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538話 重なる思い!

 先代グランニールは俺達と別れ際には意識が無く、暴れ狂う魔獣と化していた。

 俺達は、その姿を無言で見続けていた。

 先程までの姿と異なり、悲しみと驚きの感情が入り乱れていた。


「このまま見ていても、仕方あるまい」


 アルは俺に向かってそう言うと体を反転させて、俺の返事を待たずに帰ろうとする。

 勝手知ったる友の、この様な姿を見るのが辛かったのかも知れない。

 多分、アルはこの光景を幾度と無く見ているのだろう。

 絶対に慣れる事の無い光景だと思う。

 たまたま、意識のある時に訪れる事が出来た俺は、幸運だったのかも知れない。

 最初に、この状態で出会っていれば、俺も戸惑っていたのは間違いない。

 いつ意識が戻るかも分からない状態であれば、先代グランニールと会話をする事も出来なかった。

 俺は、そう思いながら何も言わずに、アルの後を着いて行く。



「タクトよ。もしも、妾がアイツと同じようになったら、殺してくれるか?」


 暫くすると、アルが後ろに居る俺に振り向きもせずに、話し始めた。


「どうだろうな……」


 少し言葉に詰まりながらも、俺は答える。


「出来るかどうかは分からないな。だが、アルの気持ちには、出来る限り応えるつもりだとしか、今は答えられないな」


 アルの問いに対して「殺してやる」と言う事は、簡単に言える。

 しかし、実際にその状況になった場合に本当に出来るかは分からない。

 実力差の問題でなく、気持ちの問題になる。

 軽率でいい加減な事は言えない。


「そうじゃな」


 振り返る事無く、アルは言葉を返した。

 どのような表情で、そして思いでいたのかは俺には分からなかった。

 ネロも何か感じるものがあったのか、会話に入らずに真剣な顔で俺とアルの話を聞いていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ゴンド村に戻り、ゾリアスから報告を受ける。

 シキブとムラサキの家は予算の都合上、注文住宅ではなく、建築した家に入居する事にしたそうだ。

 エイジンとイリアの家は、トブレ達ドワーフ族が建てている注文住宅になる。

敷地面積は他の住宅と同じになる為、計画していた間取り等が出来ない為、再度考え直すそうだ。

 事情が分かっているので、エイジンもイリアも大きい土地が良いだのと言う文句も言わなかったらしい。

 今、建っている家を見学

 最悪、金でどうにかしようと言い出したら、ゴンド村への移住も考え直してもらうつもりでいたが、常識人は素晴らしいと思った。

 シキブ達はイリア達四人でシキブとムラサキの新居で


 マリーも仕事の話や、ゴンド村との関係についての調整でゾリアスと打ち合わせをしたらしい。

 この村でマリーは『女帝』と呼ばれているので、俺はその事を聞いて『村長VS女帝』と勝手に物語を思い描き、少し笑ってしまう。


「どうかしたのか?」

「いや、何でもない」


 不審に思ったゾリアスだったが、正直に話せる訳も無く適当に言葉を返した。


「タクト、帰ってきていたのね」


 マリーとユキノにシロが、戻って来た。


「あぁ、さっきな。色々と任せて悪かったな」

「別に良いわよ。いつもの事だから」

「流石、女帝だ。頼りになるな」

「な、なんでその呼び名を知っているのよ!」


 マリーは恥ずかしそうにして、ゾリアスを睨んでいた。


「マリー様は女帝なんですの?」


 ユキノは不思議そうに質問をする。

 マリーが返答に困っていたので、俺が「そうだ」と代わりに答える。


「ちょ、ちょっと!」


 マリーは否定も肯定もせずに、慌てていた。


「流石は、タクト様の信用なされる方だけありますね」


 ユキノは笑顔で納得していた。

 マリーが女帝として、名を広めるのも時間の問題だと思ったが、この場では何も言わない事にした。

 余計な事を言って、マリーに怒られたくない。

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