462話 友人としての協力!
「タクトよ。大変申し訳無いが、お主とユキノの婚姻の御披露目だが、生誕祭の後でも構わぬか?」
ルーカスも優先順位が分かっているようだ。
「俺は別に御構わない。ユキノの意思を確認してくれれば良い」
「そうか、すまぬな」
申し訳なさそうにルーカスが話す。
その顔を見ると、親の顔だなと感じた。
しかし、大規模な作戦になれば作戦が漏れる可能性が大きくなる。
冒険者にクエストを出せば、作戦が漏れるのは間違いないだろう。
「主は、本当に手を御貸しにならないのですか?」
クロが小声で俺に聞く。
「そうだな。今の所は、協力するつもりは無いが、気になる事があるのか?」
「はい。先程の御報告にもあったように、魔族を奴隷に出来る者がおります。私が思うに、王国騎士団や冒険者では荷が重いかと……」
「それは、ガルプツーが絡んでいる可能性があるのか?」
「いえ、それは分かりません。只、不穏な動きがあるので気になっただけです」
調査をしたクロが、ここまで危惧しているのは気になった。
「クロは俺達も行った方が良いと考えているのか?」
「はい、その通りです」
クロがここまで言うのだから、余程の事なのかも知れない。
「檻の魔獣の中に『アシッドリザード』『ソニックタイガー』等が居たのを確認しています」
「その魔獣は強いのか?」
魔獣の名は聞き覚えがあるが、記憶が定かでないのでクロに確認をする。
「はい。主であれば瞬殺ですが、ランクで言えばAからSになるかと思います」
「そんな魔獣を人族が扱えるのか?」
「私もそこを疑問視しております。奴隷契約に似た何かで、魔獣を従わせていると考えております」
「成程ね」
この世界の職業には、前世のゲームに出てくる様な『魔獣使い』と呼ばれる職業は無い。
そもそも、魔獣を主従関係に出来る者が数少ないし、そういった者達は既に別の職業についている。
俺のような例外も居るが……。
クロが直接、俺に話し掛けてきたのは近くにいるターセルや、カルア達に聞かせる為なのだろう。
少し離れているルーカスや、フリーゼ達に聞こえない大きさで話し掛けてきた事からも分かる。
今回の件が、どれ程厄介な事かを遠回しに伝えようとしているのだと思った。
当然、フリーゼの護衛であるカーディフとセドナも近くにいるので、会話は聞こえているので気になるのか、俺に気付かれない様にして、俺達の方に寄って来ていた。
「二人は、どう思う?」
俺は会話を聞いていただろうターセルとカルアに話を振る。
二人共が同じ様な回答をする。
俺を含めた少数精鋭と街の外での大群で取り囲むという事だ。
「タクトの考えもあると思うけど、貴方の力と、転移扉で騎士を送り込む事が必須だと思うわよ」
「転移扉で騎士を一気に移動させるという事か……」
「えぇ、貴方の嫌がっている軍事利用になるけどね。それか、街ごと結界で誰も出さない方法もあるわね」
カルアは可能性を含めた提案をする。
「私は街ごと結界を張る方をお勧めですかね。タクト殿なら、街一つぐらい結界を張る事くらい造作も無い事でしょうし」
ターセルは、結界案を推す。
「どちらにしろ、タクト殿ありきの作戦になりますね」
協力しないような事を言った俺の言葉を覚えているので、申し訳なさそうに話す。
「今回の作戦指揮は誰が取ると思う?」
「そうですね。王国騎士団長のソディックが妥当かと思います」
「多分、三獣士も作戦に参加するわよ。彼等の最後の任務になるかもね」
俺ありきの話であれば、協力する必要はある。
クロからの忠告もあるし断れば、俺自身が後々後悔するだろう。
「仕方が無いか」
俺は呟く。
ルーカスは、アスランとダンガロイに、フリーゼの四人で話し合いをしている。
「ちょっと、いいか」
俺が声を掛けると、四人共俺の方を向く。
「クロの報告では、街にアシッドリザードや、ソニックタイガーが檻にいるらしいぞ」
「なんだと!」
一番最初に声を上げたのは、フリーゼだった。
「そのような魔獣が、人族が制御出来る筈が無いだろう」
「人族で制御出来ないのであれば、魔族が手を貸している可能性があるって事だろう」
「それはそうだが……」
「人族に魔族のどちらが悪いという訳でなく、種族関係無しに悪人は居るって事だ」
俺の言葉に対して、フリーゼは反論出来ないでいた。
「指揮はソディックが取るのか?」
俺はルーカスに確認をする。
「概ね、そうなるだろう」
「そうか。もし、ソディックから要請があれば、友人として今回の件に協力するしかないな」
俺はわざとらしく、協力する旨を話す。
親族になるから協力すると言うと今後も、ルーカスに良いように使われる気がしたので、ソディックの友人を前面に出す事にした。
ルーカスは俺の言葉を聞くと、希望に満ちた顔をする。
「タクトよ、それは本当か!」
「あぁ、あくまでソディックから頼まれたらだがな」
「そうか、そうか」
先程までの沈んでいた顔が嘘のようだった。




