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497話 王族批判!

 ゴンド村に戻る帰り道、ダンガロイは浮かない顔をしている。


「あんな奴でも実弟だと思うと、可哀想だと感じるのか?」

「いいえ、あれほど怒っていたにも関わらず、ロスナイに剣を下ろせなかった自分に憤りを感じているのです」

「まぁ、それが領主の良い所なんだろう。感情に任せて領地を治めていたら、街の者達が可哀想だろう」

「はぁ、しかし……」

「暴力は振るわないで済めば、それが一番だ。喧嘩だって殴った方も痛いし、いつまでも心に何か引っかかるものが出来てしまうだろう」


 ダンガロイは返事をせずに、下を向きながら考えていた。


「そういう野蛮な役回りは、別の奴が補う様に出来ているんだから、別に気にしなくても良いだろう。それに、そういう所に夫人も惚れているんだろう」


 俺はフリーゼの方を見ると突然、話を振られた事に驚き、顔を赤らめていた。


「後は国王の仕事だから、気にしたって仕方が無いぞ。そうだよなぁ」


 今度はルーカスに話を振る。


「そうですとも。全ては国王である私の責任です。義兄上は、これ以上悩む事は無いですぞ」

「ありがとうございます」


 ダンガロイはルーカスに礼を言う。


「なっ、そうだろう。全部、国王が悪いんだから気にする必要は無いって事だ」

「何故か、タクトが言うと腹が立つの」


ルーカスが俺を睨むので、少し早歩きをして前を歩いているゾリアスに声を掛ける。


「ゾリアスも、一刺ししたかったか?」

「いや、お前が刺してくれただけで十分だ。まだ、あのような者が居るんだな……」

「そうだな。奴隷を物扱いしている奴は、俺達とは根本的に考え方が違う。まぁ、姿形は同じでも別の種族と考えた方が、分かりやすいよな」

「お前は、そんな簡単に割り切れるのか?」

「どうだろうな。ただ言える事は、そういう奴とは仲良くなれないし、なる気も無い」

「それは俺も同感だ」


もし、奴隷制度が無くなっても、闇取引や、別の制度を巧みに利用して同じような事は起きると思う

悪と言う奴は、手を変え品を変えて、弱者の心の隙間に入り込む。これは仕方の無い事だ。

しかし、いつまで経っても正式に奴隷制度があれば、現状を変えようとして平民の中には、一攫千金を得ようと冒険者になったり、悪い奴に騙されて捕まったりと命を落とす事だってあり得るだろう。


「生まれついて身分が約束されているこの世界に、俺は納得が出来ない。奴隷制度はその悪しき制度だと考えている」

「タクトの言う通りだが、奴隷制度が悪しき制度とは極端な考えだな。まぁ、俺も無くなれば良いと考えている一人だがな」


 ゾリアスの言う通り、極端で危険な思想なのかも知れない。

 しかし、前世でも金持ちの奴がコネで父親の会社に入り、大した仕事もせずに高い給料を貰っている奴達を何人も見て来た。

 父親の権力は自分の権力だと言わんばかりに、無理難題を言ったり、下請けを人間扱いしない奴等を見てきたから余計にそう思ってしまうのだろう。


「タクトよ。それは、王族批判か?」


 俺の話を聞いたルーカスとアスランが横に居た。


「まぁ、そうだな。貴族や平民に関係無く、努力が報われるのであれば俺は気にしない。実際、アスランは王子として立派だと思う」

「当たり前だ。余の息子だぞ!」


 ルーカスは自信満々で胸を張っていた。

 その横でアスランは恐縮そうにお辞儀をする。

 確かに、アスランをはじめユキノに、ヤヨイの子供達は皆、素直に育っているとは思う。

 王族だから権力を振りかざす事はしないし、常に国民目線でいる気がする。

 ルーカスが胸を張って言える自信は、よく分かった。

 しかし、俺が思うにはルーカスよりも王妃であるイースの力が大きいとも感じる。

 気分を悪くすると思うのでルーカスには、当然言えないが……。


「まぁ、タクトの言おうとする事も分かる。貴族の子供が勘違いをして、平民に暴力を振るう事は、よくある事だ」

「きちんとした親なら叱るだろうが、それを助長するかのような事をする親も居るって事だよな」

「その通りだ」


 親の背中を見て子は育つと言うが、まさにその通りなのだろう。

 しかし、そう考えるとダンガロイとロスナイは同じ親の背中を見て、どうしてこうも真逆の考え方になってしまったのか疑問だ。

 全てがそうとは限らないので、例外もあるのだろう。


「まぁ、どの家庭にも教育方針があるから、部外者が口を挟む事では無いがな」

「そういう奴が、問題を起こすんだろうが」

「まぁ、そうだな」


 ルーカスは、トーンダウンする。

 国王とはいえ、家の事情に干渉出来ない事は理解出来るが、最終的にはルーカスの問題事として返って来る事になるだろう。


「村に戻ったら、すぐにネイトスへ移動するのか?」

「あぁ、ちょっとだけ用事があるから、少しだけ待っていてくれ。そんなに遅くはならない」


 ルーカスは「分かった」と言い頷いた。

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