613話 忠告!
今回の【蘇生】をした事で影響が出そうな事に関しては、大体把握出来た。
残すは、もう一度冥界に行き、オーカスに会う事だ。
オーカスが俺に会ってくれるかは別だが、聞きたい事もある。
今の俺のスキル【蘇生】は、冥界と通信出来るスキルになっている。
俺は自分の胸に手を当てて、冥界へと向かう。
目を開けると、相変わらず真っ暗な暗闇だ。
暫くすると、俺の案内役のセレナが現れる。
「どうされましたか? もう蘇生は出来ませんが……」
「オーカス様に会う事は可能でしょうか?」
「オーカス様にですか? どのような御用件でしょうか?」
俺は今回の蘇生の礼と、聞きたい事があるとセレナに伝える。
「暫く御待ち下さい」
セレナは誰かと連絡を取っていた。
俺はその間、真っ暗で何もない空間を見ている。
「なにか用か」
オーカスの声に振り向くと、そこにセレナの姿は無く、オーカスが居た。
「頂いた三人の蘇生を全て使った事と、ユキノ達を蘇生頂いた御礼をと思いまして」
「律儀だな」
黒いフードを被っているので、口元しか確認出来ないが笑っていた。
「それと、人族への私に関する記憶操作について伺いたいと思っておりますが、宜しいでしょうか?」
「答えられる範囲で良ければ」
「有難う御座います」
俺はオーカスに俺の写っている写真等、俺を認識出来る物についてどうなったかを質問する。
オーカスは俺の関係する物に関しては、無意識のうちに塵等の不要物と認識させて、廃棄させたそうだ。
捨てた本人も、捨てたという行為さえ覚えていないだろうと教えてくれる。
次に俺は、冒険者のタクトと俺が一致しない記憶の綻び等について質問をする。
「それは問題無い。記憶に障害が出たところで、本人が納得出来るようになっている」
俺はオーカスの回答に、神得意の御都合主義だと感じた。
そもそも、他の神は干渉出来ない現世に、オーカスが干渉出来ている事自体、疑問を持っていた。
以前にも確認したエリーヌ達とは違う、治外法権の神なのだろう。
他の世界にも、エリーヌ達神と対なる神として、オーカスのような冥界の神も居るという事だ。
「其方、世界の崩壊者候補らしいの」
神同士で情報の共有もしているようだ。
「そのようです。私は人々の為にと思っていた行動が、駄目だったそうです」
俺の言葉に、オーカスは無反応だった。
「其方にとって、死をなんと考える?」
「……死ですが、始まりがあれば終わりがあるように、誕生の先に必ずあるものが死だと思います」
「しかし、其方は不死を望んだと聞いたが、それはどうしてだ?」
「それは……夢と言うか、転生した際のテンプレと言うんですか、特に深い意味は無かったんですが」
確かに、不老不死とは言ったが、特に考えがあって発言した訳では無い。
俺自身、不老不死の体になってと言うより、不老不死の先輩でもある、アルとネロにロッソ達を見ていると、不老不死は思っているより良いものでは無い事だと分かっていた。
限りある時間を精一杯生きるからこそ価値がある。
昔、誰かに聞いた言葉が頭に浮かんだ。
「結局、無い物ねだりだったのだと思います」
「そうか。では、私から其方に言っておきたい事がる」
「なんでしょうか?」
「其方、狂暴性や残虐性が向上しているが、気付いておるか?」
「えっ!」
オーカスの言葉で、今迄の事を思い出す。
人を殺したりする事に対して、心が痛むことは無くなっている。
拷問のように、攻撃と治癒魔法で相手の心を折る事もしている。
しかし、それらの行為を楽しんだ事は無い。
オーカスの言う通り、少しずつ俺の感覚がズレてきているのだろうか?
「魔王になった事が関係していますか?」
「それは関係ない。其方が、エクシズの環境に適応した結果だが、持て余す力を手に入れているからこそ、道を外れる恐れもある。私からの忠告だ」
「……ありがとうございます」
強大な力は身を滅ぼす。
漫画かアニメで、こんな台詞があった事を思い出した。
オーカスの言葉は俺にとって有難かった。
今の俺には、怒られる事はあっても、叱ってくれる存在が居ない。
人族から俺の記憶が消されたから、尚更だ。
それに自我を失うことは無いが、もし俺の意志に反して力を使う事が起きた場合の事を考えると、恐ろしくなった。




