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493話 都合の良い解釈!

 ネイトス領で、ルーカスから調査の旨を衛兵達に伝えられた。

 国王からの勅命と有り、選抜された衛兵達は高揚していた。

 飛行艇に乗れると言う事も影響しているのかも知れない。

 俺はルーカスに言われて王都に戻り、大臣から『ナーブブル領の調査』に関して、国王の命令だと言う書類を受取り、ネイトスに戻る。

 押印に関しては、ルーカスが王印を持っているので、ルーカスが押印してこの書類は初めて効力を持つ。

 衛兵達を鼓舞して戻って来たルーカスは、早々に書類に押印する。


「宜しく頼む」


 そう言ってルーカスは押印した書類を、カーディフに渡した。

 それから数十分後には、シロの操縦する飛行艇でナーブブルへ出発した。


「思ったよりも早く編成と、出発が出来たな」

「はい。何かあれば特別に編成された部隊がありますので、その部隊を今回の調査隊としました」


 ダンガロイは丁寧に答えてくれた。


「そろそろ、ゴンド村に戻りますか?」

「もう、用事は良いのか?」

「はい。使用人達には調査団の見送りが終わり次第、明日の朝まで暇を与えました」


 ネイトスに来た本来の用件は終わったようだ。


 アルが暇なのか、ロスナイが入っている袋を部屋にあった棒のような物で突いていた。


「何しているんだ?」

「これ、面白いのじゃ。突くとビクッと動くぞ」


 アルは笑顔で答える。


「その辺で止めておけよ」


 やりすぎて袋が破けたり、ロスナイが死んだりしては困る。


「そろそろ、戻るぞ」


 ルーカスとダンガロイにゴンド村に戻る事を伝えて、【転移】を使う。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「今、戻ったぞ」


 部屋に居た者達に向かって、帰ってきた挨拶をする。


「早速で悪いが、森まで移動して貰う」


 ゴンド村に残っていた王妃のイースや、フリーゼは事情が分からないので、袋を目の前に置き中身がロスナイだと伝えた。

 流石に皆、絶句していた。


「気が付いたら、袋の中にロスナイが入っていたので持って帰って来ただけだ」


 その場に居た者達は、俺の言葉が嘘だと分かっていても、それについて追求する事はなかった。

 ルーカスのみ頭を抱えたい気分だっただろう。

 その後、フリーゼには話してあるロスナイの領地での所業についても話をする。

 その場に居たゾリアスの怒りが俺に伝わってくる。

 奴隷を物と扱う事に対して怒っているのだろう。


「タクト。俺は部外者だと分かった上で頼む。俺も一緒に行って良いか?」

「あぁ、いいぞ。それにゾリアスは部外者じゃないぞ。森も一部がゴンド村になったんだから、言い方を変えれば魅惑の森はゴンド村の一部だ。森に入るには村の許可が必要だしな」

「相変わらず都合の良い解釈だな」


 ゾリアスは笑いながら礼を言う。


「タクト殿。その前に宜しいですか?」


 ダンガロイが畏まって、俺に話し掛けて来た。


「先程、フリーゼより頂いた実がドライアドの実だと聞きました。王妃様がおっしゃられたので間違い無い事だとは思いますが……」


 俺は説明を頼んだイースの方を見ると微笑んでいた。


「あぁ、その通りだ。それがどうした?」


 普通に答える俺にダンガロイは驚くが後ろに居たフリーゼが大きな声を上げる。


「ドライアドの実だぞ! 簡単に手に入れることも出来ない幻の実だ」

「そうらしいな」


 驚きもせずに答えた俺にダンガロイとフリーゼは、言葉を失っていた。


「まぁ、さっきも言ったが秘密だから、誰にも言うなよ」

「それは勿論、御約束致しますが……」


 ダンガロイとフリーゼは、不安そうな表情を浮かべていた。


「報酬の事か?」


 最初、ユイに使った時や、アスランを【呪詛】から救った際に聞かされていたので、ドライアドの実が高価な事は分かっていた。


「そうだな。無理にとは言わないが、魔族の中にも友好的な種族や者も居る事を少しでも理解してくれると助かる」


 俺の言葉にフリーゼは複雑な表情をしていた。


「出来る限りの事はする」

「あぁ、それで構わない」


 俺自身、別に二人から報酬を貰うつもりなど無い。

 敢えて、それっぽい事を言ってみただけだ。


「あっ、それと子供が出来たら俺にも会わせてくれよ」


 追加で思いついた事を言ってみると、ダンガロイとフリーゼはお互い顔を見合わせて、恥ずかしそうにしていた。

 その姿を見ていると、年齢に関係なく純真だと心を打たれる。


「私もタクト様との子供が欲しいですわ」


 後ろに居たユキノが、ボソッと呟く。

 ユキノの言葉を聞いて、やはり子供を産まない幸せと言う考えは、この世界には無いのだろうと思う。

 只でさえ、男尊女卑の考えが強いので、産まないという選択肢はそもそも無いのだろう。

 以前にも思ったが、子孫を残す事を第一に考えるのであれば、ダンガロイはフリーゼとの結婚を解消して、新たな夫人を貰ったとしても、王族側は文句を言わずに納得した筈だ。

 子孫を残す事よりも、フリーゼと一緒に居ることを選んだと考えると、ダンガロイの事を更に応援したい気分になる。


 ゾリアスの案内で、俺達は魅惑の森へと移動する。

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