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631話 依頼完了!

 ジラールから連絡があったので、城に戻る。

 ネイラートとの話がどうなったのかは、俺も気になっていた。

 ネイラートがエルドラード王国に協力を頼んでも、ルーカスはいい返事はしない筈だ。

 他国の情勢に介入する前例を作ってしまえば、各国が自分の都合の良い者達を支援し始める。

 国と言う体を壊してしまい、この世界の独裁者を作ってしまう危険もある。

 だからと言って、ネイラートを匿えば、国同士の大きな問題へと発展する。

 シャレーゼ国としては、反逆者を渡せと言うのは正当な権利だからだ。


 ネイラートに、エルドラード王国まで案内を頼まれた時から、ネイラートが希望する回答が貰えないと思っていた。

 しかし、俺が案内を断っても、ネイラート達は諦める事無くエルドラード王国を目指していたのだと思う。

 そう思い、ネイラート達をエルドラード王国まで案内してきた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「冒険者のタクトだ」


 俺はルーカス達に自己紹介をする。

 今回はシロとクロも本来の姿のまま、同行している。

 そして、呪詛証明書を提示して、丁寧語が話せない事を伝える。


 部屋には先程、別れた時に居た四人の他に国王のルーカスに、王妃のイース。それに、王子のアスランと護衛衆の四人が居た。

 今、俺が最も会いたくない王宮鑑定士のターセルの姿もある。

 当然、俺の事を【鑑定眼】で鑑定しているだろう。


「まずは、ネイラート王子を案内してくれた事に礼を言う」


 ルーカスは俺に話し始める。

 ネイラートとの対談については何も話をしなかった。


「ネイラート殿と同行していた者達は客室に滞在して貰うので、後で案内を頼む」

「先に部屋だけでも教えて欲しい」

「私が案内致します」


 俺は言葉に、アスランがルーカスの代わりに答えてくれた。

 ネイラートとイエスタも退室して、用意された部屋へと移動するそうなので、俺も同行する。

 当然、アスランだけでなく、護衛衆からロキサーニも同行する。


 部屋を移動する際も、ネイラートは浮かない表情だった。

 俺の予想通りの結果だったのだろう。

 一言も話さずに滞在に用意された部屋に着いた。


 ロキサーニに続いて、アスランが入る。

 合図とともに、ネイラートとイエスタが部屋へと入って行く。

 部屋は思っていたよりも広い。

 ネイラートから人数を聞いていたので、大き目の部屋を用意したのだろう。

 客室だが、ベッドは数個しかない。

 部屋の中でも幾つか仕切られている。

 アスランとロキサーニが、部屋の仕様を説明する為に、扉を開けて隣の部屋へと移動したので、その隙にクロが全ての人達を部屋に出す。

 先程まで、自分達が居た部屋から人声が聞こえるので、いち早くロキサーニが部屋に戻って来た。

 ロキサーニは部屋を見て絶句する。

 つい先程まで俺以外、誰も居なかったのに多くの者達が戸惑いながら立っている。


「ネイラートの仲間を連れてきた」


 俺は簡単に説明をする。


「この一瞬で、どうやって……」


 ロキサーニの後ろに居たアスランも驚いていた。

 ネイラートとイエスタも驚いていたが、どこか寂しそうだった。


 ネイラートとイエスタは、他の者達に説明をする。

 ここがエルドラード王国の城である事。

 エルドラード国の国王ルーカスに話を聞いてもらった事等だ。

 話し合いの結果が気になる者も居たが、ネイラートは「今夜、話す」とだけ伝えた。


 途中になった、部屋の説明を再開して貰う。

 夜間の出入りは出来ず、扉には衛兵等を数人配置する事等も、説明をしていた。

 万が一の事も考えているんだろう。


 部屋の説明が終わったようなので、俺はネイラートに声を掛けて、俺の依頼はここまでなのをネイラートに伝える。


「そうですね。確かに……」


 ネイラートは服から装飾品を外す。


「ネイラート様、それは!」


 イエスタが何か言おうとするが、ネイラートが止める。


「これを」


 宝石が付いた装飾品を俺に差し出す。


「これで足りるでしょうか?」


 【鑑定眼】で見てみると、シャレーゼ国に代々伝わる宝石の一つのようだ。

 ネイラートには、とても大事な物なのは分かる。


「これは大事な物なんだろう。今度会った時に別の物を貰うから、これは仕舞っておけ」

「しかし……」


 俺は無理矢理、ネイラートに装飾品を返す。


「分かりました。今度、お会いする事があれば、その時は……」


 俺の「今度」と言う言葉に戸惑ったようだ。

 ルーカスとの話で、俺ともう一度会う事は無いと感じているのかも知れない。

 お気楽な冒険者と違い、国民の事を考えている者達の苦悩はだろう。

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