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384話 結果論!

「乾杯!」


 鮮魚店の店主から、町でお勧めの飲食店で、ルーミー達と食事をする。


「その衣装の印からするとやっぱり、タクトさんて四葉商会の関係者ですか?」

「関係者というか、俺が四葉商会の代表だ」

「えっ!」


 楽しそうに食事をしていた手が止まる。


「四葉商会って、国王様やルンデンブルク卿とも個別の繋がりがあるって噂ですよ」

「それは噂で無く事実だ。王族やルンデンブルク卿とは服の仕立てやらで、色々と相談には乗っている」


 第一王女であるユキノと結婚するとは、まだ言えない。


「そんな人が、こんな場所で俺達と会話してていいんですか?」

「なんでだ?」

「だって、普通ならもっといい店で食事するんじゃないですか?」

「そうか? 俺はいつもこんな感じだぞ」

「やっぱり、タクトさんは違うな!」


 ルーミーが俺を持ち上げる。


「そもそも、ルーミー達の方が年上なんだから、俺は呼び捨てでいいぞ。俺は【呪詛】があるので丁寧語は話せないから、この話し方だがな」

「そ、そんなランクSSSの方に呼び捨てなんて、出来ませんよ」

「気にするな。ランクなんて関係なく、この場であった気の合う仲間だと思ってくれれば良いだけだ」

「本当にタクトさんは、変わっていますね。ランクSSSになれば、俺たちのような者相手にしなくても良いのに」

「だから、他の冒険者は知らないが、俺はランクなんて気にしないし、身分だって気にしないぞ」

「分かりました。タクトさんの行為に甘えさせて頂き、呼び捨てで呼ばせて頂きます」

「おぉ、それに俺に対しても敬語じゃなくていいぞ。同等の冒険者に話す感じで頼む」

「分かりました。以後、そのように話します」


 ルーミーは、堅物みたいで俺に対して話し方を変えるのは難しいかも知れないが、クローレとテリオスのふたりは、すんなりと話し方を変える事が出来るだろう。

 良い意味で失礼なテリオスは、前世での後輩と少し重なっていた。


「それで、タクトは何をしに此処まで来たんだ?」

「あぁ、三国会談の護衛の下見だ」

「……さらっと、凄い事を口にするな」


 クローレは、俺に質問した事を後悔しているようだった。


「国王から俺に指名クエストが出ていてな。断れなかったし、仕方なしにだな」


 嘘ではない。


「しかし、流石ランクSSSですよね。国王から指名クエストが来るなんて」

「面倒だぞ」

「贅沢な悩みですよ」


 ルーミーは、若干酔っ払っているのか卑屈気味になっていた。


「三人はパーティーなのか?」


 リーダーであろうルーミーと、同世代のクオーレに年下のテリオスなので、パーティー以外考えられなかった。


「あぁ、そうだ。もう、随分と長く組んでいる」


 三人ともが、接近攻撃の装備なのが不思議だった。

 後衛職や回復職である治療士が居ない。エルドラード王国で別れたのだろうか?

 あまり詮索するのも良くないので、これ以上は聞かない事にしておく。

 それからも、他愛も無い話をしていると突然、ルーミーが酒の入ったジョッキをテーブルに叩きつけるように置いた。


「そうだ。俺があの時、判断を間違っていなければ、本当はランクAになっていたんだ!」

「ルーミー、昼間から呑みすぎだ。外で酔いを醒ますぞ」


 クオーレは俺に謝りながら、ルーミーを外に連れ出した。


「何かあったのか? 無理には聞かないが……」


 気になった俺は残されたテリオスに聞く。


「そうですね。実は……」


 テリオスは、一呼吸置いて話し始める。

 ルーミー達は、元々四人でパーティーを組んでいた。

 もうひとりの冒険者の名は『ルクラ』と言った。

 常に四人で討伐等の依頼を行っていたが、ランクAへの昇級試験へ向けて、ランクBでも難度高めだった『スパイクタートル』の依頼を受ける。

 通常であれば前衛職三人に後衛職が二人から三人のパーティーで挑むようなクエストだった。

 今迄、四人で難なくクエストを成功してきた事もあってか、今回も四人で討伐に出る。

 クエストは順調に討伐出来るかと思っていたが、思っていた以上にスパイクタートルの甲羅が硬く、なかなか致命傷を与える事が出来ないでいた。

 ルーミー達は重症ともいえるような傷を負っていたので、このまま討伐をするか、討伐を諦めて退却をするかの選択を迫られていた。

 しかし、甲羅から首が出た所をルーミーが攻撃をして大ダメージを与える。

 既に疲労困憊のパーティーだったが、この攻撃で倒せると思ったルーミーは退却をせずに追撃を指示する。

 その指示に従いスパイクタートルを追撃しようとした瞬間に、甲羅の棘が放たれてルクラに直撃して、ルクラは即死する。

 クオーレとテリオスも大きな傷を負い、全滅するかと思ったがスパイクタートルは攻撃をせずに、その場から去っていった。


「トラウマってやつか……」

「そうだと思います。エルドラード王国からオーフェン帝国に来たのも、それを忘れる為だったかも知れないですね」

「そうか、こればっかりは本人で解決するしかないよな」

「そうですね」


 人ぞれぞれが、色々な思いを抱え込みながらも模索しながら生きているのだと感じた。


「ここは、俺が払っておくからルーミーの所に行ってやれ」

「いいですか?」

「あぁ、今度奢ってくれればいいから」

「分かりました」


 テリオスは一礼して、ルーミーの所へ行った。


「シロは今の話を、どう思う?」

「そうですね。確かに判断ミスと言えば、そうかも知れませんが、あくまで結果論になるかと」

「そうだよな。もし、スパイクタートルが倒せれば判断は、間違っていなかったんだからな」


 一瞬の判断間違いが、今後の人生を左右する事はあるとは思うが、それは「もし」や「だったら」という仮定の条件だし、立証する事は出来ない。

 だからこそ、現実と直視して今出来る最善の事をするしかないのだと思う。

 ルーミーも過去に捕らわれ過ぎて、現在を犠牲にするような事は止めて欲しいと思う。

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