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458話 子供達の期待!

「待たせたな」


 村民に説明が終わったフリーゼが俺の所に来る。

 フリーゼの後ろには村長が居る。


「俺に何か用事か?」


 村長に向かい話し掛ける。


「いえ、冒険者様にも村を代表して、お礼をと思いまして」

「気にしなくていいぞ。俺もただ働きだからな」

「えっ、報酬無しなんですか。無償で村の為に魔獣退治をして頂いたのですか!」


 てっきり、領主からの依頼で魔獣討伐したと思っていた村長は驚いていた。


「あぁ、俺の意志関係なく無理矢理連れて来られた」

「無理矢理では無い」

「いや、あの場で俺が断ると言う選択肢は無かった筈だ」


 俺の言葉に、フリーゼは答える事が出来ないでいた。


「別に無理矢理連れて来られたことに関して、怒っている訳では無いから安心してくれ」


 一応、フォローする言葉を付け足す。


「冒険者様!」


 大声を上げて数人の子供達が俺の所に寄って来た。


「ん、どうした?」


 俺は片膝を着いて、子供達と目線を合わす。


「これ、どうぞ」


 雪で作った兎らしき物を俺にくれた。


「ありがとうな」


 俺は受け取ると子供達の頭を撫でて、一人ずつ礼を言う。


「又、来る?」


 子供の一人が俺に問い掛ける。


「どうだろうな。約束は出来ないが、近くまで来たら寄るつもりだ」

「……そうなんだ」


 子供達は皆、残念そうな表情をする。

 多分、俺というよりは綿菓子や食べ物に対しての事だろう。


「これこれ、冒険者様を困らせるでは無い」


 村長が子供達に向かい話す。


「子供達がスイマセン」


 村長が俺に謝る。


「気にしなくて良いぞ。それと俺の名はタクトだ。覚えておいてくれ」

「タクト様ですか、承知致しました」

「様付けは不要だ。タクトで良い」

「しかし……」

「俺は敬られるような者ではないから、村民と同じような呼び方であれば呼び捨てで無くても良いぞ」

「そうですが……」

「まぁ、様以外なら何でも良いから」


 村長を困らせるつもりは無いので、俺の呼び方についての話は終わりにする。


「私達で出来る事があれば、仰って下さい」

「頼みたい事はあるが、領主夫人の了承無しでは話は進めれないな」


 俺はフリーゼを見る。


「何だ、言ってみろ」


 俺は【アイテムボックス】から小さな木像を取り出す。


「これは?」


 村長が不思議そうに木像を見ている。


「俺が信仰している神、エリーヌの像だ」

「聞いた事の無い神様ですな」


 村長に木像を渡すと、そう言いながら木像を触っていた。


「そうだろうな。認知度で言えば、ほぼ知られていない神だからな」

「お前は何故、その神を信仰している」


 不審に思ったのか、フリーゼが話しに入ってきた。


「それは俺の使命だと、お告げがあったからだ」


 この世界に転移した事は話せないので、夢でお告げがありエリーヌの事を広めている事を話す。

 フリーゼは、聞いた事の無い神に不信感を持っている。


「そもそも、神を信仰する事が無くなったこの世界だ。少しでも心の支えになればと思っている」


 俺は続けて、無理強いはしない事を伝える。

 フリーゼは考え込んでいた。

 神を信仰する事は個人の自由だ。領主夫人とはいえ強制する事は出来ないだろう。

 もしかしたら、俺を危険人物と思っているのであれば、俺の信仰するエリーヌも邪神だと疑っているのかも知れない。


「村の者達が決める事だ。好きにすれば良い」


 村民達の思いを汲み取った決断なのだろう。

 フリーゼは再度俺に問い掛ける。


「本当に害が無い神なのだろうな?」

「あぁ、害は無いし祈りを捧げた所で、助けてくれるかは別問題だしな」

「信仰している者が、そのような考えでよいのか?」

「あぁ、祈って助けてくれるのであれば、そんな楽な事はないだろう」

「……神が絶対では無いのか?」

「いや、神が助けてくれるなんて事は無いだろう。祈る事で、人と人の精神的な繋がりが強くなれば、結果として、良い世界になるだろう」


 信仰しているエリーヌが、この世界に関与出来る事はないので、フリーゼが言うような事は起きない。

 俺に対しては、かなり害がある神であるのは間違いないのだが……。

 それに、過剰に神に期待されても困る。

 

「……お前は、変わっているな」

「よく言われる」


 俺はフリーゼに答える。


「ねぇ」


 子供の一人が俺に話し掛けて来た。


「どうした?」

「これに毎日お祈りすれば、お兄ちゃん達は来てくれるの?」


 純粋な目で俺を見ながら聞いてきた。


「どうかな。毎日、木像に祈って、良い子にしていれば俺は来れなくても、甘いお菓子を運んでくれるかも知れないな」

「本当!」


 質問した子供は勿論、他の子供も嬉しそうに笑顔になる。

 この笑顔を裏切る事は出来ないと思う。

 綿菓子製造機は、もう一度製作して貰えるので、材料である粗目さえ手に入れる事が作る事は出来る。


「そろそろ、行くぞ」


 フリーゼの中では話が終わったと思っているようだ。

 村長と子供達に別れを言い、村を去る。


 飛行艇まで歩いている最中に、俺はフリーゼに綿菓子製造機を領主達に寄付する事を伝える。


「こんな高級品を寄付だと!」

「あぁ、そうだ。但し、ホラド村には定期的に綿菓子か、甘い菓子を届けてやってくれ」


 一つの村を贔屓するのは気が引けたが、子供達の笑顔を思い出すと仕方ないと、自分に言い聞かせた。

 フリーゼにも材料は粗目だけと言う事を伝える。


「粗目が入手しにくいのであれば、王都経由で入手できる筈だ」

「確かに、この地域で粗目は入手し辛い。国王に相談してみる」


 フリーゼは俺の提案を前向きに考えてくれているようだ。


 俺は飛行艇の【結界】を解く。

 飛行艇に乗り込もうとするので、待つように言う。

 早く戻って、国王に問いただしたいので俺の言葉に不満があるようだ。

 俺は飛行艇を【アイテムボックス】に仕舞う。

 この大きさの物が収納出来るか疑問だったが、問題なく収納出来た。

 俺が持てて【アイテムボックス】の空間に入れる事が可能であれば、


「とりあえず、俺の周りに集まってくれ」


 不満そうにフリーゼは、俺の側に寄って来る。


「じゃあ、戻るぞ」


 俺は、そう言って【転移】でフリーゼの屋敷に戻る。

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