520話 消えた使用人!
「ありがとうな、シロ」
ネイトスに戻った俺はシロに礼を言う。
幸いにも、飛行艇にルーカス達は、まだ来ていなかった。
「御主人様にしては珍しいですね」
「あぁ、雪山に居たんで時間の流れが分からなかった」
「そういう事でしたか。スーノママ達は変わらず元気でしたか?」
「シロは、スーノママを知っているのか?」
「はい。雪人族とは面識があります」
「そうか、それは知らなかったな。今度は一緒に行くか?」
「はい」
シロと雪人族が知り合いだとは知らなかったが、お互いに長い間、この世界に生存していれば不思議な事では無い。
そう考えれば、俺はこの世界で新参者なのだろう。
「スーノパパ達に発光石を持って行こうと思うので、時間のある時に調達しておいてくれるか?」
「はい、分かりました。あまり明るく無い物が良いですね」
「そうだな。そこら辺はシロに任せるので頼む」
「はい」
シロが戻っているという事は、ナーブブルの調査も終了して戻って来たという事だ。
「奴隷アイテムの件、ありがとうな」
シロは、調査隊の先回りをして奴隷達の奴隷アイテムを外してくれた事に礼を言う。
俺の言葉にシロは、笑顔で答えた。
「何か、収穫はあったか?」
「はい」
シロは他人に聞かれる事も考慮して、俺と直接会話をする方法に切り替えた。
(実は使用人の女性が一人行方不明になっています)
(……ロスナイに殺されたのか?)
(いいえ、殺された使用人も何人か居ましたが、その使用人は前日まで居ましたが、私達が到着した時には姿を消していました)
(逃げ出したとは考えられないか?)
(それは無いかと思います)
誰かが意図的に、ロスナイを監視していた可能性が高い事を示している。
ロスナイの情報が欲しかったのか、裏で糸を引いている者に危害が加わりそうな場合、殺害するつもりだったのだろうか?
今の所、考えられる人物は奴隷商人のノゲイラだ。
しかし、シロ達が来る事を知っているとすれば、事前に知っていた事も考えられる。
その場合、内通者が居る事が前提条件だ。
(内通者の可能性はあるのか?)
(それは分かりません。他の使用人に聞いても、消えた使用人の情報は殆どありませんでした)
過去を話したがらない使用人が居る事もあるので、一概に疑う訳ではないが……。
とりあえず、姿を消した使用人が居た事だけは覚えておく。
屋敷から、使用人や衛兵が出てきた。
ルーカス達が、飛行艇のある俺の所に来るという合図だ。
ルーカス達が歩くであろう道の左右に綺麗に整列して、ルーカス達王族を待っている。
俺は、ここで待っていて良いのか戸惑うが他に行く場所も無いし、今迄通りで良いと思い、この場を動かずに居た。
暫くすると、護衛のカルアを先頭にルーカス達が姿を現す。
ルーカスは完全に国王らしい立ち振る舞いをしている。
先日まで、ババ抜きで『最弱』と馬鹿にされていたとは、とても思えない。
俺はルーカスと挨拶を交わした後、一番後ろに居たダンガロイとフリーゼに「世話になった」と挨拶をする。
ダンガロイは「こちらこそ、色々と御迷惑お掛け致しました」と言葉を返し、フリーゼも同様の言葉を口にした。
ダンガロイがユキノに目を向けると、ユキノは俺の横に来る。
「お幸せに」
ダンガロイは小さな声で呟き、フリーゼと共に頭を下げた。
「ありがとうございます」
ユキノは返礼するので、俺も頭を下げた。
これは、ユキノとの仲を認めて貰ったという事なのだろうか?
詳しい事は後で聞く事にする。
飛行艇に乗り込む前に、ルーカスがダンガロイの屋敷の者達に労いの言葉を掛ける。
それにダンガロイも感謝の言葉を伝えた。
これもお決まりの儀式なのだろうと思いながら、「やっぱり、貴族は面倒臭いな」と、俺はその光景を見ていた。




