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351話 浮つく気持ち!

 ユキノを城まで送り届けて、帰ろうとすると「少し休憩していかれませんか?」と、珍しくユキノから誘って来た。

 特に急ぎの用事もないので、「別にいいぞ」と返事をすると嬉しそうに笑う。

 ユキノに案内された先は、ユキノの部屋だった。

 流石にユキノの部屋に入るわけには行かないので、庭が見える場所に変えてもらう。

 使用人が飲み物を持ってきたので、礼を言う。

 ユキノは髪飾りと巾着袋のお礼のつもりなのだろう。


「たまには、ユキノの話でも聞かせてくれ」

「私の話ですか?」


 困った様子のユキノは、子供の頃からの話を始めた。

 王女ならではの話ではあるが、話し上手なのか飽きずに聞く事が出来る。

 以前に、アスランから聞いたユキノの子供の頃の話とは違っている所もあったが、それぞれの主観の違いだろう。

 話を聞く限り、王女と言う事を除けば、普通の女性だった。

 アスランにヤヨイと仲の良い兄妹達。

 魔族により騎士や、街民が傷つく事を話す時は辛そうだった。

 嬉しそうに話をして、自分の失敗等を話した後は、恥ずかしそうにしていたりする。

 俺から見ても美人だし、性格も天然が少し入っているが悪くはない。

 俺に好意を寄せてくれている事も分かっているが、俺には恋だの愛だのという感情が無い。

 感情が欠損している事を自覚してからは、ユキノの好意に対して、どのように応えれば良いのかが分からないでいる。

 申し訳ないという気持ちがある事だけは、分かっている。


「昔から、変わっていないんだな」


 ユキノの話が一区切りついたところで、感想を言う。

 自分の昔の事を俺に知って貰えたのが嬉しいようだ。

 アスランが俺達を見ている事に気が付いたので、ユキノとアスランに向かって手を振ると、アスランも手を振り返してきた。


「そろそろ、戻るか?」

「はい、今日は有難う御座いました」


 ユキノは俺に向かい丁寧に礼を述べる。

 折角なので、ユキノを部屋まで送り、扉の前で【転移】を使い別れた。


 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 



 部屋に戻り、トランプの柄を考えることにする。

 四つのマークは『火』『水』『風』『土』が分かるものにするのは決めていた。

 問題は、『K』『Q』『J』『A』だ。

 本当であれば、国王であるルーカス達王族を使う事が良いのだろうが、勝手に使って良いかさえも分からない。

 もし政治的な物と勘違いされれば、遊び道具としての価値が無いの同じなので、数字に変更することにした。

 これで子供達も数字に慣れ親しんでくれればと思う。

 問題が『ジョーカー』だ。

 悪魔とか魔族を印象付けるような物は、絶対に出来ない。

 反対に可愛らしいものにしたいが、思いつかない。

 仕方ないので『×』と大きく書いたものをジョーカーにする事にする。

 なんとなく味気ない感じもするが、最初はこんなもので十分だろう。

 遊び方は色々とあるが『ババ抜き』が一番親しみやすい遊びだろう。

 『神経衰弱』や『七並べ』等も出来る。

 問題は、スキルを使って不正をする輩だ。

 【透視】等のスキルが使えないようにしておく必要があると思うが、今後の話だ。

 今は、遊べればそれで良い。

 アルやネロも、そこまでして勝ちに拘らないと信じたい。


「御主人様、楽しそうですね」

「そうか?」


 知らぬ間に、笑っていたようだ。


「新しい遊び道具が、手に入るからシロも一緒に遊ぼうな」

「はい!」


 シロも嬉しそうに返事をする。


 扉を叩く音がしたので、シロが「どうぞ」と言うと、マリー達従業員が皆で部屋に入ってきた。


「……どうした、問題でも発生したか?」

「確かに問題だわ」


 来週に行くルンデンブルクへの社員旅行で、寄る店が決まらないという事らしい。


「そんなに皆、バラバラなのか?」


 お互いが顔を見合わせながら、苦笑いしている。

 どれもひとつに絞れないので悩んでいると言っている。


「そんなの、全部行けばいいだろう? 何を悩んでいるんだ」

「……ひとつだけじゃないの?」


 フランが驚いている。


「俺が一か所だけって言ったか? まぁ、金貨も俺が出すから好きな所に行って好きなだけ食べろ!」


 従業員一同、喜びのあまり大きな声を出す。

 確かに、詳細な事は伝えていなかった。

 マリー達には、出来るだけ固まって行動して貰うように伝える。

 迷子にでもなって、厄介事にでもなったら大変だからだ。

 上機嫌な従業員達は、俺の言葉もそっちのけで行く店を再度確認し始めた。


「ところで、トグルはどうした?」

「あぁ、二階でザックとタイラーに何か教えていたわよ」


 マリーが答えるので、この場はシロに任せて俺は、マリー達を残して二階のリビングに行く。



 二階に行くと、トグルがザックとタイラーを相手に太刀筋の確認をしていた。

 ここでも修業とは感心だ。

 俺が部屋に来た為か、修行を中断したので「そのまま続けて良い」というが「今、終わったとこだ」と返ってきた。


「トグルも旅行行くんだろう?」

「……いや、俺は遠慮しておこうと思う」


 トグルが断るが、ザックとタイラーがそれを許さないでいる。


「弟子達も、こう言っているんだから、弟子の為だと思って来いよ」

「……分かった。今回だけだぞ」


 渋々、承諾する。

 ザックとタイラーに、上で旅行の食事する所を決めていると言うと、部屋を飛び出していった。


「あれからリベラと、どうなんだ?」

「ん、まぁ、その、あれだ」


 何を言っているのか分からないが、相変わらずギクシャクした関係なのだと分かった。


「リベラも新しく店主になったばかりだから、支えてやってくれよ」

「……あぁ」


 色恋事なので、俺から助言出来る事は何もない。


「誰かに相談したのか?」

「出来る訳無いだろう!」


 トグルの交友関係が分からないので、何とも言えないがシキブやムラサキには相談しない方が良いのは分かる。

 あと残るは……。


「イリアに相談してみたら、どうだ?」

「イリアさんか……あの人、怖いからな。どちらにしろ、俺自身の問題なのは分かっているから、もう少しだけ気持ちを整理する」


 青春だな! と思うが、トグルがこのまま時間を費やすだけな気もした。

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