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260話 もうひとつの報告!

 ルーカスが「場を仕切り直すので明日でもいいか」と言うが、「駄目だ!」と返事をする。


「そんなに大事な事なのか?」

「あぁ、本題はこっちだ!」

「……なんだと」

「まぁ、国と言うか世界的な大事件と言った方が、いいかもな」

「どういう事だ?」

「オークロードは、俺達が倒した」

「そうだ、ターセルが持っている(コア)が、その証拠だ。」

「しかし、残念なことに魔王は誕生してしまった!」


 その場にいた者達が驚く。 当然の反応だ。


「それで、その魔王はどうなったんだ!」


 ルーカスが、声を震わせながら聞いてきた。


「非常に言いにくいんだが、オークロードを倒したら、俺が魔王になった!」

「……なんだと~!」


 ルーカスが立ち上がり、叫んだ!


「魔王と言っても称号が増えただけで、何も変わってはいない」


 現状を、皆に説明する。

 そして、ガルプツーが言っていた事も説明して、シキブやソディック達もそれぞれに弁護してくれた。

 こういう場で発言するのが、苦手であろうムラサキやトグルも、必死になって話してくれる姿や、小さなライラの一生懸命な姿を見ていると、仲間とはいいものだと思えた。


「しかし、魔族から恐怖の対象になったら、魔王になるなんて……」


 ルーカスの隣にいたイースは、信じられない顔をしていた。


「なんか、すまないな。 鑑定士のターセルなら、称号が増えたのが分かる筈だ。 嘘でこんな事は言わないぞ」


 そんな事は誰もが、分かっている事だ。

 自分が敵の大将になっている事を、国王であるルーカスの前でわざわざ言うメリットは無い。

 ターセルも鑑定の結果をルーカスに「間違いない」と伝えていた。


「こんな状況だから、提案したい事がある。」


 このままでは又、議論だけで結果が先延ばしになる可能性がある為、この場で解決する内容は決めておいた方がいい。


 一つ目はオークロード討伐者は、俺を除いた者とする事。

 そうしないと、倒したと言う事実が無い為、国民が常に怯えて生活する事になる。

 俺が、目立つと後々国の運営に支障が出る事もあるので、避けた方が良い。


 二つ目は、俺の処分だ。

 この場で決まる事は難しいと思うが、逃げも隠れもしない。

 国外追放なら、それも止むを得ないと思っている。

 但し、死ぬのは勘弁だ。


 ソディック達が、オークロードを倒したのは俺なのに、冷遇されるのは申し訳ないと言っているが仕方ない。


 国王は考え込んでいる。

 まぁ、当たり前だろう。

 魔王と言う存在の扱いなど、困るに決まっている。


「タクト、本当に何も変わっていないのだな?」

「あぁ、敬語も喋れない無職の青年が、魔王になっただけだ!」


 俺の言葉に、国王は笑う。


「タクトが魔王になった事は、第一級極秘事項とする!」

「口外禁止というやつか?」

「そうだ、破れば死刑になる可能性もある」


 ……おいおい


「俺が信用出来る奴には、話すぞ。 仲間に隠し事は嫌だからな!」

「……お主が言うのなら仕方ないが、極力話すなよ!」

「分かっているつもりだ」



 ルーカスは続けて、国民に向けてのオークロード討伐完了の報告の話を始めた。

 報告は明後日の昼に行う事を、大臣等に指示をする。

 俺に配慮してか、パレード等は行わずに城からの挨拶のみとする事を告げた。


「タクトも、討伐パーティーのリーダーとして挨拶するように」


 ルーカスは、当たり前のことをこれに要求してきたが「嫌だ!」と断る。


「……お主は、余が国王と知っているよな」


 呆れた口調だ。


「勿論だ。 この国で一番偉いんだろう。 俺は国民の前で、丁寧な言葉使いが出来ないから、嫌だと言っただけだ」

「確かに、そうだな……」

「名前の紹介だけで、挨拶は代表してソディックが話せばいいだろう。 王国騎士団団長なんだから」

「タクト殿、それは!」

「この中で一番知名度があり、国民からの信用があるソディックから話した方が、国民も納得出来るだろう」

「しかし、それではタクト殿の功績が……」

「だから、気にするなって」


 結局、ソディックが代表で挨拶をする事になった。

 討伐パーティーのリーダーもソディックという事で口裏を合わせた。


「報告は、こんなところだ。 他に聞きたい事はあるか?」

「そうだな、タクトには別で報告してもらいたい事もある。 お主が必要と思う者を連れて、後で部屋まで来てくれ」

「分かった。 きちんと報告する」


 魔族との交流、ゴンド村の件だろう……

 しかし、必要と思う者って誰だ?

 とりあえず、この場にいるシキブとムラサキに、トグルとライラ。 ソディックも今後の事を含めていてもらった方がいいな。

 前回、シキブ達に説明する時は、マリーとフランを呼んだはずだ。

 魔族代表になれば、アルとネロになるな……


 シキブ達には、全員参加と告げるが何の話なのかを聞かれるので、ゴンド村の件と言うと黙り込んでしまった。

 ライラは、ゴンド村には行っていないが話だけは聞いている為、理解出来たのだろう。

 ソディックのみ、何のことか分かっていない。


 マリーとフランは、ゴンド村を離れて随分と経つ為、呼ぶ必要が無い。

 呼ぶのであれば、ゴンド村の村長か、ゾリアスになる。

 しかし、村長は高齢だし王族との謁見だと驚いて死んでしまう可能性も考えられるし、ゾリアスは冤罪と分かったとはいえ、王都追放の処分が無くなったわけでは無い。


 俺の感では、絶対に視察をすると言うに決まっている。

 特にダウザーは、喜んで行きそうな気がする。


 ゴンド村で魔王と会うのがいいのか、城で魔王と会うのがいいのか分らないが、どちらにしろ会う事には違いない。


「……アルとネロを呼ぶか」


 シキブ達に話す。


「ちょっと、それは……」


 シキブも、アル達が危険でないのは知っているが、城に呼ぶとなると複雑な気持ちのようだ。


「害は無いし、何かあれば俺が責任を取る。 どちらにしてもゴンド村に行けば分かる事だ」

「確かにそうだけど……」


 アルとネロには、後で連絡したら俺の所まで来てくれと伝えた。

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