299話 冒険者ギルド高ランク昇級試験-1!
冒険者ギルド昇級試験の日になる。
受験者は俺だけだった。意図的では無いかとも思ったが、受験者が居ない事は良くある事らしい。
俺のように一回の試験で、一気にランクを上げる者は今迄居なかったので、筆記試験は無駄を省く意味も含めてランクSSSまで全て行う。
筆記試験官は、ヘレンだったので特別待遇は嫌なので通常の通りで良いと抗議するが、イリアからの情報もあり受かる事を前提で話をされ、面倒な事は極力避けたいと言うので諦めた。
筆記試験を受けるが、相変わらず中学生程度の知識だ。
ランクAから順に解答を記入して、ランクSSSまでの解答用紙をヘレンに渡す。
受取るヘレンは、あっという間に解答した俺に驚き、全問正解した事で更に驚いていた。
試験会場に鑑定士のターセルが入って来る。
ヘレンが俺のところに箱を持ってくる。
ランクSからSSSまでの指定魔物の単独討伐の抽選だろう。
本当なら実技試験後にするのだが、面倒だという理由から筆記試験後に行う事にしたらしい。
討伐時間は、実技試験合格後から始まる。
ランクSの箱から紙を引くと『サンドワーム』だったので、以前に討伐した覚えがあったので核を出すと、ターセルが鑑定をして間違いない事をヘレンに伝える。
ヘレンは俺がサンドワームを単独討伐した事に驚きはしていなかった。
ランクSであれば当然といった顔だ。
その後、ランクSSの箱からは『ワイバーン』だった。
ワイバーンとドラゴンの違いが良く分からないが、ドラゴンより小さく、知能は殆ど無いそうだ。
……一応、アルに連絡をしてから討伐する事にするが同族だと言われたら、仕方無いが諦める事にする。
冒険者ランクは上げたいが、アルの知り合いを討伐するのは気が向かないし、俺の信念に反する。
ヘレンに「ワイバーンの核」は持っていない事を伝える。
「分かりました。制限時間は二〇日つまり、四八〇時間です」
事務的に淡々と答える。
一応、ランクSSSの箱も引くように言われるが、ランクSSの指定討伐も完了していない。
受かる前提やら、面倒臭いのも分かるが……
「ワイバーンが討伐出来るかも分からないので、ランクSSSはワイバーン討伐後でもいいか?」
俺がワイバーンを倒せないかもと言ったのが意外だったのか、暫く考え込んで「分かりました」と俺の意見を通してくれた。
「それでは、実技試験に移るので移動します」
移動の最中にアルと連絡を取る。
ワイバーンを討伐していいかと聞く。あっさりと「問題ない」と返事をする。
ワイバーンは本能のまま行動する為、眷族になるがそこまで強く繋がりがあるわけでは無いらしい。
実際、ドラゴンがワイバーンの集団に襲撃を受ける事もあるらしい。
アルは「手伝うぞ!」と言うが冒険者ギルドの昇級試験だと伝えると「つまらん!」と不機嫌そうに連絡を切った。
とりあえず『ワイバーン討伐』は問題ない事が分かった。
【全知全能】に生息地域を確認して、実技試験終了後にスグに討伐に行ける準備をする。
「実技試験は、スグに出来るのか?」
ヘレンに質問をする。
「はい、試験官は皆、準備が完了しております」
「そうか、とりあえず試験はランクSSまでにしてくれ。一旦、ワイバーンを討伐してからランクSSSの実技試験を受けたい」
「分かりました」
俺の申し出をすんなりと受け入れてくれた。
「タクト殿は真面目ですね」
「どうしてだ?」
「普通、特別待遇されれば殆どの人は喜ぶ筈です」
「確かにそうかも知れないが、特別待遇した事で不利益を被る者が居る事もあるだろう」
「それはそうですが……」
「きちんとルールを守っておる奴が蔑ろにされて、身分の違いや金貨を渡したりした奴が優遇されるのは間違っていると思っているからな」
「その考えには共感出来ますね」
「そうか、そう言って貰えると嬉しいな」
ヘレンとの雑談が終わると、実技試験会場に到着した。
とりあえず、試験に合格出来るように頑張るしかない。




