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453話 新たな種族!

 イエティ討伐する為に、カストル山に登っているが視界が吹雪で遮られて、前が殆ど見えない。


「俺達は大丈夫だが、そっちは大丈夫なのか?」

「当たり前だ! エルドラード王国の女を舐めるな」


 フリーゼが大声で叫ぶ。

 しかし、明らかに我慢しているのが分かった。


「仕方ないな」


 俺はそう言って、フリーゼ達の周囲に【結界】を張り吹雪から守る。

 突然、自分達の周囲にだけ吹雪の影響が無くなったので、フリーゼ達は驚く。


「とりあえず、吹雪からは身を守らせて貰ったぞ。すぐに戻って来るから、少しの間ここで待っていろ」

「いや、私も行くぞ」


 聞き分けの無いフリーゼだが、イエティとの戦闘は見せてやると約束すると承諾してくれた。

 

「シロにクロ、頼んだぞ」


 フリーゼ達を二人に託して、イエティ探索する為に単独で行動をする。

 【魔力探知地図】でイエティらしき魔獣のマークを探す。

 山頂付近で、他の印よりも少し巨大な印を見つける。

 他の場所にも少し小さな印が数個ある。


「多分、これだな」


 俺は一番大きな印を示した場所まで【飛行】と【神速】を使い、一気に辿り着く。

 印の場所には、全身白い毛で覆われた二足歩行している三メートル位の者が立っていた。

 見た感じは魔獣というよりも魔人に近い。

 目の前に現れた俺を敵と認識したのか、俺の方を見ていた。

 と言っても目も体毛で隠れて見えないので、そんな感じがしているだけだ。

 第六感という訳では無いが、もしかしたら言葉が通じるかと思い話し掛けてみる。


「言葉が分かるか?」


 俺が話しかけた事に驚いたのか分からないが、動こうとしなかった。


「通じないか?」


 攻撃の意思は無いみたいなので再度、話し掛ける。


「お前、俺が怖くないのか?」


 イエティが俺の問いに答えた。


「あぁ、怖くないな。そっちが危害を加えなければ、俺も危害を加えるつもりは無い」


 俺は両手を広げて、攻撃の意思が無い事をイエティに伝える。


「分かった。お前の言う事を信じる」

「ありがとうな。それともしかして、魔獣じゃなくて魔人か?」

「そうだ。俺達は忘れられた種族の雪人族。お前、人間族か? こんな所まで来る人族は珍しい」

「そうだ、人間族だ。イエティを討伐する為に、この山に来た。……雪人族はイエティなのか?」

「イエティとは違う」


 雪人族が否定をする。

 ……イエティでは無いのか。見た目は完全に俺の知っているイエティなんだがな。

 【神眼】で雪人族を確認するが、ステータスは間違いなく雪人族だった。


「俺達って事は、他にも仲間が居るのか?」

「俺の家族がいる」


 俺に敵意が無い事を分かってくれたのか、自分達の事を色々と話してくれた。

 雪人族は、昔よりカストル山で生活をしている。

 家族と言っても、雪人族に繁殖能力は無い。

 雪人族は、赤ん坊と言うか新しい命が誕生する場所が何故か分かるらしい。

 カストル山の雪の中から誕生するらしいが、どのように誕生するかは雪人自身も分らないそうだ。

 ここ何百年も赤ん坊が誕生していないとも教えてくれた。

 話を聞く限り、雪の妖精では無いのかと思ってしまう。

 このような標高が高い場所に人族が来る事は珍しいそうだ。


「雪人族じゃ呼びにくいので、名前は無いのか? 俺の名はタクトだ」

「俺は、スーノパパだ」

「……もしかして、成人女性の名は、スーノママか?」

「お前、何故分かる。スーノママに会った事があるのか!」


 響きが前世のアニメキャラクターに似ているので、面白半分で話した事が的中したようだ。

 そういえば、そのキャラクター名はフランス語で『綿菓子』の意味だった筈だ。

 最近は何かと綿菓子に縁があるなと思う。


「いや、なんとなく適当に言ったら当たっただけだ」

「そうか。でも、名前当てるの凄い」


 表情が見えないので分からないが、嬉しそうな事だけは感じた。

 気分が良いのか俺に家族に会えと誘いを受けるが、イエティを討伐しないといけない事を伝える。


「……俺もイエティ倒すの手伝う」


 スーノパパもイエティには迷惑しているそうだ。

 元々、雪人族は年中吹雪いている山頂辺りで生活をして、イエティは山の中腹から麓を生息地域としていたが、食料である魔獣を探して度々、魔獣を奪って行くそうだ。

 イエティが暴れる事により、雪崩等が発生する事も有り、穏やかに過ごしていた雪人族もイエティに対して不満を持っていた。


「俺の他にも人族が居るが、問題無いか?」

「タクトのように、俺達に危害を加えないか?」

「それは俺が約束する。但し、全ての人族が友好的だとは思わないでくれ」

「分かった」


 俺のせいで人族に対して、間違った認識を持ち人族と関わり合い、雪人族の優しさに付け込んで雪人族に被害が及ぶような事だけは避けたい。


「じゃあ、移動するが良いか?」

「移動? 歩いて行ける距離か?」

「まぁ、一瞬で着くから驚くなよ」

「分かった」


 俺はシロに連絡をして、イエティでは無いが雪人族を連れて戻る事を伝えて、フリーゼ達に驚かないように準備をする。


「その前に、撮影していいか?」

「撮影? それは何だ?」


 俺はシロとクロとで撮った写真とカメラを見せて、写真を撮る撮影という行動について説明をする。


「これ、タクト。何故、この中に居る?」


 スノーパパは理解出来ていない。

 文明とはかけ離れたこのような場所であれば仕方の無い事かも知れない。

 俺の存在が、雪人族に悪影響を与えない事を願った。

 吹雪が邪魔だが、いかにも雪人族らしい写真が撮れる。

 前世のテレビで、紹介される未確認生物特集なので紹介されるピンボケしている写真よりは良いと思う。

 【転写】したら全然違っていたら、それはそれで俺に才能が無いのだろう。


「今度、紙に写した写真と呼ばれる物を持ってくるから、待っていてくれ」

「分かった」

「それじゃあ、俺の仲間の所に行くか」


 俺はスーノパパの手を掴んで、【転移】する。


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