259話 暴かれた嘘!
オークロード討伐に成功した事を伝えると、国王であるルーカスや大臣、貴族達は大喜びだ!
それとは裏腹に俺達は、しんみりしている。
「皆、元気が無いわね?」
王妃のイースが、不安そうに聞く。
俺から話すしかないだろう。
「実は、問題が二つほどあってだな……」
「問題だと?」
「あぁ、実は裏切り者がいた」
「裏切り者だと!」
シキブ達は、魔王の話じゃなくてそっちの話! と言った顔をしている。
俺の判断では、こちらを先に解決した方が良いと思っただけだ。
部屋の外から、チョーヨンを連れて来る。
「その者が裏切り者か?」
「こいつもそうだが、副団長のパク。 それに、黒幕は別にいる」
ライテックの方を見ると、関係無いかのように笑っている。
ソディックが、パク副団長が魔族だったことを報告する。
その後、チョーヨンがライテックとの関係をひたすら話すが、ライテックは微動だにしない。
「それは、チョーヨン副団長の勝手な言い分では無いですか? 私自身、知らない事ばかりです」
当然、シラを切る。
「そうか、もうひとり証人を連れて来る」
部屋の外に行き【転移】を使い、マークリムを連れて来た。
ライテックの表情が変わる。
「マークリム、正直に話せよ」
「分かっている」
マークリムも、今迄の事を全て話し始めた。
勇者の末裔と言われている貴族達の顔色も、悪くなっていくのが良く分かる。
「マークリム殿とは、顔見知りくらいで、それ以上でもそれ以下の関係でもありません」
必死で弁明していると、左足を抑えて蹲る。
本人は何が起こったか分らないだろう。
俺が、ライテックに気付かれないように【転送】を使い【真偽制裁】を掛けた。
「どうした、天罰でも下ったか?」
「いえ、なんでもありません」
「本当に、人身売買には関係ないのか?」
「当たり前です。 ぐっ!」
どうやら、嘘のようだ。
「クニックスに、罪を擦り付けた事はあるか?」
「……何のことだ? がぁ!」
膝から崩れ落ちる。
クニックスの件も、こいつの仕業で確定した。
「そのまま、嘘をつき続けると死ぬかもな」
「なんの事でしょうか?」
「さっきから、嘘をつく度に苦しんでいないか?」
「そんな事ありませんよ。 ぐぁ!」
ライテックの周りの床には血が垂れ始めていた。
その様子を間近で見ていた偽勇者の末裔達は、顔から血の気が無くなっている程、青白い顔をしている。
「ライテック。 親族として悲しいが罪を認めれば国外追放で勘弁してやる」
見かねたルーカスが、ライテックの説得に入る。
「うるさい! 御前達が居なければ、俺が国王だったんだ……」
そう言うと、ポケットから黒い玉を出して、飲み込んだ。
ライテックの体が筋肉質に変わり始め、髪の色は黒から白になり、背中から翼のようなものが生えた。
顔を上げると、目は充血して口からは牙を生やしている。
見た目は、吸血鬼に近い。
「この国には、もう用はない。 立ち去る前にお前達だけでも殺しておく。 まず、裏切り者のお前からだ!」
マークリムの影から手が出現して、マークリムの胸を貫いた。
それから、俺を攻撃しようとしているのか、俺の方を睨んでいるが攻撃をしてこない。
攻撃しているライテックから、血が流れ出ている。
「忌々しいパーガトリークロウめ!」
どうやら、クロが影の中で戦ってくれているようだ。
俺への攻撃と、影での攻撃が無理なのを悟ったのか、ルーカスの方を見ると一気に距離を縮めてルーカスを殺そうとしていた。
しかし、ルーカスに触れる前に、頭から真っ二つに斬られると同時に炎に包まれ床に落ちた。
ロキとカルアの仕業だろう。
ロキの剣技と、カルアの魔法の合わせ技だな。 流石は護衛三人衆だと感心する。
しかし、ライテックが変身する前に飲んだ玉みたいなのは何だったんだ?
あとで【全知全能】に確認してみる事にする。
もしかして、人族を魔人に変える物かも知れない。
マークリムは、シロが治療していたが心臓を貫かれていたので、即死だったようだ……
証人になってくれる代わりに、死刑にならないようにすると約束をしたが、結果だけ見れば約束は守れていない。
マークリムに対して、申し訳ないと思った。
せめて残された家族だけでも、寛大な処置をルーカスに頼んでみる事にする。
ルーカスは、焼け焦げたライテックを暫く見た後に、偽勇者の末裔達を反逆罪で捕らえた。
各々が言い訳をするが、既に幾つかの証拠がある為、財産及び爵位の没収と死刑、一族は国外追放になるだろう。
とりあえず、リロイの母親を殺した奴を見つけて、死刑になる前にネロに引き渡したい。
脱走という事にしておけば、大して問題にならないだろうと思うが、見張りの衛兵が処罰されるのは可哀そうだ。
一度ルーカスに相談する事も考えたが、リロイの母親の事は秘密なので、なんて相談すればいいかが分らない。
チョーヨンは、弁明の余地なく死刑になるだろう。 それくらいの罪を犯したので仕方ないだろう。




