341話 初代国王の秘密!
王家とルンデンブルク家には通行証を製作して問題無いかを確認して貰うと、問題無く皆が扉から扉に移動出来た。
「マリー達は、何がいい?」
「そうね……」
マリーが考えていると、ダウザーが「ルンデンブルク家の紋章」を授けると言ってきた。
「気持ちは有難いが、それは困る。ダウザー達とは懇意にしているが、もし反勢力に目を付けられると面倒な事になる」
「そうですね、お気持ちだけ頂いておきます」
俺とマリーは、ダウザーの申し入れを断る。
とりあえず、四葉商会としては、四葉マークをあしらった装飾品を作り、それを通行証にする事にした。
俺が発注担当になるが、仕方ない。
ゴンド村への扉、俺の部屋への扉も一組ずつ製作する。
全ての扉が正常かを確認して貰うが、異常はない。
護衛三人衆も、王家の紋章を持っているので、通行証として使えるようにしておく。
ルーカス達家族が使用する部屋の奥に扉を設置するが、部屋に合っているので違和感が無い。
それから、ダウザーを連れてルンデンブルクのダウザー達家族が過ごす部屋に転移扉を設置する。
俺への部屋とゴンド村は別に後でも構わないので、先に王都の使われていない部屋に扉を設置しようかと思ったが、好きな所を使ってよいと言われた為、場所選びに困った。
出来る限り人の出入りが無い場所の方が良い。
困った時の【全知全能】だ。
幾つかの条件を出すと、数部屋が該当すると言われる。
使われていない地下の部屋があると言うので、ルーカスに聞くと知らないと言う。
とりあえず「行ってみてもいいか?」と聞くと、皆で行く事になった。
【全知全能】に聞きながら、城の中を進んでいく。
複雑な廊下を進んでいくと、行き止まりになる。
左側の壁の下の方に、汚れている箇所があるので、そこを押してみると行き止まりの壁が開き、下に行く階段が現れた。
「……なんだ、この階段は?」
ルーカスが驚いている。ルーカス達誰もが知らない仕掛けだったらしい。
「進んでいいか?」
一応、城主でもあるルーカスに聞くと、俺が先頭で進むように言われる。
危険があるといけない為、とりあえず俺が様子を見てくると言ったが、ルーカスがアスランと同行すると言うので、シロを呼びカルアとふたりで護衛をさせる。
鑑定する事もあるかも知れないとターセルも一緒に行くようにルーカスが言うので、仕方なく六人で進む事にした。
【光球】で辺りを照らして、階段を下りる。
特に罠などもなく、階段が終わる。
一本道を進むと、扉があるので開けると埃が舞う。
長い間忘れられた空間だった事が分かる。
幾度となく破壊されたであろう城に、このような部屋が残っている事が信じられなかった。
広い部屋の中央には机と椅子が、そして机の上に本が置かれていた。
本の表面の埃を手で払うと、表紙に文字が書かれていた。
達筆なのか、字が汚いのか分らないので、表紙全体の埃を払う。
「……フレッド・エルドラード」
ターセルが本を鑑定して、持主の名を言う。
「フレッド・エルドラードだと!」
ルーカスがその言葉に聞き覚えがあるのか、驚いている。
アスランも同様だった。
『フレッド・エルドラード』とは、ルーカス達王族の先祖で、エルドラード王国最初の国王で、伝説の国王とまで言われた人物だそうだ。
一度は世界をひとつに出来る程、勢力的に領地を拡大していたが突然、侵略を止めてしまった。
原因は、各地で原因不明の敗北や、フレッドの体調不良な等、色々と噂されていたが本当の理由は誰も知らされず、国王を退いて間もなく亡くなったとルーカスが説明してくれた。
「その伝説の国王の物で間違いないのか?」
ターセルに聞くと、間違いないと言われた。
ルーカスに渡すと、すぐに本を開き読み始めた。
王族に関係する事であれば関係の無い俺が聞くのは、変だと思い部屋を出ようとするとそのままで良いとルーカスが言う。
ルーカスが一通り読み終わると、アスランに渡す。
アスランが読み終わり、ルーカスは本を受け取ると俺に、読めと本を差し出す。
何故、ターセルやカルアでは無く俺なのだとも思いながら、本を受け取り読むことにする。
これは私、フレッド・エルドラードの秘密を記した物だ。
私は、神ガルプ様により他の世界より転生してきた。
転生とは、前世の記憶を持ったまま、生まれ変わる事。
私はガルプ様より、この世界をひとつにする事と、ガルプ様の名をこの世界に轟かせる事を命じられて、今日まで生きてきた。
前世での知識を活用しながら、この世界でいち貴族の息子でありながらも、国を立ち上げる事に成功した。
しかし、国を大きくしていく過程で、私の他にもガルプ様よりこの世界に来ている者が数名いる事が分かった。
しかも何故か私に協力せず、私の目的を邪魔をする者達だ。
その者達は、異様な能力で私の侵略を阻止する。
戦争の最前線で奴等の戦いを見たが、今の私の力では到底、奴等には敵わない。
その者達は、ガルプ様の使命に従わず好きに生きていた。
私が最初の転生者とガルプ様より聞いていたが、違っていたようだ。
私は、私より先に転移した者よりも劣る能力なので、この世をひとつにする事は出来ない。
使命を諦めるしかない。
それよりも、私自身がガルプ様より劣化した能力しか貰えていなかった事実が悔しい。
このエクシズという世界は、所詮ガルプ様の実験世界なのだろうか?
魔族と人族。その区分けをしたのは一体誰なのだ?
ガルプ様への不信感が、日に日に増していく。
この事は、王妃にも皇太子にも話す事は出来ない。
【恩恵】でこの部屋を秘密裏に作り、誰にも言えない事実をここに記す。
これを読んでいるという事は、この部屋を発見した者だろう。
まず、自分の周囲に異常な強さを持っている者が居るなら、その者に注意をする事だ。
ガルプ様により異世界から転生された者の可能性が高い。
転生の他にも、転移と言って赤ん坊でなく少年や青年の姿で、この世界に来る者も居る。
姿形に惑わされては、いけない。
私は、この世で憎むべき存在の者達を六人選び、『魔王』という称号を与え、全ての種族から憎むべき存在にする事に成功した。
魔王というだけで、人族や魔族は恐れて魔王の周りを離れていくだろう。
孤独を知り、更に敵を増やすがいい。
魔王を六人選んだのには、もうひとつ理由がある。
いずれ魔王同士が戦い、最後のひとりになった時にこの世の終わりが訪れる。
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その瞬間に立ち会う事が出来ないのが、とても残念だ。
私が築いたエルドラード王国が、その時まで繁栄している事を願う。
初代エルドラード王国国王 フレッド・エルドラード
ここで終わっていた。
途中、汚れと劣化で読めない箇所があったが、初代国王が転移者なのは意外だった。
しかし、この内容だと明らかに俺が疑われる。
だからこそ、ルーカスも俺に本を渡したのか?
「初代国王の秘密か?」
「……タクトは転生者なのか?」
ルーカスが真剣な顔で聞いてくる。
本を読めば、当然の事だろう。
「いや、俺は転移者だ。神もガルプでなくエリーヌだ」
カルアとシロは既に知っているので驚かなかったが、ターセルも驚いた様子が無いので鑑定で既に知っていたのかも知れない。
「……目的は、この世界の破壊か?」
「違うな、全く逆だ。この世界をより暮らしやすい世界にするのが俺の使命だ。そのついでにエリーヌという神を広めている」
俺の言葉に、ルーカスは安心した表情を浮かべる。
「お主が、異常なまでに強い理由が分かっただけだったな」
「この事は、出来れば秘密にしておいて欲しい」
「勿論だ。転生者や転移者等の存在が広まれば、世界が混乱する」
アスランも秘密にしてくれる事を約束してくれた。
「カルア、この本を燃やしてくれ」
カルアに本の焼却を命じる。
何かの拍子で、この本の存在が知られる事を恐れての事だろう。
カルアが火属性魔法で、本を焼く。




