556話 残虐な子供達!
領主の屋敷に着く。
既に数人の来客があるようで、馬車が数台止まっている。
屋敷の中では、盛大なパーティーが開かれているのだろう。
俺は【隠密】の状態で屋敷の中に入る。
当たり前だが、領主の屋敷に招かれていると言う事は、それなりに高い地位にいる者達だろう。
屋敷の中では、俺の予想通りパーティーが開かれていた。
豪華な食事に酒。
来客には女性の奴隷が相手をしていた。
子供の同伴させているようで、会場を走り回っていた。
俺は面倒だったので【飛行】を使い、上空から会場を観察する。
一際、会場を元気良く走り回る子供に、一人の奴隷がぶつかる。
と言っても、子供の前方不注意で、奴隷の女性は背後からだったので、ぶつかるまで気が付かなかっただろう。
ぶつかった子供は「奴隷の分際で!」やら文句を言っていた。
騒ぎに気が付いた子供の親もやって来て、奴隷の女性をいきなり殴る。
殴られた勢いで、他の女性と接触する。
その衝撃で、女性が持っていた飲み物がこぼれて服を汚す。
服を汚された女性は激怒して、奴隷の女性に持っていたグラスを投げつける。
「どうかされましたか?」
「あっ、エランノット殿」
他の貴族よりも豪華なのは一目で分かった。
この男が、タルイの領主エランノットのようだ。
エランノットは騒動の内容を聞く。
「それは御気分を害されてようで、申し訳御座いません」
謝罪をすると、騒動の原因を作った子供に向かい、不快な気分にさせた奴隷を好きにして良いと告げる。
「本当に! やった~」
子供は大喜びしている。
それを知った他の子供達も集まってくる。
エランノットの指示で、子供と奴隷達は別の部屋で遊ぶように案内された。
服を汚された女性には、代わりの服を用意させていた。
俺は気に食わない子供達と、連れて行かれる女性が気になったので、子供達の後を追う。
「どうぞ、御自由にお過ごしくださいませ」
案内をした使用人は、子供達と奴隷の女性を残して部屋を去っていった。
「俺が貰った奴隷だからな」
今回の騒動の原因を作った子供が自慢気に話す。
他の子供は「分かっている」と言って不満そうだった。
子供の数は三人だが、以前からの知り合いのようだ。
「それで、マチオ。何をするんだ?」
自慢気に話をしていた子供は『マチオ』らしい。
話を聞いていると、他の子供達は女の子供は『ショーシア』、男の子供は『ベラサージ』と言うらしい。
「まずは髪を切っちゃいましょう」
「それ面白いな!」
「そうだな」
ショーシアの意見に、マチオとベラサージは賛同する。
奴隷の女性は逆らえないのか、震えながら立ったままだった。
「おい、そのままだと切れないだろうが! さっさとしゃがめ」
マチオは奴隷の女性の足を蹴飛ばして命令する。
それからはとても子供がしでかす悪戯ではなく、残虐な殺戮が行われる。
髪を切った後は、さっきの会場から持ってきたのかフォークを取り出して、笑いながら刺す。
刺すのに飽きたら、動けない奴隷の女性を部屋にある物で殴ったりしていた。
「こいつ、面白くないな」
「そうよ、もっと泣き叫びなさいよ」
「下民は何度痛めつけても飽きないよな」
俺の中では、子供という認識は無くなり、目の前に居る三人は殺しても良い存在に変わっていた。
俺はクロを呼び屋敷で待機させる。
「次、何をする?」
楽しそうに話すマチオ。
俺はマチオの手を持ち、奴隷の女性をマチオが引きずるように見せかける。
マチオは勝手に身体が動く事に驚く。
「凄いな、マチオ! 奴隷を片手で引きずるなんて!」
「なんて力持ちなの!」
ベラサージとショーシアに褒められると否定できないのか、平静を装う。
「当たり前だろう。僕を誰だと思ってるんだ。こんな事は、簡単な事さ」
自分がいかに優れた子供なのかを、二人に印象付けさせる。
俺はその会話中も気にせずに、窓際まで移動をする。
マチオの手を操り窓を開けると、奴隷女性を外に放り投げた。
ベラサージとショーシアは驚き、窓から下を見ると奴隷の女性が倒れていた。
「ちぇ! もう終わりかよ」
「もう少し、遊びたかったわ」
不満そうな二人に対して、マチオは反発する。
「僕の奴隷だ。僕の自由にして何が悪い」
自分に文句を言われた事に気分を害したようだ。
「そ、そうだな。マチオの奴隷だからな」
ベラサージは言い過ぎたと思ったのか、態度を変える。
「どんな姿になったか見ようぜ」
そう言いながら窓際まで移動をする。
「間抜けな姿だな」
マチオとベラサージは、地面に転がっている奴隷の女性を見ながら笑っていた。
しかし、ショーシアはマチオの態度に納得いっていなかったのか、不機嫌だった。
「何か文句でもあるのか?」
ショーシアの態度が気に障ったのか、荒い口調になる。
「別に何も無いわよ。只、貴族として気品が無いと思っただけよ」
「なんだと!」
マチオとショーシアは喧嘩を始める。
どうして良いか分からないベラサージは、おどおどしていた。
俺は落ちているフォークを拾い、マチオの手にフォークを握らせて、ショーシアの腹を軽く刺す。
一瞬、何が起こったのか分からなかった三人だったが、痛みを感じたショーシアが叫ぶ!
俺は放心状態になっているマチオの手を引っ張り、走っているように思わせて部屋を出る。




