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333話 大事な時に……!

「本当にもう、どうして連絡取れないのよ!」


 部屋に入ると俺の顔を見るなり、マリーに怒鳴られる。

 どうやら、ロッソのダンジョンに入って三日経っていたようだ。

 何度も【交信】したが繋がらなかったそうだ。

 ロッソのダンジョンは【交信】を妨害する罠でもあったのだろう。


 一応、事前にロッソの所に行く事は、マリーに伝えていた。

 三日も音信不通だったのは俺の勝手なので良いらしいが、ミラから王都に発注していた扉が出来たと連絡が来たり、『ブライダル・リーフ』の指輪が在庫少ないので発注したいだの、アラクネ族のクララからは服を取りに来いだの、孤児院の建築についての問い合わせ等と、色々な問題事があったそうだ。

 大事な時に連絡が取れない事に対して、怒っているみたいだ。

 確かに、転移魔法を使えないマリーにとっては、どうしようも出来ない事ばかりだ。

 とりあえず謝罪をして、マリーには少し落ち着いてもらう。

明日、扉の件で連絡する事とクララや指輪の発注場所に同行してもらう事を伝える。

 扉の件で王都に行く際も、ルーカス達に会うが同行してもらうようにと伝えると、マリーは大きな溜息を吐きながらも「分かったわ」と返事をする。

 マリーには、四葉商会副代表としての挨拶も兼ねている。


 孤児院の件は、リロイに直接聞いてみると、孤児院の名前が決まった事と六割程出来たので一度見て欲しいという事だった。

 明日はリロイが昼から用事がある為、朝一番に新しい孤児院前で待ち合わせをする事にした。

 リロイとの連絡を終えると、『ベリーズ』のルリに連絡をして、明日一緒に新しい孤児院の見学を申し出ると、シュカと一緒に来ると返事を貰う。


「フランは、どうしたんだ?」

「タクトが依頼した写真の転写で疲れたからって、もう寝てるわよ」


 俺の依頼した写真という事は、シロに依頼した魔物の写真だろう。

 どれくらい取れたのかを、シロに聞くと七十種類くらいと答えた。

 簡単に計算しても、七十匹を三日で割ると一日二十五匹弱くらいの数を撮影していた事になる。

 俺の予想よりもかなり早い。その分、転写をするフランの疲労も溜まってしまう。

 完全に俺の計算ミスだ。

 頑張っているシロには申し訳ないが、フランの【転写】が追い付かないので、もう少しペースを落とすように頼む。

 シロが優秀過ぎる贅沢な悩みだ。

 明日の朝は、フランにも孤児院に同行して欲しかったが、伝えられないのは仕方ないと諦める。


「それで、タクト。扉は何処に付ける気なの?」


 マリーに言われて、思い出した。


 扉の設置場所を考えていなかった。

 『ブライダル・リーフ』に設置する扉は、『蓬莱の樹海(アラクネ族)』『ドワーフの集落』『魔法都市ルンデンブルク(ダウザー家族)』『ゴンド村』の四つだ。

 そのうち王都との扉も必要になるかと思いながらも何処に取り付けるかを悩む。

 消去法で行けば、俺の部屋を改装するしか無い。

 カルアの【結界】とは別に、部屋自体にも【結界】を張れば警備の問題だろう。

 打ち合わせも、そこで行えば良い。


俺の部屋を改装して、打ち合わせも出来る部屋にする事を伝えると、俺は何処で生活するのかと聞かれる。


「そうだな、マリーの向かいでユイの隣の部屋が空いているからそこを使う」

「四葉商会の代表が、あんな狭い部屋でいいの?」

「別に構わないぞ。 部屋にいる時間の方が少ないからな」

「まぁ、タクトがそれで良いなら別に良いけど……」


 マリーなりに気を使ってくれているのだろう。


「あっ、それと言われていた旅行の件だけど皆、早く行きたいと言っていたわよ」

「予約はどうなんだ?」

「そうね、七日後の八組が最後ね。その次の予約は十五日後にしてるわ」

「八組って多くないか?」

「えぇ、でも皆が旅行に行けるならって、無理やり早めの予約を入れたのよ」


 だから、フランは疲労困憊なのだと思ったが、その頑張りに答えなければならないと感じた。

 皆が楽しんでくれるように、ダウザーに相談をして予定を組む事にする。

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