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550話 ライラの成長!

「それ、まだ使っているんだな」

「うん!」


 ライラの杖を見ながら話し掛けると、嬉しそうに返事をする。


「これはお兄ちゃんに買ってもらった杖だし、大事にしているよ」

「この杖、貴方が買ったの! どうりで、私が杖の購入を勧めても頑なに断る訳ね」


 コスカの言葉に、ライラは恥ずかしそうにする。


「お兄ちゃん、これも大事にしているよ」


 胸元から俺が買ってあげた、クリスタロス製のネックレスを見せてくれた。


「そうか、ありがとうな」


 俺が買ってあげた物を大事にしてくれている事は、とても嬉しかった。

 あまりの嬉しさに一瞬、俺の【魔法付与】で【MP自動回復】や【魔法威力増加(十倍)】でも施そうと考える。

 しかし、それは俺の思いなだけで、ライラの成長を妨げる事になる。

 過保護過ぎる。ライラも、そのような事を望んではいないだろう。


「ライラの成長でも見てみる?」

「勿論、見てみたいな」


 コスカの提案で、ライラの成長を確認する事になる。

 ライラは俺に見られると言う事で、少し緊張しているようだった。


「じゃあ、訓練場に行きましょうか」


 コスカの案内で訓練場まで移動する。

 三獣士や、ジョイナスにクレスト、ナイルも一緒に着いて来る。


「暇なのか?」


 思わず聞いてしまう。


「そうだよ。暇だよ」


 クレストは即答する。

 しかし、ジョイナスは体を動かすつもりだったので、俺達に関係なく訓練場には行くつもりでいたらしい。

 それはナイルも同じだった。


「私は、九尾の力に興味がありますので、同行させてもらいます」


 八尾のステラは、同じ狐人族である九尾のライラに対して、興味があるようだった。

 ロキサーニとセルテートは、ステラに付き合うようだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「相手役は誰にしようかしら」


 コスカは、ライラの訓練相手を選ぼうとしていた。


「私が御相手しましょう」


 ステラが立候補した。

 直接、ライラの実力を確かめられると考えているのだろう。


「じゃあ、ステラ。お願いね」

「はい」


 ライラとステラを残して、訓練場から出る。

 先に訓練場で訓練をしていた騎士達も、賢者であるステラの戦いが見られるとあって、続々と訓練場から出て椅子に座り始めた。


俺はコスカの隣に座る。


「どうだ。ステラ相手にいい勝負が出来そうか?」

「難しいわ。けれど、魔法のセンスは私よりライラの方が上なのは確かよ」

「珍しいな。他人を認めるなんて」

「種族の違いを改めて知ったわ。だけど、師匠として弟子に負けるわけにいかないしね」


 コスカは種族の違いと言ったが、それに加えて九尾というのも大きな理由の一つだろう。

 

「ただし、ライラが全く勝ち目無いわけでもないわよ」


 コスカが悪そうな顔をして笑う。


「おい。それはステラが、少しでも負ける可能性があるって事か?」


 後ろに座っていたセルテートが、俺とコスカの話に入ってくる。


「そうね。多少だけどね」

「無いな。ステラはランクSだぞ。それをこの間、冒険者になったばかりの小娘如きに負けるだと!」


 セルテートが怒っているのは良く分かる。

 冒険者の一握りしかなれないランクS。

 その一人でもあるステラが、ランクBになったばかりのライラに負ける事等、通常ではありえない。


「そうね。普通であればね。でも、ライラは隣に居る常識では通じない者の戦いを見ているのよ」

「コイツが常識外れの強さなのは分かっている。それが何か関係しているのか?」

「そうね。オークロードとの戦いをライラから聞かされたけど、それは凄いわよ」


 コスカはライラから聞いた俺とオークロードとの戦いをセルテートに話し始めた。

 オークロードの酸で俺の体が溶けても怯まずに、諦める事無く立ち向かう。

 自分の体がどうなっても、国をそして、仲間を守ろうとする姿は凄かったと話す。

 その後も、シキブに間違って腹を刺されても、責める事無く冷静に、副隊長に変装していた魔族を見抜く事など……。


 どうやら、ライラの視点では、俺の行動はかなり美化されているようだった。

 一緒に聞いている俺は、とても恥ずかしかった。


 コスカから話を聞いたセルテートも感心をしていた。


「ライラはいつも言っていたわ。貴方と一緒に戦えるように強くなるってね」

「それは嬉しい事だな」


 俺は自然と笑顔になった。


「そろそろ、始まるわよ」


 ライラとステラの戦いが始まる。

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