258話 裏切りと保身!
シキブ達の場所に戻る。 皆、浮かない顔だ。
結論が出ていないのだろう。
「どうする? なんなら、俺はこの場で死んだことにした方がいいなら、それで構わないぞ!」
折り合いの付け所が難しい為、こちらから提案をしてみる。
気になるのは、フランやマリー、ゴンド村の村人達だが俺が居なくても、何とかなるだろうという思いはある。
ただ、ゴンド村が国に知られた時の事だけが心配だ。
このメンバーだと頭の回転が良いのは、シキブとソディックだけだ。
残りの大人ふたりは、脳筋なので感情論になるだろう。
「嫌です!」
ライラがハッキリと反論した。
目にはうっすらと涙が浮き出ている。 頭を撫でながら話し掛ける。
「ゴメンな、こればっかりは俺では決められないからな」
慰めてやりたいが、現実は厳しい。
「どう判断するかは任せるが、死ぬのだけは御免だ!」
真剣に訴えてみる。
「とりあえず、私達は出来る限り弁護をしてみるわ」
「あぁ、俺達にはそれ位しか出来ないからな……」
折角、オークロードを倒して凱旋モードの筈が、なんでこんな事に……
「そうだな、宜しく頼む」
そう言うしか無かった。
結論が出ないまま、王都へ帰還する事になる。
忘れていけない、もうひとつの問題がある。
「ところで、副団長のチョーヨンは反逆罪でいいんだよな?」
どさくさに紛れて、チョーヨンの罪が消えるのは勘弁ならない。
「私は騙されていただけだ」
「本当にそうなのか?」
ソディックは、チョーヨンを信用しようとしている。
「おい、嘘が大きいとお前死ぬからな!」
チョーヨンに【真偽制裁】を掛ける。
「何のことだ?」
「お前に簡単な【呪詛】を掛けた。 嘘の大きさで、体への損傷具合が変わる」
いつもの事だが、信用していないのでソディックに質問をさせる。
「パクが魔族だとは知らなかったのか?」
「当たり前だ!」
本当のようだ。
「毎夜、調査に言った者達がどうなったか知らないか?」
「……」
答えないが、左手に大きな切り傷が出来た。
「答えなかったら、嘘だと判断されるぞ!」
「……そんな馬鹿な!」
ソディックは冷静にもう一度同じ質問をした。
「知っている」
「殺したのか?」
「……そうだ」
その瞬間、冷静だったソディックから殺気が漏れる。
俺だけでなく、その場に居た全員がそれを感じた。
「ソディック、殺したら終わりだぞ。 コイツには死ぬよりツライ地獄が待っているからな」
俺もソディック同様に、殺気を込めてチョーヨンを見る。
チョーヨンは、股から黄色い液体を流して震え始めた。
「……何故、殺す必要があった」
ソディックは、怒りを抑えながら質問を続けた。
「偵察に出した騎士達は、団長を慕っていて俺達に対して、不満を持っていた騎士達だったからだ」
チョーヨンの体に変化はない。 本当のようだ。
ソディックは、回答を聞いて黙ったままでいる。
「ソディック、俺からも質問をしていいか?」
「えぇ、どうぞ」
震えるチョーヨンの顔を、無理矢理俺の方を向けて質問をする。
「ゾリアスを裏切り、罪を擦り付けただろう」
チョーヨンは、何故今になってその事をという顔をしている。
「早く答えないと、腕が無くなるかも知れないぞ」
「そうです。 パクに唆されて、襲撃の指示したのはゾリアスだと、罪を擦り付けました!」
「その事実を、ライテックは知っているよな?」
チョーヨンは観念したのか、下を向き小さく「はい」とだけ話した。
「タクト殿、今の話どういうことですか?」
ソディックが、質問に対する詳しい説明を求めてきた。
俺が以前に、ゾリアスから聞いた魔族の集落襲撃の事を話した。
話を聞いたソディックは、今まで以上に怒っている。
「すいません。 あの時はどうかしていたんです」
殺されると思ったのか、チョーヨンは平謝りしている。
ソディックの肩に手を当てて、落ち着くように言う。
「タクト殿が何故、ゾリアスの事を知っているんですか?」
「まぁ、色々あってだな。 今度、詳しく話す」
「分かりました」
立ち話で出来るような話でもない。 ソディックとゾリアスは、顔見知りのようなので、きちんと話をする必要があると思った。
それに王国騎士団の問題なので、シキブ達冒険者には関係のない話だ。
「それじゃあ、王都に戻るとするか」
チョーヨンに目隠しと手足を縛り、【転移】で王都へ戻る。




