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412話 火種!

 三国会談最終日が終わった。

 やはり、オーフェン帝国とシャレーゼ国との協議はお互い平行線のままで、交渉決裂となる。

 シャレーゼ国は軍事行動も止む無しと宣言したそうで、オーフェン帝国も最初は交渉していたが、シャレーゼ国の横柄な物言いに対して、我慢の限界だったのか対抗措置をするという発言までする事態になった。

 仲裁役のエルドラード王国は、シャレーゼ国の態度に対して、オーフェン帝国の対応は致し方ないと判断をした。

 話を聞いて、気になるのが事前にも確認したが軍事力で言えば、シャレーゼ国はオーフェン帝国に適う筈が無い。

 そこまで強気に出れるという事は、オーフェン国と同等かそれ以上の軍事力を手に入れたのだと考える。

 秘密裏に何かを開発したのかと、勘ぐってしまう。

 何度も顔を合わせていたルーカスも、シャレーゼ国のウーンダイの豹変振りに戸惑っていた。

 ルーカス曰く、昔はもっと温厚で争いを好まない性格だったのに、何が彼をそこまで変えたのかと不思議がっていた。

 ジャジーとメントラは、会談が終わり緊張が解けたようだ。

 会話をしていても、笑う回数が増えていた。

 ジャジーとメントラは、三国会談が終わったので帰国する筈だったが、明日にオーフェン帝国との会談があると言う理由で残る事になる。

 会談内容は、スタリオンとユキノの件だ。

 俺が、エルドラード王国代表として戦う事は知っているので、応援してくれる。

 ただし、俺とユキノの関係を知らないので、純粋に応援してくれる気持ちに対して、申し訳ない気持ちだった。


 最終日になるので、大臣達にもオーフェン帝国の料理が出される。

 と言っても、ルーカス達が食べる料理とは違うのだろう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 事件は、晩餐会でも起きていた。

 ルーカスが疲れ果てた顔で、戻って来た。


「ウーンダイ殿の考えが、全く分からん」


 愚痴を言いながら、晩餐会の様子を俺達に話してくれる。


 オーフェン帝国から出された料理も素晴らしく、ルーカス達も舌鼓を打つ。

 シャレーゼ国のウーンダイも、普通に食べていたが最後に、料理人を紹介した。

 料理人を見たウーンダイが激高する。 


「我々、シャレーゼ国で忌み嫌われる狐人族が作った料理を食べさせるとは、どういうおつもりか!」


 いきなりの事で、シャレーゼ国以外の者達は呆気に取られていた。


「ウーンダイ殿。前回いや、それ以前にも同じ料理人の作ったものを食されている筈だが?」


 トレディアは困惑していた。


「そうですぞ。前回の料理人も同じだと、記憶しております。如何なされたのですか?」 


 ルーカスもトレディアが間違っていない事を、ウーンダイに伝える。

 二人が同意見を述べるが、ウーンダイはそれを否定する。


「父上、もう良いでしょう。気分を害されたのであれば即刻、国に戻りましょう」


 シャレーゼ国の第三王子であるタッカールが、ウーンダイを落ち着かせる。


「……そうだな。申し訳ないが、今回はこれにて帰国させて頂く」


 そう言うと、シャレーゼ国一行は部屋から出て行った。


「ただの難癖に近いわよ」


 一部始終を見ていたカルアが、意見を言う。

 ターセルもカルアと同意見だ。


「シャレーゼ国は、オーフェン帝国と戦争がしたいのか?」


 今迄の話から、俺の憶測だ。


「そう捉えられても、おかしくは無いな」


 ルーカスは、大きな溜息を着く。

 外が騒がしいので、窓から覗いてみるとシャレーゼ国が帰国に準備をしていた。


 ……こんな夜に移動をするのか?

 夜の移動は、昼間の比では無いくらい危険だ。

 幾ら、頭に血が昇っているとは言え一国を治める者であれば、冷静に考えて夜の移動は止めるべきだろう。

 シャレーゼ国の今後の動向が気になる。

 戦争の口実を作り、大義名分で戦争を起こしたいのだろう。

 戦争となれば、関係の無い者にも被害が及ぶ。

 特に、弱い者が虐げられる。

 他国同士の事なので、俺は介入出来ない。


「お主、明日は大丈夫だろうな?」


 ルーカスが、明日のスタリオンとの対決の事を話し始めた。

 俺が「問題無い」と答えると、何度も「絶対に負けるなよ」と念を押される。

 俺の強さを信用していないのか、スタリオンは俺が思っているより強いのか気になったが、明日になれば分かる事だ。


「安心して、観戦してくれて大丈夫だ」


 心配性のルーカスを安心させる。


「そうです。タクト様が負けるなんて、有り得ません」


 ユキノも笑顔で話すと、ルーカスも頷いた。


「国王様。タクト殿に連絡なさらなくて、宜しいのですか?」


 ターセルの言葉で、思い出したかのようにルーカスが話す。


「明日の対決は、オーフェン帝国の一般国民も観戦するそうだ」

「はぁ?」


 俺は関係者のみ、観戦可能な対決だと思っていた。


「スタリオン殿は、御自分の強さを国民に見せたいようです」


 ターセルが、スタリオンの思惑を話す。

 完全にアウェーだ。


「それと、フェン様も観戦されるそうです」

「……フェンて、誰だ?」


 聞きなれない名前だったので聞き返すと、その場に居た皆が一斉に、俺の顔を見た。


「お主、本当に常識が無いの……オーフェン帝国の象徴でもあるケット・シーのフェン様だ」


 シロが苦手としているケット・シーの名前は、フェンと言うのが分かった。

 そのフェンという妖精が、わざわざ観戦するのにも理由があるのだろうか?

 なんにせよ、明日になれば全て、はっきりする。

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