表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

685/942

684話 復讐心!

 ルーカスと入れ替わりで、ステラが部屋に入って来た。

 明らかに俺を警戒してる。


「私に何用でしょうか?」


 機嫌も悪そうだ。


「実は個人的に闘おうと思っている奴が居るんだが、ステラにも声を掛けた方が良いと思ってな」

「……そんな事、私の許可等関係なく自由に闘えば良いのでは?」

「黒狐」


 俺の言葉にステラの表情が変わる。

 そして、持っていた杖を俺に突き出す。


「どうして、私が黒狐と関係がある事を知っているの!」


 完全に戦闘態勢になっている。


「ステラは俺の記憶が消えているから覚えていないだけで、昔にステラから聞いた」

「嘘!」


 確かに嘘だ。

 本当は、狐人族のラウ爺から聞いた話だ。


「本当だ。その場にはラウ爺も居た」

「……」


 ラウ爺の名を出した事で、俺の言ってる事が本当だと信じて貰えたのか、突き出していた杖を元に戻した。


「私は何処まで貴方に話したの?」

「生まれ育った集落を黒狐に滅ぼされた事や、八尾のステラを仲間が逃がしてくれた事だ」

「そう……」


 俺との記憶が無い事で、余計に混乱をしているようだ。

 情報を整理しているのと、気持ちを落ち着かせているようだ。


「俺は黒狐の拠点を、全て見つけ出した。全滅させるつもりでいる」

「私に協力しろと?」

「いや、俺一人でも問題無い。しかし、黒狐に恨みを持っているステラに黙っているのは、申し訳無いと思っただけだ」

「凄い自信家ね。頭目は簡単に倒せるような相手では無いですよ」

「九尾のジャンだったか? 大丈夫だろう」

「ジャンの名前まで……私が何年も掛けて得た情報なのに、何処まで情報を掴んでいるの?」

「あと知っているのは、頭目は代々ブラクリという名を受け継いでいる事くらいだな」

「そうなのね。ブラクリとジャンは同一人物という事ね」

「そういう事になるな」

「……やっぱり」


 ステラは何かを考えていた。

 暫く待ってみたが、言葉が返ってこないので俺から話し掛ける事にした。


「護衛の仕事があるから難しいか? それとも復讐する気は無くなったか?」

「何を! あの日の惨劇を忘れた事等、一日だって無かったわ」


 ステラは大声で俺に反論する。

 ラウ爺は復讐を忘れて過ごして欲しいと願っていたが、俺に言わせれば難しいと思っていた。

 俺が勝手に黒狐を全滅させれば、ステラは怒りの矛先を失ってしまう。


「じゃあ、どうする?」

「国王様に相談して、お暇を頂くわ。一ヶ月あればいい?」

「そうだな……余裕を見て、三日ってところだろう」

「……三日? 何を冗談言っているの。相手は黒狐よ!」

「大丈夫だって、ランクSSSの俺を信用しろって」

「本当に信用していいのね」

「あぁ、勿論だ。ちなみに頭目のジャンと闘いたいのなら、俺は譲ってもいいぞ」

「そう。有り難く譲って貰う事にするわ」


 ステラは嬉しいのか笑っていた。


「貴方も暇なら、国王様の所まで一緒に来て説明してくれる?」

「別にいいが、黒狐の事を喋ってもいいのか?」

「えぇ、国王様には情報入手に協力頂いたから問題ないわ」

「……暗部を動かしたのか?」

「流石ね。私の報酬の一部を黒狐の情報にして貰ったのよ」


 俺が思っていた以上に、ステラは黒狐に執着していた。

 表情や態度には出さないが、それだけ恨みが深いという事だ。


「前言撤回だ。俺はステラの復讐方法を手伝う事にする」

「……何を言っているの?」

「賢いステラの事だ。長い間に、色々な復讐方法を考えていたんだろう?」

「……」


 俺は黒狐の刺青と、魔素の関係が分かればいいだけだ。

 しかし、ステラは違う。

 俺以上に黒狐への思いが強い。

 だから、ステラの思いを優先にする事にした。


「……黒狐人族全員を、捕獲する事は出来る?」

「簡単に出来るぞ」


 クロの能力を使えば、造作も無い事だ。


「貴方は捕獲してくれれば、あとは私が全てやる……」

「分かった。邪魔はしないが、俺も黒狐には聞くことがある。殺すのは、その後にしてくれるか?」

「分かったわ」

「因みに捕獲は、先にしても良いのか?」

「えぇ、任せるわ」


 ステラの了承を得られたので、クロに伝える。


(聞いていたか?)

(はい)

(黒狐いや、黒狐人族全員を捕獲してくれ。一人残らずだ)

(承知致しました)


「どうかした?」

「あっ、悪い」


 立ち止まっていた俺を気にしたステラが、声を掛けてきた。

 俺が返事をすると、そのままルーカスの居る場所へと歩き出す。


 ステラの後姿を見ながら、復讐を終えたステラのモチベーションが気になった。

 この国唯一の『賢者』のステラは、俺の想像以上に努力をしたのだと思う。

 それも黒狐への復讐心を糧にしてだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ