584話 その後のガルプ!
「元気そうだね」
俺は【神の導き(改)】で、エリーヌと話す。
特に用事は無いが、定期的に連絡を入れないとエリーヌがサボってしまう。
「お前はアデム様と、モクレン様に叱られていたんじゃないのか?」
「失礼ね。私だって、毎回叱られている訳じゃないわよ」
「そうか。それより一応、俺の使命である布教活動は順調なのか?」
「うん、順調だよ」
エリーヌを女神としての認知度はかなり広がっていた。
まず、王族やルンデンブルク家が、エリーヌを信仰している事が大きい。
そして、騎士団の殆どがエリーヌを信仰している。
その影響から、街の衛兵や、冒険者の一部でもエリーヌを信仰している者も居る。
「俺の使者としての役割は果たしているって事か」
「そうだよ。ありがとうね」
エリーヌと他愛もない話をして、時間が過ぎていく。
話をしていて、収穫もあった。
【魔法付与】だが、術者つまり、俺が死んだりしても破壊されない限りは永遠に使用可能だという事だ。
転移扉や収納鞄に、飛行艇に洗濯機。
人々の生活に役立つ物なので、俺としては嬉しかった。
一部の道具には制限を掛けているが、この事実を知った事で製作に意欲が湧く。
当然、ドワーフ族の協力が必要だ。
「あっ、そういえばタクトから連絡があったら、モクレン様に伝えるように言われてたわ」
「又、何かしたのか?」
「失礼ね」
エリーヌの場合、自覚が無いと時が多いので、あまり信用をしていない。
俺は疑いの目をしていたが、エリーヌは焦りながらモクレンに連絡をしていた。
暫くすると、モクレンが姿を現れた。
「お久しぶりですね」
「はい」
神に向かって「お元気ですか?」と尋ねるのも変なので、言葉を飲み込んだ。
「何か用があるのでしょうか?」
前回は、アデムとモクレンの二人から圧力を掛けられながら、会話をしていたので、今回も少し警戒する。
「実はガルプについて、報告をしようと思いまして」
モクレンは、その後のガルプについて教えてくれる。
まず、結論から言うと『存在の消滅』つまり、死という事になる。
当たり前だが、罪としては一番重いそうだ。
罪状はかなりあるそうだが、詳しくは教えてくれなかった。
守秘義務があるのだろう。
現状で俺に関係する事は、全部で三つ。
一つ目は、エクシズに居る不死な者についてだ。
条件付で、アルとネロにロッソ。そして俺の魔王四人。
それとは別に吸血鬼族のセフィーロだ。
これは前回、アデムから聞いているので知っている。
今更何故、同じ話をするのかが気になった。
調査の結果、もう二人いるそうだ。
一人は、樹精霊のリラが管理する魅惑の森のジロイ。
この男は俺が最初に会った不老不死の男なので知っている。
今も永久養分として活躍中だ。
もう一人は、同じく樹精霊のオリヴィアが管理する蓬莱の樹海で、ジロイ同様に意識を奪われ永久養分にされているそうだ。
この二人も条件付だが、森が滅びなければ意識を取り戻さないので、現状では問題視していない。
それに彼等は戦闘能力が低く、【恩恵】も世界を変えるような者は持っていない。
何かの拍子で森が消滅等で、意識を取り戻して害ある者と認定されれば、モクレンの権限で、魔王に討伐を依頼するそうだ。
二つ目は、ガルプがアルにネロ、ロッソに与えた【恩恵】の【不死(条件付)】の条件に付いてだった。
先程の森の養分にされている二人も同様だが一応、ガルプの使者としてエクシズに送られた者達なので、俺に不死の条件を教えると提案されたが、俺は断る。
知ってしまった事で、今の関係が崩れる可能性を恐れたからだ。
モクレンは俺の答えが分かっていたようで、それ以上はこの件について話さなかった。
三つ目は、魔王の称号についてだ。
王都で発見した初代国王が残した本に記されていた事。
欠落していた内容や、ガルプの証言から六人の魔王が誕生した段階で、最後の一人になるまで、戦う事が宿命となる。
これはガルプの存在が消滅しても変わらない。
最後の一人になった者は大魔王の称号と共に、自分以外の魔族や人族を殺すだけの理性が無くなった殺戮生物となってしまう。
全ての種族が滅びると、役目を終えたと判断されて自害する。
そして、新しい世界が再び構築される。
簡単に言えば、エクシズと言う世界を一旦、リセットするという事だ。
これはガルプが、エルドラード王国の初代国王フレッド・エルドラードの【恩恵】である【殲滅】になる。
この【殲滅】は神の中でも与えてはいけない【恩恵】の一つで、一定の条件を満たすと発動する。
フレッド・エルドラードの発動条件は魔王を一人にする事だった。
世界を滅亡させる為に、ガルプが計画した。
その為、フレッド・エルドラードには順調に人生を謳歌させてから、落胆するように小細工もしたらしい。
ガルプは直接エクシズに干渉をしていた事も、調査の結果判明していた。
俺は話を聞きながらも、後付けの理由のような気もしていたし、ガルプの干渉についても半信半疑だった。
ガルプが罪を犯した事は間違いないのだろうが……。




