448話 銀色の水!
「主、終わりました」
クロが、並んでいて治療が必要な村民が居なくなったを教えてくれる。
残りは、寝たきりの者だけだ。
「一緒に来るか?」
フリーゼに同行するかの確認をする。
「勿論だ」
俺の行動に納得出来ていないというか、俺の存在自体が信じられない様子だ。
部屋を出ると、用意していた料理も三分の一程になっていた。
「どんな感じだ?」
シロに状況を確認する。
「はい、大体の方達には行き渡ったかと思います」
「そうか、少し量が多かったみたいだな」
「それは、大丈夫かと思います。子供達が何度も御代りに来ていますから」
シロは笑いながら答えた。
「お姉ちゃん、早く」
俺と話している間にも、シロは子供達に急かされていた。
子供の元気な姿は、見ていて安心する。
やはり、子供と言えば綿菓子だろう!
俺はそう思い、部屋に戻って綿菓子製造機と粗目を出す。
粗目もこれで在庫が無くなるので、調達が必要になる。
【複写】で増やしているので、少量でも暫くは持つので大量に仕入れる必要は無い。
「なんだそれは?」
「まぁ、見ていれば分かる」
俺はシロを呼び、綿菓子製造機を外まで運び、子供達を集める。
「今から、食べられる雲を作るから見ていろよ」
子供達は、笑いながら「嘘だ」とかを言っている。
「よく見ていろよ」
俺は、綿菓子製造機の動かして、暫くしてから中央に粗目を投入する。
すると、中央から綿菓子が出始める。
見ていた子供達は勿論、大人達も驚きの声を上げる。
料理に使う棒で綿菓子を巻き付ける。
「最初に食べる奴は誰だ?」
未知の食べ物の為か、お互い顔を見合っている。
誰も食べないのであれば、影響力のある人物に頼るしかない。
「じゃあ、はい」
隣にいたフリーゼに綿菓子を渡す。
「なっ!」
いきなり綿菓子を渡されたフリーゼは、戸惑っていた。
「毒は入っていないから、安心して食べてくれ」
俺はフリーゼに向かって、笑顔で話し掛ける。
一瞬、睨まれるが意を決して綿菓子を口に入れる。
「な、なんだ、これは!」
そう言うと、一気に綿菓子を食べ始めた。
その様子を村民達は見ている。
食べ終わると、フリーゼは村民に向かって話始める。
「甘い雲を食べているようだ。皆も食べると良い」
フリーゼの声がきっかけとなり、綿菓子を食べようと綿菓子製造機の周りに集まって来た。
「ちゃんと整列しろよ。それと、一人一回だからな」
数に限りがあるので、大量に提供する事は出来ない。
「じゃあ、シロ。悪いが頼むぞ」
「はい、御主人様」
シロに綿菓子の対応を任せて、クロと病人の家まで歩く。
案内は先程の老人で、村長だ。
「お主は、料理人なのか?」
「いや、無職だ。料理も出来る無職だな」
「それを言うなら、治療も出来る無職とも言えるだろう」
「そうだな。無職だから世間の目が冷たいので、何でも出来るようにならないとな」
嫌味っぽく話すが、フリーゼには伝わらなかった。
「そのランクSSSの冒険者様ともなると、何でも出来るのですか?」
村長が俺に話掛けて来た。
「そんな事は無いぞ。俺は、たまたま出来るだけだ。冒険者に期待しても、良い事は無いぞ」
「そうなのですか」
俺の言葉に、村長は落胆する。
その姿を見て、今回の件とは別に何か冒険者に頼みたい事でもあったのかと感じた。
「魔獣以外に困った事があるのか?」
「まぁ、その……」
「何だ? 言いたい事があるならハッキリと言え!」
フリーゼが村長に対して、キツイ口調で話した。
「はい。……実は、今から治療をして頂く者達は、以前に報告させて頂いた銀色の水がでる石から、水を持ち帰った者達なのです」
「それは、綺麗に輝く銀色の水の事だな?」
「はい、そうです。体調が悪くなってからも体に良いと、銀色の水を飲んでいるのですが……」
「一向に良くならないのか?」
「はい。看病している者も気分が悪くなったりと、呪いでは無いかと皆が噂しております」
村長とフリーゼは、深刻そうに話していた。
銀色の水と聞いて、俺は『水銀』を思い浮かべる。
極稀に、自然に発生する事がある事は知っていた。
火山地帯に多い筈だが、前世の常識とは異なるのか俺の思い違いなのかは分からない。
そもそも、水銀自体がこの世界に存在するのだろうか?
もし、水銀であれば、体に良い訳が無い。それどころか、猛毒だ。
気化もするので、気分を害する者が出るのも納得が出来る。
「その銀色の水は多分、猛毒だぞ」
俺は村長とフリーゼの会話に割って入る。
「なんだと! お主は銀色の水が何かを知っているのか?」
「多分だが、実際の物を見てみないと判断は出来ない」
憶測で話をしているだけだが、今の話の内容であれば間違いないだろう。
俺の知らない銀色の水がこの世界に存在しているのであれば、話も変わってくるが可能性は低いだろう。
「早くその家に向かうぞ」
「は、はい」
猛毒と聞いてフリーゼは、早くその病人の所まで案内するように村長を急かす。




