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642話 選択と後悔!

 数日後、シャレーゼ国との往来が出来る洞窟に到着する。

 誰かと一緒に、これだけの時間を旅をする事は、久しくなかったので新鮮だった。

 同時に、ネイラート達に少しだけ情が移ったのも事実だ。


 昨夜、シロが戻って来てロッソの仮面を俺に渡してくれた。

 黒色一色で、穴の凹凸も無い。

 ロッソはガイコツなので、鼻が高くないので不要だったのだろう。

 辛うじて目の穴は開いているが、赤い硝子のような物が組み込まれていた。

 紐の様な物で仮面と頭を固定する物も無い。

 本当に仮面だけだった。

 とりあえず、装着してみる。

 凹凸の無かった仮面だったが、装着と同時に俺の顔の形状に合わせて変化する。

 視界も赤くなく通常通りに見ることが出来る。


「似合っているか?」


 シロに感想を聞いてみる。


「はい。服とも色合い的にも合っていますよ」


 確かに服も、赤と黒を主にしている。


「シロから、俺の目は見えるのか?」

「いいえ、赤色の硝子しか見えません」


 ロッソなりに、目が合わないようにと工夫したのだろう。

 俺は仮面に手を当て、外そうとすると簡単に外すことが出来た。

 流石はロッソだ。良い仕事をすると感心する。

 

「ん?」


 俺達に気が付かないのか、イエスタがネイラート達から離れて歩いて行く。

 気になったので、【隠密】を使い後を追う。

 暫くすると、いきなりしゃがみ込み、イエスタは泣いていた。

 泣きながら謝罪の言葉等も口にしていた。

 一人で泣いていたという事は、ネイラートや部下の騎士達にも知られたく無かったのだろう。

 泣いている理由は気になったが、俺に聞く理由は無い。


 朝、イエスタが挨拶をしてきたが、普段通りだった。

 俺の目には気丈に振舞っているように見えた。



 イエスタが松明に火を点けて、洞窟の奥へと進んでいった。

 俺は一番背後から、様子を伺っていた。

 背後からの追跡者は居ないし、前方から気配も無い。


(変だな?)


 以前に通った時には、風が吹いていた。

 しかし、今は空気の流れを感じない。

 それに一向に出口の光が見えてこない。


「こっ、これは!」


 先頭で松明を持っていたイエスタが叫ぶ。

 思った通り、シャレーゼ国側の穴が岩で塞がれていた。

 外の光が差し込んでこないので、かなり岩が積んであるのだと推測出来る。

 岩を破壊しようかと思ったが、破壊するという事はネイラート達が戻って来た事を伝える事になってしまう。

 気付かれないで済むのであれば、その方が絶対に良いだろう。


「ちょっと、待っててくれ。俺が様子を見てくる。シロは残ってくれ」


 俺は【隠密】と【転移】を使い、シャレーゼ国に入国する。



「……何だこれは?」


 俺の目には、数日前の森等が生い茂っていた風景と異なり、火事でもあったかのような燃え尽きた樹木や、焼けただれた大地が入って来た。


 塞がった岩の前では十人程の騎士らしき男達が、座り込んで話をしていた。


「暇だな」

「本当だぜ。ここを塞げば俺達の仕事は終わったようなものだからな」

「まぁ、俺達は指示していただけで、実際は村の奴らが岩を積んだんだけどな」

「確かにな」


 そう言いながら、大声で笑っていた。


「しかし、全員殺す事は無かったんじゃないのか?」

「仕方ないだろう。サイノス様の命令だ。俺だって女は犯した後に殺したかったよ」

「それは俺もだ」

「まぁ、奴等もネイラート王子の事を報告しなければ、助かっていたのにな」

「そうだな。目撃した事で報酬が貰えると思っていたんだろうが、逃亡するのを見逃した罪になるなんて、思ってもみなかっただろうな」

「田舎の村人が調子に乗るからだ」

「違いない」


 先程以上に大笑いをしていた。


 話の内容から、イスノミ村の村人は全員殺された。

 しかも、俺がネイラート達を助けたからだ。

 もし、俺がネイラート達を助けなければ、イスノミ村の者達は命を落とす事は無かったのだろうか?

 そう考えると、憤りの無い怒りが俺を襲う。

 俺は仮面を被り、【隠密】を解く。


「ん? 何だお前」


 俺に気が付いた騎士が威嚇しながら、近寄ってくる。


「これで仲間は全員か?」

「さぁな」

「イスノミ村の村人を殺したのは、お前達か?」

「イスノミ村? あぁ、そこの村は確かそんな名前だったな」


 ふざける様に回答をする。

 俺は無言で、騎士の首を手刀で斬る。

 そのまま、騎士の隣を通り過ぎようとすると、騎士が「待て!」と叫び動く。

 次の瞬間、騎士の首が地面に転がった。

 俺は気にせずに、他に騎士達の所へと足を進める。


 仲間が殺された事を理解すると、すぐに抜刀して俺に向かってきた。

 簡単に殺してしまっては、イスノミ村の村人達に申し訳ないと思い、【風刃】で両手両足を切断する。

 斬られた事に気が付かないので、前のめりになり顔から地面に激突する。


 痛みで叫ぶ騎士達。


「た、助けてくれ!」


 命乞いをする者も居たが、俺は耳を傾ける事は無かった。

 【魔力探知地図】や【望遠】で周囲を確認したが人の気配はしなかった

 住処を追われ、ろくに食事も出来ていない気が立っている獣達が、血の匂いにつられて集まってくる。

 俺が居る為、一定の距離からは入って来ない。


「じゃあな」


 一言だけ呟き、その場を去った。

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