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492話 予想が現実に!

 拉致したロスナイを連れてネイトスに戻る。

 ルーカスやダンガロイも部屋に戻って来ていないので、暫く待つことにする。

 袋の中でロスナイは痺れているのか、大きな動きも無い。


「あの痺れ草の効果は、どれ位持続するんだ?」

「正確には分からんが、数時間で切れるじゃろう」


 暫くはロスナイは袋の中で、あの状態のままと言う事だ。


「たまには、アルも面白い話でも無いのか?」

「無いぞ」

「即答かよ。少しぐらい考えろよ」

「妾にとって面白い事など此処何十年も無かったからの。タクトに会ってからは、毎日が楽しいぞ!」

「何がそんなに楽しいんだ?」

「ゴンド村の連中は誰も魔王として、妾やネロを扱わぬ。文句や叱ったりもしてくれる」


 長年この世界の頂点に君臨していたアルにとっては、龍人族は勿論だが、他の種族からも恐れられたりして対等に接してくれる者が殆ど居なかったのだろう。

 ゴンド村の者達は、きちんとその者を見る。

 ルーカスのような身分の者は別だが、他の街や村の者達よりは砕けた態度にはなっている。

 何も知らない王都にある城の者達が見たら、怒り過ぎて切りかかってくるような態度で接しているのかも知れない。


「アルがそう感じてくれているのは、俺としては有難いな」

「何を言っておるのじゃ! 礼を言うのは妾やネロじゃぞ」


 アルは不思議そうな顔で俺を見ていた。

 俺も同じような顔をして、アルを見ていたかも知れない。


 部屋の扉が開き、ルーカスとダンガロイが戻って来た。


「待たせたな……その大きな袋は何だ? 部屋を出る際は無かったはずだが」


 ルーカスが戻って来た挨拶もそこそこにして、袋について尋ねてきた。


「あぁ、気が付いたらロスナイが袋の中に入っていた」


 俺の言葉に、ルーカスもダンガロイも驚く。


「あぁ、【結界】で外部の音は聞こえないようにしているから、普通に話をしても大丈夫だぞ」

「いや、さっきまで犯行を予想していたと言っていたが、あれは犯行予告だったのか?」

「まさか、偶然的に袋の中にロスナイが入っていただけだ。俺にも良く分からん」

「そんな屁理屈が通るか!」


 当たり前の事だが、ルーカスは怒っていた。


「ナーブブルの領主の部屋に行ったら、奴隷と思われる女性六人がロスナイに殺害されていた」


 俺は先程までのふざけた態度でなく、真面目な口調でルーカスに話す。


「しかも、ロスナイは奴隷の女性達を物扱いしていた。奥の部屋には他にも多数の死体があるのは間違いないだろう」


 俺の言葉に嘘は無いのが分かっているのか、ルーカスは何も言わずに静かに聞いていた。


「嘘だと思うのであれば、衛兵でも派遣して確認すれば良いだろう」

「国王様。ここネイトスからであれば、ナーブブルまでは数日で着く事は出来ます」


 ダンガロイが自分の領地から衛兵を出すと進言する。


「しかし……」


 ルーカスは決断を決めかねていた。


「危ないと思うのであれば、カーディフやセドナを同行させれば良いだろう。まぁ、その分領主達の側には居られなくなるがな」


 俺が代案を適当に言ってみる。


「そうれであれば、カーディフを調査隊に同行させます」


 俺の案にダンガロイも同調してくれた。


「行くなら飛行艇で送って行ってやるぞ。運転はシロだが、直ぐに着くだろう」

「それは助かります。飛行艇に乗れる人数で隊を編成致します」


 悩むルーカス抜きで、ダンガロイと話を進める。


「タクトに義兄上も……仕方ない、国王の命で、ナーブブルの調査を許そう。義兄上、申し訳ありませんが、隊を直ぐに編成して頂けますかな」

「分かりました」


 ダンガロイはルーカスに一礼して、部屋を出て行った。


「アル、悪いがゴンド村でカーディフを連れてきてくれるか。シロには俺から連絡しておく。それと国王は、領主夫人にこの事を伝えてくれるか」


 アルは直ぐに【転移】でゴンド村に移動してくれた。

 ルーカスもその場でフリーゼに連絡を取っていた。

 俺もシロと連絡を取り、ゾリアスの用件を伝えてから、こちらに来て貰う。


「戻ったぞ」


 アルがカーディフを連れて戻って来た。


「タクト殿、何がどうなっているのですか?」


 どうやら、アルは説明も何もせずにカーディフを連れて来たようだ。


「あぁ、悪いな。ちょっと、急いでいてな」


 俺はカーディフに説明をする。

 カーディフは驚きもせずに、淡々と俺の説明を聞いていた。


「成程、そういう事でしたか。私もそのような非人道的な事を許す事は出来ません」

「まぁ、その非人道的な事をした奴は、其処の袋の中に居るがな」

「えっ!」

「気が付いたら袋の中に居ただけだ」

「はぁ……」


 カーディフの表情から呆れているのが分かった。

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