437話 勝負の世界!
「さぁ、始めるか」
アルとネロに向かい、話す。
「タクトに初めて勝つ日が来たのじゃ!」
「そうなの~」
「これは、負けた奴を決めるゲームだから、一位も二位も無いぞ」
「それは、知っておる。タクトを負けさせれば良いだけじゃ」
アルから、物凄い意気込みを感じる。
「そんなに気合いれなくても所詮、遊びだぞ」
「遊びとはいえ、勝負は勝負なのだ!」
「そうなの~」
二人共、勝負には真剣に向き合うようだ。
アルとネロ、シロを加え俺を含めてババ抜きをする。
ババ抜きは、運ゲームだと思っているアルとネロ。
「妾の勝ちは、決まったようなものじゃな!」
ゲーム終盤になり、手持ちのカードが二枚のアルは余裕でいる。
ネロは三枚、シロは四枚、俺も四枚だ。
しかし、俺はババを持っている。
シロから、ババを引いた際に敢えて、ババを引いた事をアピールした。
俺は手持ちのカードで、ババ一枚だけ不自然に上に出す。
「そんなのに騙される程、妾は馬鹿じゃないぞ」
ババの隣のカードを引き、カードを確認する。
「ふっ、どうじゃ」
ドヤ顔で俺を見る。
数字が合わない為、場にカードを出さずにそのまま、ネロがアルのカードを引いた。
その後、ネロのカードをシロが引き、数字があったので場にカードを出す。
俺もシロのカードを引く。数字が合うので、場にカードを出す。
これで手持ちのカードは三枚になる。
先程とは違い、飛び出したカードの横をババにする。
アルは先程の同じように、飛び出したカードがババだと思い込み、隣のババを引く。
「なっ!」
アルの表情から、ババがアルに渡った事が、皆に知れ渡る。
ネロが、アルのカードを引くがババでは無かった。
シロが、ネロのカードを引いて一抜けする。
その後、アルが俺のカードを引く。
アルにネロ、俺の三人共に手持ちのカードは三枚となる。
ネロが又もババを引かない事で、アルが悔しそうな顔をする。
ネロはカードが揃ったのか、手持ちカードが一枚となり俺が引いて、二抜けする。
「やったの~、師匠より先に上がったの~」
ネロは嬉しそうに叫ぶ。
俺もカードが揃ったので、場にカードを出して、残り一枚となる。
「屈辱じゃ!」
そう叫びながら俺のカードを引き、アルの負けが確定する。
「もう一度、勝負じゃ!」
「俺も忙しいから、これが最後だぞ」
「……分かった」
二戦目もシロが一抜けして、俺、ネロの順になり、又もアルの負けだった。
「何故なのじゃ……」
「アルは、ババが来た時にすぐ分かるからな」
「……それは、駄目なのか?」
「ババを持っていると、取る奴が警戒するだろう」
「……確かに」
警戒したところで、ババを引く確率にどれ程違いがあるかは分からないが、俺の思った事を話した。
「因みに子供達と遊んだ時は、どうだったんだ?」
「……子供達は強いのじゃ。何故か、十回に四回は妾かネロが負けるのじゃ」
「そんなに強いのか?」
俺は疑問を感じたので、アルに質問をする。
「御主人様、違うのですよ」
シロが笑いながら、俺に説明をしてくれた。
アルやネロは、年齢に関係なく遊びたいという子全員と相手をしているらしい。
小さな子は、床にカードを広げて数字の合っているカードを探している。
ババが合っても、アルとネロは見て見ぬ振りをしているそうだ。
顔に出る子供の場合、ババ以外を引こうとすると泣きそうな顔をしたりするので、アルとネロはババを引くしかないらしい。
「優しいな」
「……まぁ、大人の余裕という奴じゃ」
「そうなの~」
俺から見れば、二人共が小学生にしか見えないのだが……。
本当に、この二人が魔王かと思ってしまう。
他の魔王も同じように優しければ、争いは少なくなるのにと思える。
「トランプを使った、違う遊びを教えてやる」
「なんじゃと!」
アルは、違う遊びなら勝てると思ったのか、目を輝かせていた。
俺は神経衰弱を教える。
ルールはすぐに理解したようだ。
運は殆どなく、記憶力の勝負になる。
「よし、分かったのだ。タクト、勝負じゃ!」
「いや、俺は用事があるから、今度来た時な」
アルは神経衰弱で、俺と勝負が出来ない事が不満のようだ。
(これなら、私でも出来ます)
クンゼが俺達の頭に語る。
「そうだな、カードをめくるのは難しいので、アルかネロにめくって貰えば問題無いな」
(はい)
クンゼが答える。
アルとネロは既に神経衰弱を始めている。
真剣な表情だ。
「じゃあ、俺は王都に戻るから」
「分かったのだ。次こそは、負けないからの」
「負けないの~」
シロにアル達の相手を頼んで、俺はゴンド村から王都に戻る事にした。




