526話 出待ち!
王都に戻ると、俺はルーカス達に別れを言う。
これ以上、ここに用事が無いので一緒に居る事も無い。
王都に着く前に、ルーカスがアスランと話をしていた。
操縦席に居た俺は話の内容まで聞いてないが多分、暗部の件を話していたのだと思う。
ルーカスが残念そうな顔を浮かべていたので、間違いないだろう。
「じゃあ、何かあれば連絡をくれ」
「分かった。例の件は極秘で進めるつもりだ」
俺は何も答えずに頷いた。
城から去ろうとすると、ユキノが平民の服に着替えて俺の所まで走って来た。
何時の間に着替えたんだ?
「私も一緒に行きます」
いつも通りの笑顔だ。
シロを見るが、同じ様に笑うだけだった。
「国王に王妃は良いのか?」
「お主以上の護衛は居ないと言っただろう。なんの問題がある」
「そうですよ」
一応、王女の外出になるので許可を確認するが、俺との外出は問題無いとされているようだ。
まぁ、今更感は確かにあるが……。
「じゃあ!」
ルーカス達に挨拶をして、城を後にする。
いつもの事だが、ユキノにシロと一緒に歩くと注目の的だった。
美人系のユキノに可愛い系のシロ。
【呪詛】が無くなったとはいえ、俺が見た目的に冴えない冒険者なのは間違いない。
と言っても、ランクSSSの冒険者な事は知れ渡っているので、ちょっかいを出す者も居ない。
遠巻きに妬みを言われるくらいだ。
マリー達は、グランド通信社との仕事は終わっているので、冒険者ギルドの本部で待ち合わせをしている。
マリーは他の場所だと俺が迷子になる可能性があると、失礼な事を言っていた。
王都に戻って来て改めて人々を観察するが、やはり良い物を着ているし、店に並ぶ食材も豊富だ。
金貨を持っていれば、不自由無しに生活が出来るだろう。
雑貨店でユキノとシロに日頃のお礼に何かを買ってみようとするが、二人共断られた。
ユキノは髪飾りに指輪があるので、これ以上は必要無いと言う。
シロも俺と契約した際のピアスが気に入っているので、他は結構だと言われた。
二人共、無駄な買い物はしない方が良い事を知っているので、気を使われたのだろう。
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冒険者ギルド本部に着くと、人だかりが出来ていた。
有名な冒険者でも戻って来たのだろうか?
暫く待とうとしたが、人は減るどころか増えていった。
仕方が無いので、マリーと【交信】を使い連絡を取る。
「今、冒険者ギルド本部に来たが、人が多くて中に入れないが何かあったのか?」
「いや、それがね……」
なんでも人気投票で男性部門一位の冒険者と女性部門三位の冒険者が居るそうだ。
普段からパーティーを組んでいる為、人気のパーティーらしく他の冒険者二人も人気があるらしい。
グランド通信社から写真集の販売告知もあったせいで、例年以上に盛り上がっている。
当人達も悪い気はしていないようだ。
人気実力共にあるので、通常クエストでなく今後は指名クエストを受注する事に多くなるだろう。
指名クエストであれば、報酬も通常のクエストよりも断然に良いし、指名を断る事も出来るので効率の良いクエストを選択出来る。
グランドギルドマスターのジラールは、冒険者達には良い刺激になったのか喜んでいると、マリーが教えてくれた。
この状態ではギルド本部の中に入る事が出来ないので、マリー達には外に出て来てくれるよう頼んだ。
マリー達も中から出て来るのに一苦労するだろう。
しかし、遠目でギルド本部の前に居る者達を見ていると、前世の記憶を思い出す。
コンサート会場や劇場で、アーティストや芸人を出待ちしているファンの光景に似ている。
俺自身、コンサートにも劇場にも足を運んだ事が無いので、何かで見たり聞いたりした記憶だが大きくは間違っていないだろう。




