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531話 独自の進化!

 ゴブリン討伐後に襲ってきたのは、一つ目で角がある魔獣だった。

 俺の知っているサイクロプスの人型サイズだ。

 人型サイズといっても先程のゴブリンと同じ位の背格好だ。

 目と角は小さくなっているし、武器らしき物は持っていない。

 大きくて動きが鈍い俺の知っているサイクロプスとは違い、力任せに攻撃をしてくるが、それなりにスピードもある。

 しかし、肉弾戦とはいえ俺に敵う訳も無く、一方的に殴り倒した。

 サイクロプスを倒して(コア)を回収しようとすると、水のような液体が飛んで来たので、咄嗟に避ける。

 液体はサイクロプスの死体に直撃すると、異臭と煙を上げる。

 ……酸か?

 液体が飛んで来た方向を見ると、巨大スライムが居た。

 巨大と言っても、一メートル程だ。

 スライムは俺には見向きもせずに、先程倒したゴブリンの死体を体内に吸収していく。

 俺はその隙に、サイクロプスから(コア)を回収する。

 スライムに取り込まれたゴブリンの死体は徐々に溶けて骨だけになる。

 数分の出来事だった。

 スライムは骨を吐き出して、次のゴブリンを体内に取り込んでいった。

 【魔力探査地図】を見ると、俺の周りから印が消えていた。

 俺が動いてもスライムは反応が無いので、死体にしか興味が無いのかも知れない。

 とりあえず、攻撃されないように【神速】を使いアルとネロの所に戻る。


「どうじゃ、ここの魔物達は」

「俺の知っているのに似ているが、どうもサイズ感がな……」

「それはこの環境に適合した為じゃろう」


 アル曰く、ここで体が大きいと攻撃を受けやすいので、徐々に小さく進化したのでは無いかと推測していた。

 しかし、逆に小さい種族は大きくなり、魔境では多くの種族が同じ背格好だと教えてくれた。

 この魔境で最強なのは、先程のスライム族になるらしい。

 但し、スライム族は数も少なく好戦的な種族で無い為、こちらから攻撃をしなければ問題無いそうだ。

 スライム族は死体が好物らしいので、死体の近くに居ると、先程の俺のように巻き込まれる危険があるので、注意が必要だとも教えてくれた。


「空を飛ぶ種族は居ないのか?」


 空を見渡すが、大きな生物が見当たらない。


「昔は居たが、絶滅したんじゃろう。小さな虫系の魔物は今でも居るがな」


 空から攻撃出来る種族も居たらしいが、羽根を休めたり子孫を残す為には、どうしても地上に降りる必要がある。

 そこを狙われる事が多かったのかは不明だが、絶滅したのは間違いないらしい。

 地上にも羽根のある魔獣が居るが、数秒飛ぶくらいで長時間の飛行は出来ないとも教えてくれた。

 隔離された空間で、独自の進化を遂げたという事は理解出来た。

 しかも、各々の種族が人族に居る魔族と比べても格段に強い事も分かっていた。

 もし、人族の環境に適したのであれば、かなりの脅威になるのは間違いない。

 しかし、このような場所があったとは……。

 支配者が居れば、国になるとも思えた。

 国?

 俺はガルプツーの残した言葉を思い出す。

 奴は国に戻ると言った。俺はてっきり、シャレーゼ国だと思い込んでいたが、ここが国だと仮定すればガルプツーが居る可能性もある。

 但し、魔境と言うのはアルが勝手に呼んでいるだけで正式名称では無い。

 当然、支配者で無くても、食物連鎖の頂点に君臨している者は居る筈だ。

 【全知全能】に、この場所とアルの言う魔境等の言葉を含めて質問をするが、この場所は国として体を成していないそうだ。

 俺の前世で言うと原始時代に近い感じなのだろう。


 飛んでくる少し大きい虫を手で追い払おうとすると、アルが「止めておけ」と言うが時既に遅く、払った手が爆発する。

 痛みも無いので殺傷能力は低いのかも知れない。

しかし俺は、何が起きたのか分からなかったので、爆発した手を不思議そうに見る。


「ボムモスキートなの~」


 アルより先に、ネロが教えてくれた。

 尻に付いている針を刺す事により、刺した場所を爆発させて肉片を回収する魔物らしい。

 爆発に耐えられる肉体を持っているので、ボムモスキートが自分の爆発で死ぬ事は無いそうだ。

 俺から肉片が採取出来ないと分かると、他数匹のボムモスキートと共に違う獲物を求めて飛んで行った。

 

「なんで、アル達は刺されないんだ?」

「簡単な事じゃ。複数居る場合、一番弱い奴を察知して刺す習性があるからじゃ」


 一番弱い奴を察知出来る習性と言うか能力が、とても気になった。

 魔素の量なのか、別に計測出来る基準があるのだろうか……。

 しかし、俺が一番弱いのは分かっていたが、直接言われると落ち込む。

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