391話 うっかり!
ヘレンからクエストの内容を聞く。
『キラーラットの討伐』は元々ランクB扱いだったが、討伐失敗して戻って来た冒険者の情報でランクAに格上げされた。
全滅でなく間引きに近いという事だ。
キラーラットは繁殖力が強い為、すぐに大量発生するので定期的に討伐は行っていたが、今回は時期が開きすぎたというか、クエスト受注が無かった為、このような事態になっていたそうだ。
本来であれば、ランクBでも余裕のクエストだと説明してくれた。
俺の連絡がもう少し早ければ、ランクBのままにしておくと言ってくれたが、時既に遅しだ。
『湖の魔物調査』は、魔物の正体も不明な為危険度が高い。
しかも、水中の魔物討伐等は嫌われている為、受注する者が居ないそうだ。
だからといって、冒険者ギルドとしても放置は出来ない。
本当であれば指名クエストもしくは、大規模人数での討伐になるが、事前に魔物の調査が必要を考えていた。
丁度、俺から連絡があったので、適任という事で俺へのクエストに変更したそうだ。
名目上は調査となっているが、討伐しても問題は無い。
その際、報酬は追加される。
「ところで、誰とパーティーを組むんだ?」
ジラールは、いつも単独行動の俺がパーティーを組むのに、興味があるようだ。
「あぁ、ジークに居るトグルだ。見学は、アスランとユキノだ」
俺が答えると、明らかに聞くんじゃなかったと言う顔をしていた。
「なんで、もっと簡単なクエストにしないんだ」
「アスランが俺の戦い方をみたいといったからだ」
「……確かに単独討伐であれば、ランクB以下のクエストは受注出来ないが、今回はパーティー何だろう?」
「そういう事であれば、今回のクエストの発注は出来ません」
ヘレンが、突然発注を拒否した。
「なんでだ?」
「トグルさんは、ランクBです。ランク以上のクエストを受注する事は出来ません」
……そういえば、トグルはランクBだった。
完全に忘れていた。俺の中ではランクA扱いだった。
「分かった。じゃあ、追加でランクBの討伐クエストを貰う」
「……追加ですか?」
「あぁ、ランクBのクエストはトグルとで達成する。それ以外は俺の単独だ」
ヘレンは呆れた顔をしていたが、ジラールに言われて渋々クエストを出してきた。
「悪いな。しかし、こういうのは受付の仕事じゃないのか?」
「確かにそうですが、ランクSS以上の冒険者の対応は私達が行います」
受付嬢では手に負えない案件ばかりという事なのだろう。
出されたクエストは『レッドキャップの討伐』だった。
「新しいから誰も受けないのか?」
「そうだな、レッドキャップは夜行性の為、姿を現さない事も多い。夜の討伐は危険だから皆、嫌がるな」
「そうなのか? 二日くらい寝なくたって別に平気なのにな」
「誰もがお前と同じだと思うなよ。徹夜なんて一日でも辛すぎるんだぞ」
ブラック企業勤めだった俺にすれば、一日くらいの徹夜は当たり前だった。
今の俺の状態であれば、不眠不休で働ける自信はある。
「それに場所は、お前がランドレスを討伐した場所だ。調査していた者が発見して、急いで知らせてくれた」
レッドキャップは、廃墟や墓地等を好んで住処にする。
特に凄惨な殺しがあったりする場所を好む。
そう考えれば、あの研究施設を住処にしたのも納得出来る。
吸血鬼のアマンダ達が居なくなった為、何処からか移って来たのだろう。
俺は三件のクエストを受注した。
「そういえば、タルイの状況を知っているか?」
「何のことだ?」
俺はオーフェン帝国にある港町『ピスカ』で出会った、ルーミー達から聞いた事をジラールに伝えた。
「それが本当であれば、すぐに調査しなくては……ヘレン」
「はい、すぐに高ランク者に調査依頼をさせます」
「本当であれば、お前が適任だと思うんだが……時期が時期だし、仕方ないな」
「何でもかんでも、俺じゃなくても高ランクの冒険者は幾らでも居るだろう」
「お前のように、何でも受ける冒険者は居ないのが実情だ」
確かに、高ランク冒険者ともなれば、金も名誉もある程度は満足出来ているだろう。
あとは、クエストや冒険者の活動に対して、付加価値をどれだけ見いだせるかだ。
「レグナムが帰ってきたら、お前とも気が合うと思うんだがな」
「レグナム?」
「あぁ、ランクSSの冒険者で、年に数回しかクエストをせずに旅ばかりしている」
「要するに変わり者という事か?」
「あぁ、それもかなりな。人気投票を辞退するのは、お前とレグナムくらいだ」
話を聞いて、レグナムという冒険者に興味を持つ。
「長居して悪かったな」
「いや、タルイの件教えてくれて助かった。今度、きちんと報告する」
「分かった」
ジラールに礼を言って、ヘレンからユキノの冒険者のギルドカードを貰いギルド本部から、ジークへ移動して、トグルを迎えに行く。




