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447話  一時しのぎの善意!

 何も無い草原に着陸をして、フリーゼ達を降ろす。

 皆を降ろした後で【結界】を施して、何人も触れる事が出来ない様にしておく。


「近くの村に用事でもあるのか?」

「被害が出ている村に、領主の妻である私が行くのは当然の事だ」


 その当たり前の事が出来ない領主が多いのだと、俺は思っている。

 やはり、前世で俺の年齢に近いのもあるのだろうか、考え方や物の捉え方に共感出来る事が多い。

 フリーゼが同世代であれば、良い友人になれたのでは? と思ってしまう。

 一部、例外の領主も居るが……。


「ところで、その腰の剣は何だ?」


 フリーゼの恰好が、物凄く気になっていたので尋ねる。

 領主夫人というよりも、騎士に近い格好だからだ。

 聞くタイミングが無かったので、今になってしまった。


「自分の身を守るのに、武器は必要だろう?」

「領主夫人が、自らの身を守る必要は無いだろう?」

「用心に越した事とはない」


 確かにそうだが、知らない者が見たら領主夫人だとは思わないだろう。


 暫く歩くと、村が見えてくる。


「ホラド村だ。状況確認も兼ねて寄るだけだ。そんなに時間は取らせん」

「気にしなくていいぞ。この村が被害を受けているのであれば、遅くなったところで被害は拡大しないだろう」

「そうだが、戻る時間が遅くなる」

「まぁ、そこは心配するな」


 最悪【転移】を使えば良いだけだ。

 カーディフが王都に戻れば、俺の極秘事項は知る事になる。

 フリーゼや、セドナもゴンド村を訪れる事になれば、俺の秘密が知られるのは間違いない。

 どちらにしろ早かれ遅かれ、俺の秘密が知られるのは、時間の問題という事だ。


 村の入口に来ると、村民がフリーゼに気付き、声を掛け合い続々と村民がフリーゼの周りに集まって来た。


「討伐が失敗ばかりで、申し訳ない」


 フリーゼは村民に向け、頭を下げて謝罪する。


「そんな、フリーゼ様。頭を御上げ下さい」


 老人がフリーゼに、慌てた様子で話す。

 彼が村長なのだろう。


「今から、アルミラージとイエティを討伐してくるので、もう少しだけ我慢してくれ」


 悲痛な声で、村民達に話し掛ける。


「討伐隊の方々は?」


 老人は周りを見渡しながら、フリーゼに質問をする。


「……彼の単独討伐だ」


 フリーゼは俺の方を向く。

 村民達がざわつく。


「驚くのも無理は無いが、彼は冒険者ランクSSSだ」


 冒険者ランクSSSと聞いた瞬間に、驚きの声が上がる。

 村民達の視線が俺に集まる。


「まぁ、安心してくれ」


 俺の言葉に歓声が上がった。

 村民達の顔を見るが皆、痩せこけている。

 寒い地域の為、食料確保もろくに出来ないのだろう。

 一時しのぎにしかならないと分かっているが、食料を提供する事にした。


「空いている家は無いか?」


 俺の言葉に、フリーゼや村民達は首を傾げた。


「空き家でしたら幾つか御座いますが?」

「その空き家まで案内してくれるか?」

「それは構いませんが……」



 老人がとりあえず、俺達を空き家まで案内してくれた。


「お主、何をするつもりだ?」


 フリーゼが俺に質問をするので、【治療】と食事の提供をする事を告げる。


「治療士も居ないし、提供する食材も無いのに何を言っておる」

「まぁ、見ていてくれ」


 俺はシロとクロに、村民で調子の悪い者達を聞いて来て貰う。

 動けない者に対しては、俺がその家まで行く事も伝える。

 二人共、案内してくれた老人と外に出る。

 外では村民達が俺達の後を着いて来ていたので、シロとクロ達が説明している声が聞こえた。


「いずれ知られると思うが、今から起きる出来事は出来る限り、秘密にしてくれ」

「……とりあえず、分かった」


 フリーゼが返事をしたので、俺は【アイテムボックス】から非常用の食事を出して、机の上に並べる。

 王都の料理人達の試作品や、ジークにあるガルプの店の料理になる。


 いきなり、目の前に幾つかの料理が出され始めたので、フリーゼ達は絶句していた。


「これは……」


 フリーゼが一言発する。


「まさか、【アイテムボックス】のスキル持ちとは」


 カーディフも続いて呟く。


「秘密だぞ」


 俺は笑いながら、フリーゼ達に話す。


「これ位あれば、足りるか?」


 机の上に並べ終わった料理を見て、フリーゼに聞く。


「十分な量だと思う」

「そうか、それなら安心だ」


 俺は外に出ると、部屋の中に料理を用意した事を、村民に伝える。

 器などは無いので各自、家から持って来て欲しいと話す。

 既に料理の匂いは、家の外まで漂っているので、俺の言葉が嘘では無い事が分かっているだろう。

 奥の部屋で、体調の悪い者は治療をするので、入ってく様に伝える。

 シロには料理の方を担当して貰い、料理が冷えて来たら魔法で温めてくれと伝え、クロには治療に方を担当して欲しいと頼む。

 空き家に一斉に村民が入ると大変なので、子供や老人を優先にして貰う。


 俺は、病人や怪我人の治療をする為に、奥の部屋に行く。

 フリーゼは、カーディフとセドナに、料理の配膳を手伝うように指示をしていた。


「お主が、治療をするのか?」

「あぁ、そうだ。シロも治療出来るが、今回は料理の方にまわって貰った」


 フリーゼは俺の横に立ち、座った俺を見下ろす。

 威圧的に感じるのは、気のせいだろうか?


「主、良いですか?」

「おぉ、すぐに済むから、部屋の外で数人待たせてくれ」


 俺はクロに細かい指示を出す。


「宜しく御願いします」


 幼児と母親が、頭を下げる。

 幼児は骨折しているのか、右足に添木をしていた。

 母親は栄養不足と過労か、疲れた表情をしている。


「すぐに良くなるからな」


 俺は、両手で幼児と母親に触れて【神の癒し】を施す。


「終わったが、体調はどうだ?」


 一瞬の出来事で、フリーゼは勿論、幼児と母親も何が起こったのか分からなかった。


「足が痛くない。僕、歩けるよ」


 喜んで、飛んだり跳ねたりする幼児を、嬉しそうに見ている母親。


「ありがとうございました」

「おぉ、外で料理も食べて行けよ」

「はい」


 幼児と母親は、笑顔で部屋を出て行った。


「……何をした?」

「見ての通り、治療だが?」

「患部触れる訳でも無く、詠唱もしていないのにか?」

「あぁ、俺は無詠唱で魔法を発動出来る」

「なんだと! そんな馬鹿な事があるか。無詠唱で魔法を発動する等、聞いたことないぞ」

「三獣士のステラも出来るだろう?」

「ステラは、高速詠唱が出来るだけだ」


 ……そうなのか? 無詠唱と思っていたのは俺だけなのか?


「まぁ、信じる信じないは勝手だ」


 次の患者が入って来たので、同じ様にして治療をする。


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