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598話 前夜祭-10!

「この場で、皆に報告したい事がある」


 ルーカスが立ち上がり、声を張り上げる。


「ユキノ。こちらに」


 ルーカスはユキノを呼ぶと、王妃であるイースも立ち上がり、自分と王妃との間にユキノを立たせる。


「我が娘で、第一王女のユキノが婚約をした」


 ルーカスの発表に会場内から色々な声が聞こえていた。

 マリーは俺の顔を見るが、俺も聞かされていない事を伝える。

 ルーカスが俺を驚かそうとして、考えたんだろう。

 当然、ユキノの相手は誰なのかと騒いでいる。

 オーフェン帝国の王子なのか、それともこの会場に居る領主の息子なのかと、皆が色々な想像をしている。


「相手はこの者だ!」


 ルーカスは俺を見ている。


「タクト。上がって来い」


 俺の名が呼ばれた事で、傍にいたヘレフォード達は驚いていた。


「マリー、ちょっと行ってくるわ」

「変な事言わないでよ」


 マリーに背中を叩かれ送り出される。


「マリー様は御存じだったのですか?」

「えぇ、まぁ」


 俺は見えていないが、ヘレフォードがマリーに聞いていた。

 多分、マリーは苦笑いをしているだろう。


 俺はユキノの横に立ち、会場を見下ろしていた。


「ユキノ様の御婚約者であるタクト様になります」


 メントラ大臣がルーカスに代わり、簡単に俺の自己紹介をする。

 最短記録でランクSまでなり、現在は最高ランクSSS。

 オークロード討伐パーティーのメンバーである事。

 冒険者として、指名クエストで幾つかの難易度の高いクエストを達成していた事。

 そして、四葉商会の代表。

 先程の新技術は勿論だが、飛行艇という空を自由に往来出来る乗物も、四葉商会からの技術提供だと説明する。

 多少、話を盛っている感じもするが、王族としての見栄みたいなものも有るのかも知れない。

 因みに先に惚れたのはユキノだと言う、あまり関係無い事も紹介していた。


「尚、ユキノ様はタクト様と御成婚後、王位継承権を辞退されます」


 ユキノが王位継承権を辞退する事に、領主達貴族は驚く。

 俺自身が王族にならない事も理解したのだろう。

 簡単になれる訳でない地位を、簡単に手放した俺を馬鹿な奴だと思う者も居るに違いない。


「正式には、後日発表致します。正式発表までは御内密に御願い致します」


 何故、正式発表まで黙っておかないのか疑問に感じたが、色々と事情があるらしい。

 ユキノが王位継承から外れるという事は、アスランとヤヨイに取り入ろうとする者が出てくるだろう。

 それに、王位継承権が無くなったとはいえ、元王族のユキノや俺に取り入って、王族とのパイプを築きたい者も居る筈だ。


 メントラから俺に一言と言われるので、喋る事にする。


「えーっと、タクトだ。【呪詛】の関係で丁寧な言葉使いが出来ない。俺は国民が笑って一日を終えれるような状況を作りたい。それが簡単な事では無い事位、分かっている。領主達も自分の領民達が幸せになれば、領主達も幸せになる。領主達が幸せになれば国自体が幸せになると思っている。王女と一緒になるのは先だが、色々と迷惑を掛けるかも知れないが、宜しく頼む」


 俺は思った事だけ喋り、頭を下げる。

 隣のユキノも頭を下げていた。


 会場からは拍手が聞こえる。

 一応、祝福はされたのだと納得する。


 顔をあげると、笑顔で俺達を見て手を叩いてくれいる光景が目に入る。

 ヴィクトリック商会の親子は落胆の表情を浮かべていた。

 先程まで潰すと言っていた商会の代表が、第一王女の婚約者なのだから仕方ないだろう。

 俺に言わせれば、身から出た錆だ。

 

「もう下がって良いぞ」


 ルーカスの言葉で俺の役目は終える。



 ヘレフォードの所に戻るまでに、領主達が俺の進行方向を避けてくれる。


「よっ、どうだった?」

「タクトにしては上出来ね」


 マリーに俺の挨拶の評価を聞く。


「何を緊張しているんだ?」


 ヘレフォードとアンガスに話し掛ける。


「いえ、タクト様がその……おめでとうございます」

「あぁ、ありがとうな」

「独占インタビューとかは、無理でしょうか?」

「悪いな。それは無理だな」


 ヘレフォードの商売魂は凄いと思った。

 しかし、独占インタビューが出来れば確かに、売り上げが上がる事は間違いない。


「ユキノ様は、タクトとの出会いを記事にしても良いと言っていたわよ」

「はぁ?」


 マリーが思いもよらぬことを口にした。

 以前に、ブライダル・リーフに遊びに来た際にフランが冗談で聞いたら、あっさり承諾したそうだ。

 女子会の恋バナの延長のような気もしたが……。


「タクト!」


 ダウザーが大声で俺達の所にやってくる。

 後にはミラと、ジーク領領主のリロイにニーナも居た。


「私にも黙っているとは、水臭いではないか」

「まぁ、事が事だからな」


 ダウザーがいつもの口調で無く、人前用の口調なのに違和感がある。


「おめでとうございます」


 ミラからも祝いの言葉を貰う。

 リロイとニーナも同様だった。


 ダウザーが居る事で、他の領主が俺に近付く雰囲気が無くなる。

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