33話 それぞれの事情!
まず、シズが話し始めた。
リズが時折、補足する。
シズとリズは、山に囲まれた村に生まれた。
その村では双子は『忌み子』として扱われる。
故意に殺すと殺した者に災いが起きる為、死なない程度の食事を与えられていた。
両親もシズ達を嫌った為、村で隔離をして家畜の世話等をさせられ育った。
通りがかった奴隷商人に目を付けられて、厄介払いの為売られたそうだ。
モモは、天候不順による飢饉が村を襲い、口減らしの為に数人まとめて奴隷商人に売られた。
モモ以外にもゴブリンにさらわれたが、生き残ったのはモモだけだ。
待機所にはこの中で一番長く居たらしく、もう死ぬ覚悟は出来ていたみたいだ。
マリーは話すのを躊躇っていた。
「無理に話さなくていい」と言ったが、覚悟を決めて話し始めた。
マリーは商人の娘で、幼少時代はかなりお嬢様扱いされて育った。
しかし、父親の事業失敗により借金のカタとして、奴隷商人に売られた。
それなりの美貌なので、一度は買われたが御嬢様育ちだった為、失敗ばかりで役立たずと判断され再度、売られた。
「ありがとう」
辛い話をしてくれた四人に礼を言う。
やはり、人身売買は気分が悪い。
この先、奴隷商人に会ったら嫌悪感しか抱かないだろう。
嫌悪感で収まれば良いが、それ以上の感情を抱いた時に俺はその感情を抑えられるだろうか。
「大丈夫ですか?」
余程険しい顔をしていたのか、モモが話しかけた。
「あぁ、悪い。何でもない」
奴隷商人に売られると、売買取引の際に契約成立で仲間登録をリセットされてしまうので、助けを呼ぶ事も出来なくなる。
今までの人間関係を全て無くしてしまうという事か……。
人族に関して売買契約者は、本人や家族もしくは血縁者に限られる。
一部の獣人や魔族に関しては、奴隷アイテムでの契約になる為、合意なく奴隷にする事が出来る。
なるほど、だからゴブリンに捕まった時に、連絡が出来なかったのか
「お前たちの奴隷契約はどうなるんだ?」
契約書に効果があるのであれば、今も奴隷のままだ。
契約者死亡による解除が可能であれば、彼女達は自由になる。
それだと、奴隷は契約者を殺せば、自由になる。
「奴隷商人が、殺されたので自由です」
モモが答えてくれた。
その後、マリーが『奴隷が契約者を殺す事はもちろん、傷をつける事も出来ない』事を補足した。
【全知全能】で奴隷契約について確認した。
・契約。契約書での契約合意もしくは、奴隷アイテム等の装着。
・譲渡。契約者と新たな契約者との取り決めにて可能。
・解約。本人と奴隷両名による解約合意。契約者の死亡。
尚、契約者が死亡した場合は自動的に解除になる。
これで大体の奴隷契約については把握した。