323話 寄生魔獣!
ゾンビウルフとの戦闘を終えて、進んでいると異様な集団と対面する。
全身包帯姿の『マミー』だ。
俺を見つけても歩いてくるだけで攻撃を仕掛けてこない。
横に逃げ道と思われる道とその少し先に扉があるので一旦、そちらに行く事にする。
明らかに罠だと分かっているが、扉を開けて部屋に入り扉を閉めると鍵が掛かる音がした。
部屋に閉じ込められた。
部屋自体が暗い為、【光球】を使い部屋全体を照らすと、意外と大きい。
部屋の奥には宝箱を数個発見するが、その周りには五匹の大型蛇が居る。
【神眼】で魔獣を鑑定すると『ダークヴァイパー』だった。
以前に討伐した『グリーンヴァイパー』の仲間のようだ。
牙から毒を噴射してくるので避ける。
俺自身は、ユニークスキル【全属性耐性】がある為、毒は無効化出来るが気分的に直撃は避けたい。
とりあえず【風刃】を使い、ダークヴァイパーを切り刻んでいく。
ダークヴァイパーは知らぬ間に俺を囲む程の数になっていたが、それよりも速く切り刻んでいく。
「しかし、この臭いは……」
毒と血が入り混じった気分が悪くなる臭いだ。
ダークヴァイパーを解体して【アイテムボックス】に仕舞い、部屋全体に【浄化】をかけて綺麗にする。
目の前には、怪しすぎる宝箱だ。
【神眼】で鑑定すると、ふたつ共【ミミック】だった。
……普通は、どちらかが本当に宝が入っていると思うが、完全にこの部屋に入った者を始末する気なのだろうか?
ミミックと分かりながらも宝箱の蓋を開けると宝箱から牙が生えて襲ってきた。
蓋(上顎?)と本体(下顎?)を手で押さえてそのまま引き裂くと、ミミックは動かなくなった。
それと同時に牙も無くなり、普通の宝箱に戻っていた。
手のひら程の芋虫に似たものが、宝箱の陰に隠れるのを見つけたので宝箱を蹴飛ばして姿を確認する。
隠れる場所が無くなった芋虫は丸くなり動かないでいる。
「なんだこれは?」
不思議に思い、【神眼】で鑑定すると『ミミック』だと分かった。
……意味が分からない。
仕方ないので、【全知全能】にミミックについて聞いてみると、ミミックは『寄生魔獣』で色々な物に寄生するそうだ。
特に獲物が興味を持ちそうな物に寄生する傾向が強いらしい。
「成程な! 寄生する魔獣か、そんなものも存在するのか」
感心していると、大事な事を思い出した。
そう、シロに頼んでいる魔物の写真の事だ。
俺も討伐しながら出来る限り撮るつもりでいたのを、すっかり忘れていた。
ゾンビウルフは戻って撮るとして、とりあえず目の前のミミックを撮る事にする。
丸くなっている姿を撮っても面白くないので、指で弾いたりして姿を変えようとしてみるが、丸くなったまま一向に変わる様子が無い。
仕方ないので、もう片方の宝箱を開けると、牙が生えて襲ってくるので丸くなったミミックを宝箱の中(口の中?)に放り込む。
食事だと思った宝箱のミミックは仲間のミミックをそのまま食している。
俺はその姿を撮影する。良い写真になったかは分からないが、【転写】してからのお楽しみだ。
宝箱のミミックを拳で破壊して、ミミック本体が出てきた所を【火球】で焼き殺した。
部屋を見渡すが他に何も無いので、鍵が締まった扉に手を掛けると、手を掛けた所から牙が生えて俺の手を食い千切ろうとする。
……コイツは、扉に寄生したミミックか?
面倒臭いので、食い千切ろうとした手で【火球】を使うと、一気に扉全体に火が燃え移る。
数秒の間扉自体が動いていたが、動きが止まると同時にミミック本体が出てきたので、逃がさずに【火球】で仕留める。
寄生魔獣の恐ろしさを痛感した。
これがダンジョンでなく、街の中であれば気付く者は少なく、気付いたとしても回避するのは容易ではない。
街で不可解な事件が発生したら、ミミックの可能性もある。
とりあえず、寄生魔獣の恐ろしさを覚えておく。




