36話 ネーミングセンス!
コギアが聞きたい事とは、道を教えて欲しいという事だった。
正直、もっと大変な事かと思っていたので、安心した。
ドラゴンの住処に向かっていたが、道に迷っていたようだ。
途中までは、大きな魔力を目印に向かっていたが突然魔力が無くなった為、方向が分からなくってしまい途方に暮れていた所に、俺達が通りかかった。
……迷いの森の魔力って、旅の目印にもなっていたのか?
「なんなら、そこまで一瞬で連れて行ってやろうか?」
「いえ、方向だけ教えて頂ければ結構です。そこまでの旅が修行ですので」
【転移】での移動を提案したが、自分のみで辿り着くことが修行の様で断られた。
迷いの森までの方向を教え、もう少し行けば山が見えてくるので、それを目指せば良いと説明した。
コギアに何故、ドラゴンの住処にまで行くのかを聞いてみた。
蜥蜴人は、一定の年齢になると、一人前の男としての試練としてドラゴンの住処まで、ひとりで行きグランニールより証を貰い自分の集落に戻る。
そうする事で、集落の皆より一人前と認められ戦士と名乗る事が許される。
コギアの集落は、蜥蜴人の幾つかある集落で最も遠い為、かなり難易度が高く無事帰還する者も少なく年によっては、ひとりも戻ってこない年もあるらしい。
コギアの集落はその分少数精鋭で、集落自体の攻撃力は他の集落よりも高い。
その為、他の集落からも一目置かれている。
「そうすると、コギアの集落の男はモテモテなのか?」
「はい、他の集落からも縁談の話は多数あります」
即答かよ!
これが、モチベーションを上げている理由なのか?
モテ期が無かった俺には、羨ましい……。
今年は、コギアと他にふたりいるが別々に出発したので状況は分からないらしいが、コギアは一番に戻りたいと意気込んでいた。
やはり、仲間内でも負けたくない気持ちがあるのだろう。
早く戻った方が、よりモテるのか?
コギアとしては純粋に強くなりたいのかもしれないが、この世界に来てからより性格が悪くなったのか、俺は素直に物事が見られなくなっている気がする。
敬語が使えない事も多少は影響しているのだろう。
コギアは再度、方向確認してお礼を言い去っていった。
コギアも去ったので、先程気になった事を聞いてみる事にした。
「クロがガルプワンてことは、ガルプツーとガルプスリーも居るのか?」
「主! いかにも何故お分かりになりましたか!」
「……いや、なんとなく」
「流石でございます!」
こんな内容で、褒められてもあまり嬉しくないな……。
「名付けたのは、ガルプか?」
「はい、その通りです」
ということは、シロにもあったのか?
「シロは前はなんて名前だったの?」
「私は、『眷族その一』でしたよ」
神は、名前を適当に付けるのだろうか?
それともセンスの問題か……。
ネーミングセンスについては、あまりとやかく言えないな。
気にしても仕方がないので、考えるのは止めよう。