50話 冒険者ギルド昇進試験-2!
稽古場に着くと、中央でやる気が漲っているムラサキがいる。
何故か嬉しそうだ!
中央まで歩き、ムラサキより試験の内容を聞く。
どちらかが降参するか、降参前に試験官が合格を出すかの二択らしい。
制限時間:二〇分。
「久しぶりに、強い奴と戦えると思うと嬉しくなるぞ! 勝てる自信が無いがな」
ムラサキは機嫌が良いのか、笑っている。
「試験官が、お世辞を言うのは止めて下さい」
機嫌の悪いイリアに叱られるが、この言葉はムラサキの本音だろう。
ギルマスの部屋で、ステータスを見た際に言った言葉は覚えている。
勝てないと分かっていてもあえて、試験官を買って出た事には感謝する。
「タクト、武器は好きなので良いぞ」
「武器は扱いにくいので、素手で頼む!」
ムラサキの質問に答えると、イリアが話す。
「準備が出来たら、御教え下さい」
「このままで大丈夫だ。 いつでも始めてくれ!」
「その格好でですか?」
「あぁ!」
知らない奴から見れば、怖いもの知らずの馬鹿という印象だろう。
イリアの合図で実技試験が始まった。
流石に冒険者上位ランク者だけあり、実戦経験豊富なので力技だけでなく、微妙に緩急をつけながら攻撃をしてくる。
上下左右とこちらの死角をつく剣さばきだ。
こういった攻撃を受けたことが無いので新鮮な気分だ。
紙一重で躱しながら、懐に入るタイミングを計って、みぞおちに一発入れる。
ムラサキが稽古場の端まで吹っ飛んだ。
……あれ? やりすぎた。
ギャラリーが、ドン引きしている。
しかし、ムラサキの闘気は消えていないので、むやみに近づくのは危険だ。
構えたまま待機していると、一瞬で距離を縮めてこちらに突撃してきた。
振りかざした大剣を半身で躱して、そのまま足で大剣を地面に押し付ける。
そして、ムラサキの腕に足を掛けて、喉元に指を押し当てた。
「……降参だ!」
その瞬間、稽古場から歓声が沸いた。
「俺もまだまだだな」
悔しそうだ。
「俺で良ければ、いつでも御相手するぞ!」
俺が掛けれる言葉は、これ位しか思いつかない。
「フッ、そうだな。 だけど、バケモノ相手に勝てる気がしないけどな!」
お互い拳を出した。
イリアが駆け寄って来て、
「タクトさん、ランクB合格おめでとうございます。 これをお受け取り下さい」
ランクGのギルドカードだ!
あれ? 今、ランクB合格したんですけど……
「今までこのような前例が無い為、ギルドカードの発行が追い付いておりません。 誠に申し訳御座いませんが、明日にはランクBのギルドカードを発行致しますので御待ち下さい」
そういうことね。
一瞬、イリアの嫌がらせと思ってしまった。
どんどん捻くれた性格になっている。