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316話 夜の街!

 夜も更けてきたので、第三柱魔王のロッソに会いに行く前に、ジークに一旦戻る。

 ランクSSSの冒険者だと、街の皆にも少しづつ知れ渡ってきたのか、声を掛けられる事が多くなった。

 大体、声を掛けてくる奴は俺を利用したいだけなのではないか? と、勘繰ってしまう。

 色眼鏡で見ては駄目なのは分かっている。

 俺個人でなく、冒険者ギルドにも多少、問い合わせあるみたいで、シキブにも迷惑を掛けているがシキブは、それもギルマスの仕事だと割り切ってくれているので、助かっている。

 冒険者であり、商人でもある俺をどうしても取り込みたい連中は、あの手のこの手を使ってくる。

 その中に、内容を聞く限り遊郭だと思われる店に誘う奴等もいる。

 情報収集には良いかも知れないが行った事が知れると、四葉商会の従業員達が五月蝿そうなので、思い止まる。

 夜の街を歩いていると、客引きをしている女性からも声を何度も掛けられる。

 呑むくらいなら問題無いと思い、歩いて来た酔っ払いに、ジークでオススメの呑み屋を尋ねると『ベリーズ』と答えるので、場所を聞き『ベリーズ』に向かう。

 店の前には、何人かの女性が立って客引きをしていた。

 ひとりの女性が、俺に気付くとこちらに歩いて来て客引きをして来た。


「ひとりだが、いいか?」


 一応、ひとりなのを伝えると「大丈夫よ!」と笑顔で答えてくれた。

 女性は『ルリ』と言い、店でも二番目に偉いそうで、少しくらいはサービスしてくれると、営業トークをされる。

 ルリに案内されて店内に入ると、入口の横には用心棒だろうと思われる屈強な男性ふたりが立っていた。

 冒険者ギルドで何度か見た事のある顔だったので、冒険者なのだろう。

 店内を見渡すと八割方席が埋まっていて、皆楽しそうに呑んでいる。

 女性の数も、客と同等かそれ以上いる。

 これだけのキャストを揃えるとなると、それなりの報酬が発生する筈だ。

 俺も前世で、接待やらで何度もキャバクラやら、スナックに行かされて潰れるまで呑まされた経験がある。

 その際に、キャストの子達から色々と聞かされた。

 ルリに案内された席に座ると、ルリも隣に座る。


「ルリが相手してくれるのか?」

「あら、私では不満かしら?」


 ふざけるような仕草で話す。


「いや、聞いただけだ。別に不満もない、お詫びに飲物頼んでいいぞ」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに、飲み物を近くにいる女性に頼んでいた。

 飲み物が届くと、ルリと乾杯する。


「噂のタクトさんと、飲めるなんて光栄ですわ」

「俺の事、知っているのか?」

「勿論ですよ。冒険者ギルドや商人ギルドの伝説や、ロード討伐のパーティーの一員。私達の間で知らない人は居ませんよ!」

「……伝説って何だ?」


 ルリによると、僅か二日で冒険者ギルドと商人ギルドの昇給試験を次々と合格した事。

 冒険者ギルドでは、冒険者達と勝負して全員に勝ったうえ、戦った冒険者達に食事や酒を奢る豪快さ。

 王都では、冒険者最高ランクであるランクSSSにも合格して、ユキノ王女似の可愛い彼女が居るそうだ。

 大きくは違っていないので安心した。

 噂というのは尾ひれがついて、どんどんと大きくなって真実とは全く違う話になっていたなんて事もある。


「有望株の冒険者だから、彼女が居ても関係無く狙っている女性は多いわよ」


 明らかに金貨狙いだろう。

 それに、ユキノ似の王女はユキノ本人だし、彼女でも無い。


「タクトさん、うちの店主が挨拶したいそうなのですが、良いですか?」

「別にいいぞ」


 俺が返事をすると、手を上げて店の奥にいる店主に合図を送ると、店主が俺の席ではまで来て挨拶をする。


「この店の店主『シュカ』と申します』


 シュカは、丁寧なお辞儀をして、俺の対面の席に座る。

 シュカがママで、ルリがチーママだと理解した。

 店自体は、スナックみたいな感じだった。

 もしかしたら、時間を経過していくと時間制限の無いキャバクラが、正しい例えかも知れない。


「いくつもある呑み屋から何故、当店にお越しを?」

「歩いている酔っ払いに、この街一番の呑み屋と言ったら、この店の名を言ったから来ただけだ」

「そうでしたか、それで実際にお越し頂いてどうでしたか?」

「まだ、詳しくは分からないが良い店だと言うことは、分かるな」

「ありがとうございます」


 これで料金が高いようであれば、一気に俺の評価は下がるだろう。


「客層は、どんな感じの奴が多いんだ?」

「そうですね、ウチの店は比較的安いので、色々なお客様がお見えになりますね」


 商人や、冒険者など関係無く何度も足を運んでくれる客がいるので、有り難いそうだ。


「あちらのお客様は、ここ何日か毎日来て頂いております」


 シュカの目線の先には、中年のオヤジがいた。

 身なりから、金持ちには見えない。


「なんでも娘さんが、大通りにある『ブライダル・リーフ』の店主らしくて、ウチの女の子達にも指輪欲しいならあげると言ってますよ」


 ブライダル・リーフの店主が娘? つまり、マリーの父親ということか?

 マリーは、父親の借金のカタで奴隷になったと言っていたが……

 考えられるのは偽物か、別れている間に商人として再起して戻ってきたかのどちらかしか無い。


「あの客の詳しい情報を教えてくれないか?」

「それは、出来ませんね。まぁ、女の子が勝手に話すのは、店として関与しませんけどね」

「……分かった。あの客のお気に入りの子を、ここに呼んでくれ」

「何人か居ますが、全員ですか?」


 何人も居るのか!

 取り敢えず怪しまれないように、ひとりづつ呼んでもらう事にする。

 最初の女性が来ると同時に、店主のシュカは挨拶をして去っていった。

 女性達に話を聞くがシュカの言う通り、ここ最近は毎日のように顔を出していると言う。

 妻に先立たれて、生き別れになった娘にも最近出会って幸せだが、寂しいと女性達を口説いているが女性達は皆、軽く受け流しているそうだ。

 【神眼】で確認すれば、簡単に分かる事だがユニークスキル持ちだと面倒なので、クロに監視をして貰う事にした。

 話を聞かせてくれた女性達には、支払いとは別に金貨を礼として渡すと、笑顔で皆去って行った。

 ルリには、何かあれば又教えてくれるように頼む。

 クロに任せているので情報交換の必要は無いが、ルリから連絡先の交換を頼まれたので「営業の連絡をしない」と約束をしたうえで、連絡先を交換した。

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