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682話 余計な用件!

「待たせたか?」

「いや、俺もさっき来たばかりだ」


 時間よりも、かなり早めについたつもりだったが、既にジラールは待ち合わせ場所に立っていた。


「早いが、とりあえず中に入るか」

「そうだな」


 立っていても、城の中の待合室に居るのも同じ事だ。

 早かろうが予定が入っている限り、俺達客人の待合室は必ず用意されている。


 朝早いが、城の復旧作業をする作業員達は、汗を流して働いていた。

 俺に気付くと挨拶をしてくれる。

 冗談で「手伝ってくれよ」と言われるので、「又、今度な!」と笑って返す。


「タクトは誰とでも仲がいいよな?」

「そうか?」


 ジラールは、俺のランクSSSの冒険者という肩書きに惑わされているのだと思う。

 沢山の冒険者を見てきたジラールでも、俺は異質な存在なのだろう。


 待合室に通されて、暫く待つ。

 ジラールは窓の外を見たり、立ったり座ったりと落ち着きが無い。


 昨晩、シロとクロが戻って来て報告をしてくれた。

 スタリオンはユキノに好意は無いそうだ。

 少し前に「いいな」と思った際、急激に悪寒が走ったそうだ。

 その後も、同じような事が何度も有り、スタリオンの中でユキノは『邪な事を考えてはいけない女性』になっていると、フェンが言っていたそうだ。

 クロの方も、調査完了とだけ報告があったので、問題無い事が分かった。


 部屋の扉を叩く音が聞こえて、ルーカスへの謁見許可が出た。

 俺とジラールは案内されて、謁見の間へと移動する。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 謁見の間には、王族の五人が居た。

 当然、護衛衆の四人も居る。

 ユキノの頭には、俺が贈った髪飾りが付いていた。

 俺はとても嬉しかったが、表情に出さないように気を付ける。


 最初にルーカスが俺に、指名クエストを受注してくれた礼を言う。

 俺が既に、スタリオンを完膚なきまでに叩きのめした事を、誰も知らない。


「その親善試合は、勝っても問題ないんだろう?」

「勿論だ。但し、殺す事だけは止めて欲しい」

「分かった」


 最初から殺すつもりは無いが、俺の実力を知っているからこそ、心配しているのだろう。


「オーフェン帝国での行動は、護衛衆のセルテートを除いた四人と共に行動してくれ」


 セルテートは、王都に残されたアスランやヤヨイの護衛を、騎士団とするそうだ。

 王都の護衛任務には、元護衛衆のカルアにも指名クエストが出ているそうで、カルアも受注したと、ジラールが教えてくれた。


「質問はあるか?」

「いいや、特に無いがステラと個人的な話をさせて欲しい」

「ステラと?」


 ルーカスは勿論だが、名前を出されたステラも思い当たる節が無いので、戸惑っている。


「余達に聞かれては不都合な事か?」

「個人的な事なので、出来れば二人で話したい。無理なら護衛衆の誰かと一緒でも構わない」

「……分かった。ステラにはこの後、タクトと話をする時間を設ける」

「ありがとう」

「それとは別にシャレーゼ国の事、感謝する」

「俺が勝手にしたことだ。国は関係ないんだろう」

「確かにそうだが……」

「武闘会にネイラートは参加出来ないと思うが、正式に国王就任の事で連絡はあると思う。その時は、宜しく頼む」

「分かっておる」

「それと、枯槁(ここう)の大地に森を造った。今後は希望の森林と呼んでくれ」

「……森を造った?」

「あぁ、頼まれて森を造った」

「誰にとは聞かないが……分かった。森の件は国中に連絡しよう」

「悪いが頼む」

「他には無いか?」

「もう、無い……あっ!」


 肝心な事を忘れていた。


「国王と王子にターセルの三人に話があった」


 三人の共通点は一つしかないので、三人とも何の事か分かったようだ。


「急を要する話か?」

「急ではないが、早めに知っておいた方が良い話だ」

「……分かった」


 ルーカスはロキサーニに伝言を頼んだようで、ロキサーニが席を外した。


「別室で話をする。アスランとターセルは余と一緒に部屋まで移動するぞ」


 退室際、ステラが俺の方を見ていた。

 何の話か気になっているのだろう。



「指名クエストの受注報告だけのつもりだったんだがな」

「悪いな。ついでに色々と思い出してな。用件は一度の方が、お互いに都合がいいだろう」

「それは確かにそうだが……」

「ジラールも忙しいだろうし、残りは俺だけでもいいぞ?」

「そうだな。俺が居ても意味が無いしな……俺はギルド本部に戻るが、後から顔を出すか?」

「いいや、暫くは王都を離れる事になると思うからな」

「さっき言っていた件に関係するのか?」

「さぁ、どうだろうな」

「聞くと、ろくでもない事になりそうだから聞くのを止めるが、無茶はするなよ」

「ありがとうな」

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