357話 コボルト達の処遇!
朝一番で宿を出て、ゴンド村でコボルト族のダック、コーギ、ルドックと合流をして、カルアと待ち合わせをしている王都に寄ってから、コボルトの奴隷場に行く。
コボルトの奴隷場に行くと、カルアの部下数人が出迎えてくれていた。
コボルト族が一緒だったのは意外だったみたいだが、普通に接してくれた。
奴隷場は、思っていたよりも綺麗になっていたので、カルアの部下が清掃してくれていたのだろう。
コボルト達は、見慣れない俺やカルアに対して、警戒心を持っていたが、ダック、コーギ、ルドックの姿を見つけると、駆け寄って嬉しそうに話をしている。
感動の再会だ!
カルアと部下に、討伐した時の様子を聞いてみる。
討伐した際に、中に居た者達は抵抗しても無駄だと思ったのか、すぐに降伏したという。
捕まった際に皆、奴隷だと話をしていて首には奴隷アイテムの首輪が付いていた。
しかし、奴隷契約は既に解除されていたか、最初から奴隷契約がされていなかったか分からないが、彼らの首輪には、外れないように細工が施されていた。
彼らも奴隷から解放された喜びか、涙を流して喜んでいたそうだ。
事情を聞いてみると、甘い香りがしたかと思い目を覚ますと既に首輪が付けられていて、奴隷だと言われてここで働かされていたそうだ。
……確か、ミクルも同じように甘い香りと言っていたよな。
この間の血瘴香も甘い香りだと、シロが言っていたし……もしかして、同じ香りなのか?
そうだとすれば、犯人はアマンダとランドレスになる。
人身売買の黒幕も、このふたりでは無いかと思う。
「その奴隷だった彼らはどうしているんだ?」
「はい、王都で生活が出来るように仕事を斡旋してます」
「そうか、それなら安心だ」
又、奴隷商人に売られたりしているようであれば、ルーカスに文句は言えないので代わりに、カルアに文句を言う所だった。
「ここは、今後どうするんだ?」
「さぁ、私には分からないわ。国王様や大臣達が決めるでしょうね」
「悪人に再利用されないようにしてくれよ」
「そうね、それだけは絶対に避けないといけないわね」
カルアと部下から説明が終わると、ダックが歩いて来た。
「どうした?」
「仲間の中に、人族がまだ怖い者居る。困った」
ゴンド村に行くのを嫌がっている者が居ると言うことか。
「ゴンド村の事、説明したのか?」
「うん、した。でも、上手く伝わらない」
確かに、言葉で「安心、安全」と言っても信用出来ないかも知れないな。
無理に連れて行っても、良い事はひとつも無い。
コボルト達の所に歩いて行き、俺なりの説明をする。
まず、不安になっている人族との共存だが、村にはドラゴンと魔王のアルとネロのふたりが住んでいる。
人族が悪い事をしたら、魔王が人族を叱る。逆に、魔族が悪い事をしたら、村で一番の責任者が魔族を叱る。
村で一番の責任者は、魔王程強くないが、本気で怒ると村に居させて貰えなくなるので魔族も困るから悪い事はしない。
だから、コボルト達に危害を加える者が居たら、魔王や他の魔族が叱るから安心して欲しい。
この説明で、伝わったか不安だが、ダックとコーギ、ルドック達が横で頷いたりしてくれているので、多少なりとも伝わったと思いたい。
俺の説明の後に、もう一度ダック達が説得していた。
最後は皆、多少の不安はあるが納得して、ゴンド村に来てくれる事になった。
コボルト族は、全部で十七人居る。
【転移】で二回に分けて運ぶ事にした。
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ゴンド村について、コボルト達を村の住民達に紹介をする。
ゾリアスから簡単だが村の規則を説明する。
「まぁ、最初だから緊張していると思うけど、徐々に慣れていってくれ」
ゾリアスが優しい言葉を掛けるが、コボルト達の緊張は解けないでいる。
仕方ないだろう。
ゾリアスの言葉通り、徐々に村に慣れていって欲しい。
「タクト!」
アルが俺に声を掛けてきた。どうやら、新しく建てている家を見せたいらしい。
案内されて行くが、ほぼ村の中央で、エリーヌ達の像の神祠がすぐ見える場所だった。
「この場所って、広場だったよな?」
そう、俺の記憶では村の人々が集まる場所だったはずだ。
こいつ等、俺が居ない間に強引に、この場所に建てたんじゃないのか?
「タクト殿、お帰りなさいませ」
村長が俺に挨拶をする。
一応、アル達の家の事を聞くが、この場所は村に住む人々から提供された場所らしい。
何でも、アル達が村の中央に居れば安心出来るとの理由と、俺が住むかも知れないので出来る限り神祠に近い場所の方が良いだろうという事で決まったそうだ。
「そうか、気を使ってもらって、すまないな」
「いえいえ、これくらいでタクト殿に少しでも恩を返せるのであれば、安い物ですよ」
村長は嬉しそうに話してくれた。
しかし、アルとネロの家は他の家とは作りが全く違う。
周りが平屋なのに、何故三階建てなのだ? 明らかに不釣合いな家だ。
しかも造りもしっかりとしている。 ジークにある家よりも丁寧な仕事だ。
「アル、誰に頼んで建てて貰ったんだ?」
「ちょっとした知り合いに頼んだ」
「だから、その知り合いって誰なんだ?」
「物造りと言えば、ドワーフ族に決まっているじゃろう」
「……ドワーフ族?」
「あぁ、あそこの鉱山の麓にあるドワーフ族じゃ」
アルの指差す方向は、俺の知っているドワーフ族の集落がある場所だ。
「その集落の長って、ラチスか?」
「おぉ、良く知っておるの! そのラチスと仲間に頼んだら、快く受けてくれたぞ」
……アルに頼まれたら、断れないだろうに。
「師匠~!」
家の窓からネロが手を振る。
「ネロが待っておるから、中に入るぞ!」




