680話 スキルの仕分け!
アデムとの対話をしていた事は、シロとクロには伝わる。
勿論、対話の内容までは分からない。
しかし俺の表情から、良い話をしたのでは無い事くらいは分かるだろう。
俺はステータスを開き、不要だと思うスキルを『削除予定スキル』に移動させる。
魔獣から習得したスキルの【噛付き】や【毒牙】等は、使用する事が無い。
俺が噛み付いて魔物と戦闘していたら、戦闘を見ていた者達から「気味が悪い!」と、言われるに違いない。
これ以上、変な奴扱いはされたくない。
同じように、人族の戦闘方法と掛け離れているスキルを選別していく。
習得していると言う事は、スキル内容も分かっているので仕分け作業は簡単だ。
似たようなスキルも比べながら上位スキルだと思うほうを残す事にする。
思っていたよりも、このスキルを仕分ける作業は楽しかった。
スキル名を見ると「あぁ、このスキルはあの時のか!」と思い出す。
掃除を始めて、漫画や小説があると廃棄するかの確認をすると言う名目で、掃除を中断して読んでしまう感覚に似ていた。
違うのは、俺以外はステータス閲覧が出来ないので、人差し指を左右に振りながらニヤニヤしている変質者に見えるかも知れない。
低ランクの魔物に比べて、高ランクの魔物の方がスキルの質も良い。
人族から得たスキルは、今後の役に立つかもしれないので、移動させる優先順位を下げる事にした。
スキルの仕分けは、五分ほどで終わる。
移動させながら俺は「いずれは今、使っているスキルも振り分けないと、死んでしまうのだろう」と思っていた。
俺がどれだけの事をしようが、アデム達神の思惑で、簡単に覆す事が出来る。
アデム達の意に沿わない行動をすれば、俺が殺される対象になるのだろう。
結局は神の気分次第だと、自分に言い聞かせる。
状況が変わったところで、俺のするべき事が変わるわけでも無いからだ。
俺の信じる神は、ポンコツで駄目な女神のエリーヌ唯一人なのだから……。
今頃、エリーヌはアデムかモクレンに叱られているんだろうと思う。
それよりも、悪い事をした訳でも無いモクレンが叱られているかも知れなかった事が申し訳ないと感じていた。
駄目な部下と、上司に挟まれて本当に苦労しているのだろう。
そう思っていると又、神からの呼び出しが掛かった。
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「本当にすいませんでした」
モクレンが俺に謝罪をする。
「頭を上げて下さい。モクレン様が良かれと思って、私にしてくださった事は分かってます」
「そう言って貰えると、少しは楽になれます」
モクレンは俺が落胆していると思って、アデムと別れると同時に連絡をくれた。
世界を滅亡させない方法の解釈が、モクレンとアデムで異なっていた事が原因のようだった。
そもそも報告した際に、問題となった【殲滅】の【恩恵】をそのままにする方法を選んだ為、アデムに問い質されたそうだ。
アデムの一方的な話でなく、モクレンがこの選択を選んだり理由等も聞いた上で、きちんと説明をしたそうだ。
モクレンもアデムの言い分が正しいと理解した為、今回の処置になったと経緯を説明してくれた。
「中間管理職も大変ですね」
「そんな事はありません」
モクレンは笑いながら答えた。
中間管理職と言う言葉が通じたのも驚いたが、モクレンとアデムの関係も、お互いに尊重し合える関係なのだと感じた。
エリーヌでは、絶対に無理だろう。
俺の行動に関する報告書は、エリーヌがきちんと提出しているそうだ。
以前はいい加減な内容だったらしい。
「タクトが、エリーヌの事を広めたおかげですね」
モクレン曰く、最近のエリーヌは提出物はきちんと、納期内に提出をして内容も誤記等が少ないらしい。
報告書に自分の認知度が増えている為、嬉しいとモクレンに話していたそうだ。
俺はエリーヌの事を、実際は良く知らないのでモクレンに質問をする。
しかし、神の過去や詳しい事は、本人しか喋ってはいけないらしく、モクレンは何も答えなかった。
「先程は聞きませんでしたが、ガルプという前の神の置き土産と言うか、問題はこれ以上は無いですよね?」
「どうですかね。それも含めてのエクシズでの生活になりますからね」
本当に無いのか疑問だったが、モクレンの表情や口調からは読み取る事が出来なかった。
流石は神だけあって、表情を変えないでいる。
喜怒哀楽が分かりやすいエリーヌとは、大違いだ。




