表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

338/942

337話 商人と職人!

「……どうしても駄目ですか?」

「駄目だ」


 ユキノはフランやマリーを見るが、ふたり共目を逸らしている。


「孤児院だけの約束だっただろう。約束を守れないなら、もう連れて来ないぞ!」

「……分かりました」


 俺から見ても気の毒なくらいに、ユキノが落ち込んでいる。

 だが、王女であるユキノをドワーフ族や、アラクネ族と会わせるわけにはいかない。

 それは、フランやマリー達も分かっているので、何も言ってこない。

 ユキノ自身も我儘だと承知しているので、俺が仕事関係なので駄目だという理由も理解している筈だ。

 とりあえず、フランは仕事があると言うので別れてから、ユキノを送ってドワーフ族の集落に行く。


「ここ、何処?」


 マリーは初めてドワーフの集落を訪れる為、かなり警戒している。

 入口にいるドワーフに挨拶をして、族長のラチスを呼んで貰う。

 数分後、ラチスとステーが歩いてくるが、見知らぬ女性が隣にいる為、こちらも警戒している。

 俺が、お互いを紹介する。

 マリーが今後は、指輪の調達等を担当する事を伝える。

 ラチスは、誰であろうが俺の紹介なら問題無いと嬉しい事を言ってくれた。

 指輪は出来ていると言うので、ラチスの家に行く。


「まさか、ドワーフ族に製作を依頼してたとは驚いたわ」

「因みに、フランのカメラもそうだぞ」

「……あいかわらず、凄い事を普通のように話すわね」

「凄いのは、ドワーフ達で俺じゃないぞ」

「……もう、いいわ」


 マリーは頭を抱えていた。

 ラチスの家に着くと、製作し終わった指輪を出す。

 俺は【アイテムボックス】から酒瓶を出して、お互い交換する。

 マリーには、指輪の報酬は金貨でなく酒瓶だと伝える。


「私からもいいかしら?」


 マリーが、ラチスに質問をする。

 まず、他のデザインでも製作が可能か? その場合は、五十個単位になる。

 次に、指輪以外の腕輪等も可能かだった。

 ラチスは共に、問題無いと回答する。


 ラチスに、転移魔法で自由に往来が出来る小屋を設けて欲しいと頼むと、あっさりと承諾してくれた。

 場所は、指輪を製作しているトブレの傍に好きに立てれば、良いと言ってくれた。

 ラチスに礼を言って、トブレの工房に向かう。


「久しぶりだな。ところで、隣の綺麗な女性は誰だ?」


 トブレにマリーの事を紹介してから、トブレをマリーに紹介する。


「困った事があれば、トブレに相談すればいいぞ」

「あいかわらずだな。おぉ、そうだ!」


 何かを思い出したように、突然立ち上がり奥から弓と盾を持ってきた。

 どうやら、クラウドスパイダーで作った弓とドラゴンの鱗から作った盾のようだ。


「弓が完成したのか?」

「あぁ、タクトのおかげでな。但し、弓矢を引くには相当な力がいるぞ。引いてみるか?」


 折角なので弓を引かさせてもらう。

 手に取ると見た目よりも全然軽い。弓を構えて引いてみる。

 簡単に引ける。その様子を見てトブレは驚いている。


「タクトを俺の基準で話をした俺が馬鹿だった……」

「その気持ち、よく分かります」


 何故か、トブレとマリーは意気投合している。


「それ、お前にくれてやるから持って行けよ」

「はぁ、やっと完成した武器じゃないのか?」

「出来る事が分ったから、もう必要ない。そっちの盾も同じだ」


 ……技術が証明されて完成された物には興味が無いようだ。


「有難く受け取っておくが、報酬は何がいいんだ?」

「ドラゴンの素材を先に貰っているから、これ以上はいらん」


 トブレが頑固なのは知っているので、これ以上は言うのを止める。


「それと、別の頼み事がある」

「なんだ?」

「トブレの横にある空き地に、小さな小屋を建てていいか?」

「別に構わんが、何するんだ?」


 トブレに、転移扉の事を説明すると、目を輝かせていた。

 研究者も職人も、ある意味子供のように純粋なのだと思った。


「分かった。俺が立派なのを建ててやるから安心しろ」


 別に立派でなくても良いのだが……

 トブレは早速、外に出て小屋の大きさを聞いてきたので、マリーに任せる。

 まず、転移扉の位置を決めてから、小屋の大きさを決めて小屋への出入口になる扉の位置。

 最後に高さを決めていた。

 ふたりのやり取りを見ていたが、無駄が無く次々と決めていった。

 転移扉は、用意してあるというが統一性が無くなるとして譲らないので、俺が諦める事にした。

 枠と扉を先行で二組作ってくれるように頼むと、トブレは大きく頷く。

 マリーとトブレ、お互いの連絡先を交換してもらう。

 余程の事が無い限り、マリーが対応してくれると伝える。


「タクトにそこまで言わせるとは、マリーは凄いな。タクトの恋人か?」

「いいえ、違います。私にも選ぶ権利があります」


 ふたりして俺をネタにして笑っていた。

 マリーとトブレの良好な関係を築けて、俺も安心をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ