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596話 前夜祭-8!

「ここまでは、この国の人々が少しでも楽に生活が出来るように発明した物です。次は、冒険者に向けて発明した品を二品紹介致します」


 マリーは収納鞄から何の変哲もない剣を出す。


「こちらは魔力を込めると炎が噴き出す炎の剣になります。魔力がある剣士であれば扱える代物になります」


 俺はマリーから受け取ると、剣を上げて魔力を込める。

 すると、剣が炎を纏った。


「カルア様達も御体験して頂けると幸いです」


 魔術士のカルアに魔法剣士であるロキサーニ、賢者のステラが、お互いに顔を見ていた。


「興味のある者は体験してみるが良い」


 ルーカスが許可を出すと、カルアとロキサーニの二人が下りてきた。

 俺は剣を渡す時に全力で魔力を込めると、それだけ炎が強くなる事を教える。


 当たり前だが魔術士と魔法剣士の二人は、魔力の扱いには慣れているので、問題無く炎を出して、領主達を感動させていた。


 マリーは無言で収納鞄から瓶を取り出す。

 先程の炎の剣が派手だったので、瓶が出て来たところで会場が静まり返る。


「国王様。ターセル様に、これを鑑定して頂けますでしょうか? 私が言うよりも鑑定士であるターセル様の御言葉の方が信憑性が御座います」


 マリーの言葉にルーカスが許可を出す。


「こ、これは!」


 鑑定したターセルが驚く。


「素晴らしいですね。伝説級の秘薬エリクサーです!」


 エリクサーという言葉にルーカスは勿論、三獣士も驚く。

 領主達の中でもエリクサーを知らない者が居るので、ターセルがHPとMPを完全に回復させる事が出来る薬だと説明をしてくれた。


 俺はマリーの献上品の進め方を見ながら、素晴らしいと思っていた。

 発言力がある人物や、誰に触らせる事で商品価値が高まるかを知っているようだ。

 この会場に居る者はマリーから目を離せないでいた。 


 本当であれば動画撮影出来る道具。

 俺が『ビデオカメラ』と名付けるつもりでいた道具屋や、浄化石を紹介したかった。

 ビデオカメラは、トブレがどうしても気に入る物が出来ないそうなので、今回は見送る事にした。

 浄化石については検証等は魔法研究所に協力して貰い、効果を試すつもりだとマリーの提案に賛成したので後程、人気が無くなった際にシーバ達に頼むつもりでいた。


「次が弊社最後の献上品になります」


 マリーが嘘発見器を出す。


「これは、嘘を見破る事が出来る装置です」


 当然であるが、「本当なのか?」「そんな簡単に嘘が見破れるのか?」と疑うような言葉を小声で発していた。


「どなたか体験されますか?」


 マリーの言葉に立候補する者は居ない。

 当たり前だ。そんなリスクを背負ってまで体験する必要は無い。


「私が体験しましょう」


 王子であるアスランが立候補する。


「もし、これが実用されれば、この国がもっと暮らしやすくなるかも知れません。喜んで協力させて貰いましょう」


 アスランは俺達の所まで下りて来た。


「私が質問をしても疑われるだけですので、質問はアスラン様が皆様の誰かを指名頂いても宜しいでしょうか?」

「分かりました」


 マリーがアスランへの質問は、招待された領主達にする事を伝えた。

 アスランには、全て「いいえ」と答えるように伝える。

 そして、マリーが使い方を説明した。


「アスラン様には全て、いいえと答えて頂きます。もし嘘ならこの石が光ります。嘘の大きさによって光の大きさが異なります」


 領主達は半信半疑で聞いている。


「では、アスラン様宜しいですか?」

「いいえ」

「あっ、まだ質問では無いので……」

「そうでしたか。それは失礼しました」


 俺は、そのやりとりを見て笑う。


「では、始めさせて頂きます。アスラン様はエルドラード王国の王女ですか?」

「いいえ」


 嘘発見器に反応は無い。


「アスラン様はエルドラード王国の王子ですか?」

「いいえ」


 嘘発見器から、大きな光が放たれる。

 この光を見ると、領主や招待客達から声が漏れる。


「こんな感じになります。では、アスラン様どなたかを指名頂けますでしょうか?」

「分かりました」


 アスランは目の合った領主に質問をするよう告げる。


「アスラン様は男性ですか?」

「いいえ」


 当然、嘘発見器は光る。

 いきなり質問をしても良いと言われても、王子相手への質問等が簡単に思い付く事もないだろう。

 その後も、数人に質問を頼んでいた。

 アスランが良い機会だと思ったのか、自分に聞きたい事がある者は居ないかと尋ねる。

 一人の女性が手を挙げた。


「どうぞ」

「その……アスラン様は意中の女性は居られますでしょうか?」

「いいえ」


 アスランは悩む事無く、即答する。

 嘘発見器も反応しない。

 女性は嬉しそうな表情で、アスランに頭を下げて御礼を言っていた。

 この状況で、この質問が出来るその女性に俺は感心していた。

 質問の内容からしても、アスランに好意を持っているのは間違いない。

 もしかしたら、領主の父親等から命令されているのかも知れないが、あの表情は命令されて質問をした感じでは無かった。


「アスラン様。御協力頂き、誠に有難う御座いました」


 マリーがアスランに礼を言う。

 俺もマリーと一緒に頭を下げた。

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