628話 修復作業!
城に向かう為、ジラールとヘレンの用意があると言うので、少し待ち時間が出来る。
用意が出来たら連絡を貰う為、仲間登録をする。
「高ランクの冒険者であれば、登録済の筈だが……」
「そうですね」
登録する時、二人共不思議がっていた。
俺も同じように不思議そうな顔をする。
その間に、アルとネロと待ち合わせをして情報を集める事にした。
「なんじゃ、面白い事か?」
「悪いが違う。俺について、教えて欲しい」
「変な事を言うの。タクトの事はタクトが一番知っているだろうに?」
「師匠~、へんなの~」
確かにそうだが、俺の言いたい事が上手く伝わっていないので、もう一度丁寧に説明をする。
「おう、エルドラード国王達がマリーと一緒に来てドワーフの奴等に、城修復の石材等の協力を取り付けておったぞ」
城修復には、多くの材料に加工が必要だ。
出来る限り早い修復をしたいルーカスが、四葉商会経由でドワーフの協力を頼んだようだ。
あくまで納入は四葉商会なので、問題になることは無い。
しかし依頼する立場という事や、ゴンド村との友好な関係を考慮して多忙な中、ルーカス自ら足を運んで誠意を見せたのだと感じた。
「トブレがタクトという冒険者が居たら、友人だから無下に扱うなと言っておったぞ」
「そうか……」
俺の事を忘れてしまっている人族に対して、トブレが俺の事を気に掛けてくれた事が嬉しかった。
「因みに妾の師匠だとも言っておいたぞ。理由を聞かれたから、お主に負けたから弟子になったと伝えたぞ」
「わたしもなの~。師匠は最強って教えたの~」
「俺が魔王という事は言っていないよな?」
「それは前に口止めされたから、言わずにおいたぞ」
「そうか……」
今の俺は、最強魔王二人を倒した冒険者と言う事だ。
問題が無いかと聞かれれば、問題はあるが許容の範囲内だ。
「妾もタクトに謝る事があったのじゃ」
「謝る事?」
「ロッソとは親友だと言ってしまったのじゃ」
どうやら、他の魔王の話になった際に、俺とロッソは種族を超えて話が出来る数少ない者だと言うのを面倒だった為、親友と言ったそうだ。
驚くルーカス達を見て、要らぬ事を言った事に気が付いたようだったが、時既に遅し。
そもそも、ロッソと会話が出来る者等、この世界でも数人しか居ない。
目が合った瞬間に、あの世行きになるんだから……。
「わたしも師匠はお母様のお気に入りって、教えてあげてたの~」
ネロの母親セフィーロ。
不死身のヴァンパイアロードだ。
ゴンド村でも暮らしているし、俺の記憶が消される前にも、ルーカス達とは面識もある。
記憶がどのように改ざんされているかで、今後の状況が大きく変わってくる。
もし、セフィーロと話しをしたとしても、余計な事は話してないとは思うが……。
「色々とありがとうな」
「タクトに呼ばれれば、何時でも駆け付けるのじゃ」
「わたしもなの~!」
アルとネロの言葉に、俺は自然と笑顔になる。
ジラールから、用意が出来たと連絡が来たので、二人に礼を言って別れる。
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「お前は着替えないのか?」
服装が変わっていない俺に、ジラールが少し驚いていた。
「服は、これ一着しか持っていない」
正装も兼ねる事が出来る様に、今回はデザインも変更した。
正確には、【複製】したので、三着持っている。
「御一行は、どこで待機しているんだ?」
「すぐ近くまで来ている」
「そうか……」
ジラールとヘレンのおかげで、城の中には問題無く入る事が出来た。
改めてみると、思った以上に城は壊れていた。
修復作業をしている作業員達に目をやると、知った冒険者が数人居た。
俺はジラールに聞くと、修復作業の人員が足りないので、冒険者ギルドからも冒険者をクエストとして出しているそうだ。
当然、報酬も良いので喜んでクエストを受注しているそうだ。
「御待たせ致しました」
案内役が挨拶をして用意された部屋まで、修復している作業中の横を通りながら歩く。
忙しいのに俺達が通り際は、作業を中断して頭を下げる。
見知らぬ俺を、重要な客人だと思っているのかも知れない。
案内人もジラールとヘレンも、無言のまま歩いている。
普通よりも長く感じる。
沈黙がこんなに辛いとは、思っていなかった。
今迄の俺の周りには、それを感じさせない程、賑やかだったのだと改めて感じた。
当たり前の事に感謝する心を忘れていたのだろう。
案内役が止まる。
入った事がある部屋だ。
少人数の打ち合わせ等に、良く使用されていた。
それに、俺がルーカス以外の王族に、ユキノにプロポーズをした事を報告した部屋でもある。
この部屋だと、ネイラート達全員を影から出す事は出来ない。
とりあえずは、ネイラートとイエスタの二人だけで良いだろう。
他の者は俺が無事だと言って、二人に安心させるしかない。




