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564話 賢者と爺!

 俺はライラを今回の作戦に連れて行く為、ライラの元教育係で今は、狐人の里の頭首代理であるラウ爺に伝える必要があると思っていたので、連絡をする。


「これは、タクト殿。久しぶりですな」

「あぁ、里はどうだ?」

「なんとか平和に過ごせております。これもタクト殿のお陰です」

「いや、それはラウ爺達の頑張りだろう」

「確かに村の者達も前より生き生きとしております。それより、連絡を頂けるとは、何か急な用事でもあったのですか?」

「あぁ、そうだな。一応、ラウ爺には報告しておこうと思ってな」


 俺はラウ爺に、ある討伐作戦でライラを戦闘に巻き込む事を伝える。


「そうですか。それはお嬢が自分で決めた事ですかな」

「あぁ、そうだ。ライラに魔法を教えている奴の推薦という形だがな」

「分かりました。お嬢が自分自身で決断したのであれば、何も申しません」


 昔のラウ爺より、物分かりが良くなっている気がした。

 ライラの事を以前よりも、信用しているのかも知れない。


「そういえば、賢者のステラとラウ爺は顔見知りなんだってな」

「ステラは有名人ですからな。まぁ、顔見知りと言うか、少しだけ面倒を見てやっただけですね」

「そうなのか?」

「はい。まぁ、当時はステラが賢者にまでなるなんて、思ってもいませんでしたが、彼女の努力の成果でしょう」

「そうなのか?」

「はい。それより、お嬢とステラは元気ですかな?」

「あぁ、元気だぞ。この間、ライラとステラが腕試しに戦闘をしたぞ」

「なんですと! 二人共、怪我等はしてないでしょうな」

「それは、大丈夫だ」


 ラウ爺が慌てているのが、声だけでも分かる。

 それだけ、二人の事が心配なのだろう。


「ステラがライラの事を褒めていたぞ。賢者になるにはとか、助言もしていたみたいだしな」

「そうですか。尾の数で言えば、お嬢の方が上ですからな」

「あぁ、ステラも九尾の実力を試したいみたいだったしな」

「成程。ステラらしいですな」


 嬉しそうなラウ爺の声だった。

 思えば、最初に会った時も勘違いとはいえ、俺が悪者だと思いライラを助けようとしていた。

 その後の里の反乱でも、ラウ爺は弱き者の味方だった。

 初対面こそ印象が悪かったが、今ではラウ爺は弱い者の味方であり、仁義を重んじる尊敬出来る狐人だ。


「ステラとは会っていないのか?」

「えぇ、ステラはこの国で唯一の賢者ですし、名誉ある三獣士の一人です。多忙を極める賢者が、こんな老いぼれの事等は覚えていないでしょう」

「そんな事は無いだろう。賢い者と書いて賢者だぞ」


 そう言いながら、俺のスキル【言語解読】で、通じているのかが疑問だった。

 しかし、ステラとラウ爺の関係は分からないが、ステラがそうそう忘れる事は無いと思う。


「まぁ、ステラは普段は冷静を装っていますが、感情に左右されやすい子ですからな」

「それは何となく分かるな」


 以前に戦った時、俺がセルテートを倒すと、ステラが後先考えない行動に出た事がある。

 ラウ爺の言っている通りだった。


「それにラウ爺とステラはの関係は、よく知らないが俺が知っているステラは、そんな薄情な奴には感じなかったけどな」

「優しい子ですよ。ステラは……」


 先程とは違い、少し寂しそうな口調でラウ爺は話す。

 暫く俺もラウ爺も何も話さなかったので、無言の時間が続いた。


「そうですね。タクト殿には全く関係の無い話でもありませんし、御話ししておいた方が良いかも知れません」


 ラウ爺が口を開く。

 しかも、俺に関係があるような事を言う。

 面倒事に巻き込まれる気がするが、ラウ爺がステラとの事を話し始めた。

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