドワーフを連れて戻って来た。
「俺が族長の『ラチス』だ。 コイツは『ステー』、用件は俺達が聞く」
俺は、ラチスとステーに、宝石の取れる場所で宝石を採掘させて欲しい事。
持って帰る宝石はひとつだけ。
採掘させてくれるなら、こちらから出来る限りの事はする事を話した。
「ちょっと待っていろ」
ラチスとステーは相談をしている。
相談が終わるとステーが寄って来て
「掘削はお前だけか!」
「採掘は俺ともうひとりの鬼人だ。 実質採掘するのは鬼人で、俺が採掘した物は全部やる!」
ラチスとステーは、鬼人という言葉に対して過剰な反応を示した。
この世界でも上位人種だから無理はない。
「掘削所を貸した場合は、何をくれる」
「出来る限りの希望には添える。 とりあえず幾つか出すから、希望があれば言ってくれ」
後ろを向き【アイテムボックス】から、幾つかアイテムを出して並べた。
ラチスとステーは、手に取ったりして物色していたが、ひとつの瓶に興味を示した。
あの瓶はたしか、ゴブリンの宝物庫にあった酒だ。
「これ、呑んでいいか!」
ラチスの問いに頷いて返す。
ラチスが一口呑む、その後ステーが呑む。
「これ、いくつある」
アイテムボックスの中を確認する。
「残りは一九本だ」
「これでいい。 とりあえず九本くれ!」
ドワーフは、手先が器用で酒飲みと記憶していたが、その通りみたいだ。
酒瓶を九本渡して、明日の朝に来ることを伝えて、物陰に隠れ【転移】で宿に戻った。
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「御主人様、お帰りなさい」
シロが、帰りの挨拶をしてくれる。
少し、メイド喫茶に通う人の気持ちが分かった。
「ただいま」
ふたりの手元を見たが、思った以上に進んでいる。
「主、少し御相談が……」
クロによると、大体のサイズは分かったが本来は合わせながら調整する為、本人に服を当ててで無いと微調整が難しいとの事だった。
なるほど、言われてみれば確かにそうだ。
前世では裁縫した事が無いので対策が分からない。
……いや待てよ。
前世のテレビで、マネキンに洋服を着せて刺繍とかをしているのを見た覚えがある。
「少し待っててくれ!」
【アイテムボックス】から木材を出し、【加工】のスキルを習得して、シキブとムラサキの体型の木人形を作った。
「多分、サイズ的にはこれであっていると思うから、この人形で調整してみてくれ」
「主、ありがとうございます。 このような対策があるとは流石です」
「急がせて悪いけど、頑張ってくれ」
クロとシロに御願いをして、部屋を出た。