503話 負けず嫌いな国王!
ルーカス達を部屋に残して、外に出る。
酒を呑み上機嫌のトブレを発見したので、手押し井戸ポンプの仕組みを説明して製作を頼む。
それと、材料置き場に追加で建築して欲しい施設の事も伝える。
一応、俺も考えるが大量の水を使う為、排水等も含めた施設になる事も話して、トブレからも案を求める事にした。
建築の合間に製作してくれれば良いので、無理はしないように頼むが上機嫌のトブレは笑いながら「任せておけ」と俺の言葉に聞く耳を持たなかった。
まぁ、トブレの事だから酒を呑んでいない時でも同じ返事だっただろう。
「明日から、お前から頼まれた物の製作に入る。出来たら連絡するから楽しみにしていろよ」
「いや、家を建ててからで良いぞ」
「大丈夫だって、そこら辺もきちんとやるからよ」
言っている事がよく分からないが、トブレ達ドワーフなりの考えでもあるのだろう。
「分かった。宜しくな」
「おぅ、任せておけ!」
酔っ払いのトブレと別れて、自分の部屋に戻ろうとすると、ユキノも外に出て来た。
「どうした?」
「いえ、タクト様の傍に居ようと思っただけです」
いつも通り笑顔で答える。
「少し歩くか?」
「はい」
特に用事も無いが、久しぶりにユキノと二人の時間を過ごす。
これと言った会話も無い。
俺達を見つけると村民達が声を掛けてくれるので、すぐに二人の時間は終わる。
しかし、ユキノの楽しそうな姿を見ていると、これはこれで心が和む。
「あら、もう帰るのね」
俺達と村民との会話を聞いていたのか、セフィーロが背後に立っていた。
全く気配に気が付かなかった。
「あぁ、ジークにある俺の家で食事をして戻るつもりだ。アルとネロも一緒に来る」
「そうなの。そういう事なら、私もお邪魔しようかしらね」
……そういう事って、どういう事だ?
「来ても大して面白くも無いぞ」
「貴方が居て、面白くないなんて事はないでしょう。ねっ、王女様」
セフィーロがユキノに話を振る。
「はい。タクト様と一緒に居れば、とても楽しいですわ」
ユキノは見当違いの答えを返す。
「やっぱり、貴方達は面白いわね」
セフィーロは小さく笑う。
「一応、確認するが暴れたりしないよな」
「大丈夫よ。これでも私は気が長い方なのよ」
「……本当だろうな」
仮に嘘だとしても、俺にセフィーロを止める事は出来ないのだが……。
「安心しなさい。もし、暴れても表立ってはしないから、貴方に迷惑は掛からないわよ」
セフィーロは笑顔で答えるが、それが余計と怖く感じる。
「分かったよ。本当に頼むぞ」
「うふふ」
その後、ユキノとセフィーロは普通に会話を始めていた。
なんだかんだと女性同士で、話が合うようだ。
「そろそろ、戻るぞ」
思った以上に話込む二人に声を掛ける。
「はい」
ユキノが返事をすると、セフィーロも頷く。
戻る途中もユキノとセフィーロは、常に話し続けていた。
どちらかが一方的に話すという訳でない。
女性が話し好きというのを再確認した瞬間だ。
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「又、余の負けか……」
ルーカスは落ち込んでいた。
俺達が、ルーカス達の待っていた家に戻ると、ルーカスやイースも子供に交じり、ババ抜きをしていた。
しかも、ルーカスは子供以上に興奮しながら、ババ抜きを楽しんでいた。
「国王は弱いのぉ」
「国王、最弱なの~」
アルとネロにまで、揶揄われる始末だ。
戻った俺に気が付いたルーカスが、席から立ち俺の所までやってくる。
「タクト。あのトランプという物を余も欲しいぞ!」
「あぁ……」
あまりの気迫に、一瞬怯む。
「約束じゃぞ!」
仕方が無いので【アイテムボックス】からトランプを一組出す。
ルーカスは今、貰えると思っていなかったのか、トランプを受け取ると嬉しそうだった。
「しかし、このトランプなる物は凄いの。この子供達も数字を既に覚えている」
「まぁ、楽しみながら計算等も覚えて行けば将来、役に立つからな」
トランプを使用して、足し算や引き算等の簡単な計算も教えていたので、ゲーム感覚で子供達は遊んでいたのだろう。
アルやネロは、既に計算の仕方を知っていたので、子供達から尊敬されていたと、昼の宴会の際に村民から聞いていた。
「勉強にも役に立つとは……」
ルーカスは考え込んでいた。
「これは四葉商会の商品なのか?」
「一応はな。しかし、王都の魔法研究所にも協力して貰った」
「そうか。これを商品化して、国の子供達の能力向上に使用しても問題無いか?」
「別に構わないが、商品化するのであれば出来る限り安い値段にするぞ。高級品だと貧しい家では買えないからな」
「そうだな。大臣と相談してみよう」
「それに、そういう事なら図柄等も含めてマリーと相談してくれ。出来る限り俺も協力はする」
「うむ。分かった」
ルーカスの提案は俺にとっても好都合だ。
子供達の知識が上がれば、少しでも貧富の差が縮まると欲しいと期待する。




